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異色の指導者 熱く

ハンドボール女子代表監督 黄慶泳(ファンキョンヨン)(42)

 五輪に向けて戦い続けるのは選手だけではない。国籍の壁や選手との世代格差を感じながら、ロンドンを目指す指揮官たち。監督たちの苦闘ぶりをリポートする。

韓国離れ 闘志伝える

 声が大きい。試合中、ベンチにほとんど座らず、立ったまま派手なジェスチャーで選手をしったする。勝てば五輪出場権を取れた21日の韓国戦。母国との戦いで最後まで声を出し続けた。

 韓国京畿道(キョンギド)出身。1998年に日本女子代表のコーチとして招かれ、北京五輪終了後の2008年秋、代表監督に就任した。ライバル国の出身者を監督にすることには、一部で異論が出た。逆に韓国では、優秀なコーチの「人材流出」と騒がれた。日韓ともに波紋を呼ぶ人事だった。

 監督に就任すると、まず「ファイティングスピリット」を強調。コート上でルーズボールに、身をていして飛び込むことを求めた。「日本に足りないのは体力面と戦術的な経験値」。日本選手の長所、短所を知り尽くしている指揮官は、五輪予選に向けて4年がかりで強化を進めた。

 熱血指導が昨年11月のアジア大会で実を結び、大会6連覇を狙った韓国を準決勝で29—28で破った。過去の五輪で2度金メダルを獲得し、北京五輪でも銅メダルの強豪からの大金星。韓国の中央日報は「衝撃の敗北」と報じた。

 韓国でのリアクションは大きかった。「マスコミにたたかれました。『裏切り者』とか『そこまで派手にガッツポーズをしていいのか』とかね。でも、僕は母国に勝ったことを誇りに思う」

 選手と監督の絆が深まった。「監督は祖国を捨てて私たちを育ててくれた」とGKの藤間かおり(オムロン)。藤井紫緒主将(オムロン)は「監督についていけば何とかなるという感じがする」と全幅の信頼を寄せる。

 再び、21日のアジア予選。昨年の雪辱を期す韓国は強かった。22—27。抱き合って喜ぶ韓国選手を横目で見ながら、「実力差は認めないといけない。でも選手はやるべきことをやった」。静かに振り返った。

 来年5月の世界最終予選が、日本女子36年ぶりの五輪出場へ最後のチャンス。闘将の戦いは続く。(三橋信)

2011年10月26日  読売新聞)