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(6)悲運の英雄 ウォザースプーン

加藤 念願の「金」へ一騎打ち

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復活をかけて五輪に挑むウォザースプーン(2009年12月13日、米・ユタ州ソルトレークシティーで)=小西太郎撮影

 スピードスケートの天才レーサーと呼ばれる加藤条治(24)(日本電産サンキョー)にとって、2度目の五輪は「今度こそ金メダル」の思いがある。優勝候補ひしめく男子500メートルだが、実力を発揮すれば金も固い。そんな男が警戒するのは、地元カナダで「悲運の英雄」とされるジェレミー・ウォザースプーン(33)。故障明けで今季の国際実績が全くない無冠の王者でもある。

 ワールドカップ(W杯)通算67勝は、断然の歴代1位。2007年11月には、34秒03にまで世界記録を短縮し、そのシーズンは10戦9勝と絶対的な強さを誇った。ところが、翌シーズンの開幕戦で転倒して左腕を骨折。戦線離脱していた今季W杯は、8戦で優勝者が6人もいる大混戦に陥った。存在の大きさを証明する結果でもある。

 加藤の持論は「速いヤツはいつだって速い」。自分の行く手に立ちはだかる者はウォザースプーンと潜在意識に刷り込み、〈想念の戦い〉を挑み続けた。

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悲願の金メダルを狙う加藤(12月の五輪代表選考会で)=尾賀聡撮影

 昨年11月にカルガリーで行われた非公式な記録会のことだ。復活に向けて調整中のウォザースプーンと直接対決となり、加藤が競り勝った。勝利にそれほどの意味はない。大半の選手が調整レースとする中、加藤は本番さながらの集中力をぶつけ、今季自己ベストの34秒41をマーク。挑戦状をたたきつけられた格好のウォザースプーンは、0秒20遅れでゴールし、「さすがにジョージは速い」と脱帽させられた。4年前の加藤は、当時の世界記録保持者として本番を迎え、重圧に押しつぶされた。

 ウォザースプーンも絶対視されたソルトレーク五輪では、スタート直後の転倒に泣き、過去3大会で金メダルに縁がない。「今回の五輪が最後。何より金メダルが欲しい」と並々ならぬ執念を見せる。天才・加藤との一騎打ち。これは見逃せない。(畔川吉永)

2010年1月25日  読売新聞)


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