数学II・数学B
総評と分析
センター試験と比べて、答えを選択肢から選ぶ形式の設問が増加した。
全体的に文字定数を含む数式の計算をこなさなければいけない場面が多かった。一方で、第5問の(2)の最後の設問などのように、個々の設問では誘導が少なく丁寧に考えなければならないものが多く、思考力を問われる場面は増加した。
センター試験・試行調査との相違点
- 数学Ⅰ・数学Aと同様に、センター試験よりは試行調査に近い出題であった。試行調査でも見られたグラフの概形を選択させる問題が引き続き出題された。第3問に確率分布と統計的な推測の問題が配置され、従来のセンター試験から選択問題の順序が変更になった。
問題分析
大問数 | 5 |
---|---|
設問数 | 18 |
解答数 | 103 |
問題量
- 分量は数学Ⅰ・数学Aほどではなかったが、それでも、従来のセンター試験程度にはあり、多くの受験生にとっては試験時間内に解答し終えることは容易でないと思われる。
出題分野・出題内容
- 第1問〔1〕は三角関数からの出題である。合成を利用して三角関数の最大値を求めるが、後半はcosへの合成が必要になり慣れていない受験生も多かったと思われる。
- 第1問〔2〕は指数・対数関数からの出題である。与えられた関数について常に成りたつ関係式を誘導に従って考察する問題である。
- 第2問は微分法と積分法からの出題である。(1)は2次関数のグラフ、(2)は3次関数のグラフとその接線を題材とした問題であった。積分法からの出題は(1)の面積を求める設問のみにとどまった。
- 第3問は確率分布と統計的な推測からの出題である。2018年の試行調査と同様に、学生の読書時間を題材とした問題であった。
- 第4問は数列からの出題である。近年のセンター試験でも頻出であった等差数列・等比数列に漸化式を絡めた問題であった。
- 第5問はベクトルからの出題である。正十二面体のある4頂点からなる四角形の特徴を調べる問題である。ベクトルの加法・減法や内積の計算が出来るかどうかが問われている。
出題形式
- 答えを選択肢から選ぶ問題が第1問で10個、第2問で3個、第3問で7個、第4問で1個、第5問で3個あり、従来のセンター試験と比べて多かった。尚、それ以外は数値を求めさせる問題であった。
難易度(全体)
- 昨年と同等レベル。前半の数学Ⅱの部分は取り組みやすい。それと比較して、後半の数学Bの部分は若干手間がかかる。センター試験と比較して大きく負担が増えたところは無い。
設問別分析
第1問 (30点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
〔1〕 | 15 | 三角関数 | やや易 |
〔2〕 | 15 | 指数・対数関数 | やや易 |
昨年と〔1〕〔2〕で分野の順番は同じであった。〔1〕は三角関数の合成を行う問題。(1)は非常に基本的な問題。(2)はαの値が求まらないタイプの合成の問題。pが負の場合の最大値を求める際に、θが端点(つまり最大と最小)である2つのケースを代入して比較することで求めた受験生が多かったと思われる。〔2〕は指数・対数関数の問題で(2)(3)は関数の特徴を考察するところがやや珍しい。(1)はかなり基本的。(2)では実際に与えられた式を比較する。最後の空欄である(3)では、α、βにx、-x、0を代入すること、そして(2)を用いることに気付けるかどうか、がポイントである。
第2問 (30点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
30 | 微分・積分 | やや易 |
今年も特に図形的な考察は要求されていない。どの問題も易しい。(1)は接線を求める設問。計算自体も非常に楽である。答えが文字である部分が多い。面積計算も、文字の種類が多いだけで楽である。空欄セでは3乗根の考察を行いグラフを選択することが課されているが、直線になることはすぐに分かるだろう。(2)も基本的である。積分に関しては問われていない。前半は(1)と同様であり、非常に簡単である。後半では絶対値のついた3次関数の最大値を求める設問があり、戸惑った者はいるかもしれないが、特に難しい部分は無い。強いていえば、最後まで答えに多くの種類の文字が含まれることが特徴的であるといえる。
第3問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
20 | 確率分布と統計的な推測 | 標準 |
読書時間の調査という題材は2018年の試行調査とほぼ同じであった。(1)と(2)は二項分布に関する典型問題である。(3)~(5)は信頼区間や統計調査に関する問いである。計算自体は難しくないが,信頼区間に関する本質的理解がないと自信を持って完答することは難しかっただろう。全体として平易な内容が出題されており,過去問演習の多寡が点数に直結した。また,統計全般に関する本質的な問いも随所に見られ,単なる計算処理に終始せず,統計調査の実務的側面にまで理解が及んでいたか否かで差が付く問題構成となっていた。
第4問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
20 | 数列 | 標準 |
一時期、毎年のように出題された「複雑な漸化式」の問題が昨年に引き続き出題された。誘導は丁寧であり、それに従っていけば一般項までは求まる。センター試験の時代と異なるのは、漸化式の形が複雑なだけで、計算は大変ではない点だろう。また、式変形を繰り返して一般項を求める設問ではない点も異なる。数列の和の計算などもかなり楽である。誘導に従っていけば最後の空欄まで特に難しい部分は無いのだが、様々な数列が登場するので試験場では実際の難易度よりも難しく感じられる可能性が高く、落ち着いて解くことが求められる。
第5問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
20 | 空間ベクトル | 標準 |
非常に平面ベクトル色が強い。正十二面体のイラストが登場するため、見た目で圧倒されてしまった者が多かったと思われる。見た目と実際の難易度のギャップがかなり極端であり、センター試験時代と比較して難易度はむしろ易しめなのだが、点が取れなかった者も多いだろう。誘導は丁寧である上、計算もあまり大変では無い。(1)ではaの値を出題者が与えてくれていて、(2)以降の誤答を防いでいる。(2)では誘導に従っていけば、立体をイメージする必要は無い。空欄スで無事正答に到達できるか、がポイントだろう。これが正解できれば、最後の空欄セで特に手が止まる要素は無い。
大学入試センター試験平均点(過去5年分)
年度 | 2020年度 | 2019年度 | 2018年度 | 2017年度 | 2016年度 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 49.03点 | 53.21点 | 51.07点 | 52.07点 | 47.92点 |