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猫のライバル、まだあきらめていない

ブンティン選手「標準記録を突破に自信」

マラソンでカンボジア代表として五輪出場が決定し、タイをくわえてポーズを取る猫ひろしさん(3月26日、墨田区横川で)=中村光一撮影

 またも猫ひろしさん(34)の話題で恐縮だが、気になる情報があるので取り上げたい。ロンドン五輪のマラソン代表枠を猫さんと争ったカンボジアのヘム・ブンティン選手(26)が、パリに入って、15日のパリマラソン出場に備えている。カンボジアの英字紙プノンペン・ポストは、彼が五輪マラソンのB標準記録(2時間18分)突破に自信を示していると伝えている。

 カンボジアオリンピック委員会(NOCC)が猫さんの派遣決定を発表したのは3月26日。猫さんを上回る2時間25分19秒の記録を持つブンティン選手は、この決定をどう受け止めたのだろうか。

 ブンティン選手は、中長距離ランナーの聖地と言われるケニア西部の村イテンで83日間の高地トレーニングに取り組み、3月末に終了した。30日付のポスト紙(オンライン版)は、彼から届いたメールを紹介している。仕上がりは順調な様子で、「レース前やレース中にけがなどのトラブルがなければ、パリで標準記録を突破する自信がある」とコメントしたという。どうやら五輪出場をあきらめてはいないらしい。

 陸上競技のどの種目についても五輪標準記録に達する選手がいない国は、男女一人ずついずれかの種目に出場できる特例がある。猫さんが2月の別府大分毎日マラソンで出した2時間30分26秒という記録はB標準よりずっと遅いため、特例枠で出場することになっている。

 ポスト紙を読むと、標準記録をクリアすればブンティン選手のロンドン行きがかなうような印象を受ける。「標準記録突破者がいない国」という特例の前提が崩れることは確かだが、NOCCが一度下した決定を覆すのだろうか。そもそも、ポスト紙は猫さんが代表に決まったことをまだ報じていないようだ。ブンティン選手に肩入れしているのは明らかである。

カンボジア世論へのアピール?

 記事を書いたダン・ライリー記者に問い合わせた。

 「ブンティン選手は、ケニアでよいトレーニングをこなしました。すべて計画通りに進めば、標準記録を突破するでしょう」

 しかし、猫さんの立場はどうなるのか。

 「ブンティン選手は、NOCCやカンボジア陸上競技連盟と対立を続けています。和解しない限り、出場は認められないでしょう。記録を突破したブンティン選手をさしおいて、猫選手が五輪に出場することもありえます。(カンボジアにとって)非常に恥ずべきことですが」

 ライリー記者も、カンボジアでは猫さんの五輪出場の是非がほとんど論争になっていないことを認めている。ブンティン選手は、国民の関心が向かないことにいら立っているらしい。もし標準を突破したら、「出場すべきなのは自分だ」とカンボジア世論に訴えるつもりかもしれない。

 3月29日付のコラムで私が書いたように、NOCCは猫さんのカンボジアへの貢献を高く評価しており、簡単に五輪派遣を取り消すとは思えない。だが、ライリー記者は、ブンティン選手にもまだチャンスがあると考えている。

 「最終の代表リストがどうなるのか、その結果を待ちたいと思います」

◆関連コラム 「東京マラソン奮走記

筆者プロフィル

芝田 裕一(しばた ゆういち)

 ロンドン特派員、科学部次長を経て調査研究本部主任研究員に。地震災害対策や先端医療、ものづくりの技術など、科学技術分野の幅広いテーマが守備範囲。本コラムは、フルマラソンを3時間以内で走るサブスリーランナーでもある芝田記者が、その経験などをもとにロンドン五輪へ向け、マラソンをはじめ長距離種目に関する様々なテーマ・話題について掘り下げます。

2012年4月11日  読売新聞)