物理
総評と分析
数値計算はやや多いが、文字計算は軽く、物理の原理や法則に基づく物理的考察力が重要視された良問といえる。
日常生活で見られる物理現象に関連させて、物理的考察力を試そうとする意図が窺える。また、数値計算では数値を直接マークする設問が2つ出題された。
センター試験・試行調査との相違点
- センター試験では選択問題が用意されていたが、共通テストではこれがなくなり、試行調査と同様の必答問題4題の構成となっている。
問題分析
大問数 | 4 |
---|---|
設問数 | 21 |
解答数 | 28 |
問題量
- 問題記載ページは24であり、考察力が求められる問が多いが、全体としては、試験時間に対して適量といえる。
出題分野・出題内容
- 第1問は物理の複数分野(力学、電気、波動、熱)からの小問集合形式による出題。
- 第2問は直流回路に関する数値計算、および2本の導体棒による電磁誘導に関する出題。
- 第3問は光の屈折と全反射、および蛍光灯の原理に関する出題。
- 第4問は運動量および力学的エネルギー保存則に関する出題。
出題形式
- 試行調査を踏襲した出題形式であり、第2問と第3問では、A、Bに分けることで幅広い出題となっている。
難易度(全体)
- 第二回試行調査(2018年度実施)、昨年度のセンター本試験、両者と比べてやや難化した。面倒な計算を要する問題がほとんどなく、グラフから現象を考察する問題や、定性的な理解が求められる出題が多かった。
設問別分析
第1問 (25点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
問1 | 5 | 慣性力 | やや難 |
問2 | 5 | 力のつり合い | やや難 |
問3 | 5 | 電場と電位 | 標準 |
問4 | 5 | ドップラー効果 | やや易 |
問5 | 5 | 理想気体の等温変化と断熱変化 | やや難 |
第1問は試行調査と同様に、昨年までの小問集合形式を踏襲した。問1は慣性力を含めた見かけの重力を考え、水面と見かけの重力が直交することに気付けるかがポイント。問2は作用・反作用の法則を使い、力のつり合いを正確に式に表さなければならない。問3は電場と電位の問題で、電位差が極板間距離と電場の積で書けることを用いる。問4はドップラー効果に関する問で、計算を始めると時間がかかってしまう。定性的に解答したい。問5は等温変化と断熱変化の違いが聞かれている。断熱変化のグラフの方が急であることと、容器を逆さまにして同じ圧力まで変化したときの体積を比べられるかがポイント。
第2問 (25点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 13 | コンデンサーと直流回路・ホイートストンブリッジ | 標準 |
B | 12 | 導体棒の電磁誘導 | 標準 |
第2問は電磁気分野からの出題であった。Aはコンデンサーが組み込まれた直流回路の問題で、問題演習などで必ず扱う標準的な問題である。帯電していないコンデンサーは導線のように振る舞うことと、充電が完了したコンデンサーには電流が流れないことを念頭に、キルヒホッフの法則を用いていけばよい。問3は事実上独立しており、ホイートストンブリッジの問題であった。Bは導体棒と電磁誘導の問題で与えられているのが単位長さ当たりの抵抗値であることに注意しよう。問6は少し難しいが、問5がヒントになっており、全運動量が保存することを用いる。
第3問 (30点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
A | 16 | 光の屈折・全反射 | やや難 |
B | 14 | 電子と保存則 | やや難 |
第3問は、Aは波動分野(幾何光学)からの出題で、Bは電子が関係する出題ではあったが特に原子分野の知識は必要なかった。Aの幾何光学ではダイヤモンドに入射した光の屈折と反射を扱っており、見慣れない上文章量も多い。基礎的な設問もあるが問3のグラフを解釈する問題が特に答えにくかった。臨界角より大きな入射角では全反射することがポイント。Bは電子が題材の問題だが、実質的には電磁気・力学の問題であった。電子と水銀原子との衝突では、外力がないので運動量は常に保存する(問5)が、過程(b)ではエネルギーの一部が水銀のエネルギー準位の上昇に使われるため、運動エネルギーは小さくなる(問6)。
第4問 (20点満点)
配点 | 出題内容 | 難易度 | |
---|---|---|---|
20 | 斜方投射・力学的エネルギー・運動量 | 標準 |
第4問は力学分野からの出題である。他の大問と違い、A、Bには分かれていない。問1は、斜方投射されたボールの水平方向の速度は変化しないが、鉛直方向の速度は下向きに大きくなっていくことから解答する。問2は水平方向の運動量保存を使うだけ。問3は計算を始めてしまうと時間がかかるだけなので、定性的に解答したい。問4は、まずボールの運動量が変化していることと作用・反作用の法則から力積が0にはならないことがわかる。また、そりが動かなかったことからだけでは、弾性衝突かどうかは判断できない(反発係数が1でなくとも、問題の現象は起こりうる)。
大学入試センター試験平均点(過去5年分)
年度 | 2020年度 | 2019年度 | 2018年度 | 2017年度 | 2016年度 |
---|---|---|---|---|---|
平均点 | 60.68点 | 56.94点 | 62.42点 | 62.88点 | 61.70点 |