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リオ・パラリンピック あと半年

ブラジルの支援充実 「金メダル5位」目指す

選手会費ゼロ/道具無償

  • ロンドン・パラリンピックで金メダル6個を獲得した競泳のスター、ブラジルのダニエル・ディアス
    ロンドン・パラリンピックで金メダル6個を獲得した競泳のスター、ブラジルのダニエル・ディアス

 リオデジャネイロ・パラリンピック開幕まで7日で半年。地元ブラジルは国を挙げた支援体制でメダル量産を狙う一方、大会をきっかけに障害者スポーツの発展や社会のバリアフリー推進を目指している。(リオデジャネイロ 畔川吉永、写真も)

国民的スター

 南米の最大都市、サンパウロから車で北に約2時間。ブラガンサ・パウリスタの市営プールでは、体に障害を持つ子供や大人らが思い思いに水中で体を動かしていた。

 中でも一際、軽快に泳いでいたのがダニエル・ディアス(27)。生まれつき右ひじから先と右ひざから下がなく左腕も指が1本だが、体をフルに使った豪快な泳ぎで2008年パラリンピック北京大会で金メダル4個を含むメダル9個を、12年ロンドン大会でも金メダル6個を獲得した。パラリンピックの国民的スターは「水泳の才能は神様が与えてくれた。競技に導いてくれたクラブの存在が僕には大きい」と話す。

 ディアスは15歳で障害者スポーツを支援するサンパウロのNGO「ADD」に入った。幾つかの競技からコーチらの勧めで水泳を選び、才能を開花させた。ADDには現在、子供から大人まで障害者やその家族ら約1000人の会員がいる。サンパウロや周辺にある民間スポーツクラブや自治体から無料で体育館などを借り、ADDが雇うコーチが水泳や車いすバスケットボールなどのパラリンピック競技を指導する。

 会費はゼロで、競技用の道具も無料提供される。パラリンピックを目指す一部の優秀な選手は食事が提供される宿泊施設で生活する。車いすバスケットボール代表でパラリンピック北京大会に出場したジェルソン・シウバ(35)は「約1万2000・(約36万円)の専用車いすのサポートなど競技に集中できる環境がある。リオ大会を集大成にしたい」と言う。ADDからは、スポンサーも獲得しているトップレベルのディアスやシウバら7~8人が、リオ大会に出場する見込みだ。

 年間約120万・(約3600万円)のADDの運営費は企業のスポンサー料がメイン。エリアニ・ミアダ会長(46)によると障害者スポーツに出資した企業は税金が安くなる制度があり、「リオ大会開催が決まった頃から、我々への注目度が高まりスポンサーが増えた。現在は民間のスポーツクラブも独自に障害者部門を設ける動きが出ている」と、国内全体の盛り上がりを指摘する。

出資企業 税優遇/宝くじ配分拡大

行政も力

  • ブラジル代表も所属するNGO「ADD」の車いすバスケットボールの練習風景(サンパウロで)
    ブラジル代表も所属するNGO「ADD」の車いすバスケットボールの練習風景(サンパウロで)
  • 陸上でパラリンピックを目指すロシーニャ・ドス・サントスは「大会をきっかけに障害者が住みよい街になってほしい」と語る(リオデジャネイロで)
    陸上でパラリンピックを目指すロシーニャ・ドス・サントスは「大会をきっかけに障害者が住みよい街になってほしい」と語る(リオデジャネイロで)
  • コパカバーナ海岸の公園には車いす使用者向けの運動器具も設置された(リオデジャネイロで)
    コパカバーナ海岸の公園には車いす使用者向けの運動器具も設置された(リオデジャネイロで)

 ADDのような民間組織の活動が活発になる一方、ブラジルでは障害者スポーツへの行政支援も充実している。政府が障害者スポーツに力を入れるようになったのは2000年代以降。01年に全国の宝くじの売り上げの2%をブラジル・オリンピック委員会(COB)とブラジル・パラリンピック委員会(CPB)に割り当てる法律を制定した。

 CPBによると、今年1月からこの割合が2・7%に増え、COBとの支給配分もCOB85%、CPB15%からCPBが約37%に上がった。CPBは今年約1億3000万・(約39億円)の収入を見込むが、このほか銀行から年間約3200万・(約9億6700万円)のスポンサー料を、さらにスポーツ省からも補助を受けるなど活動資金は潤沢だ。

 豊富な資金を投入され、ブラジル全体の競技力は飛躍的に向上している。リオでは金メダル数で過去最高の5位を目指すが、ディアスやシウバらは「十分可能な目標」と口をそろえる。

インフラ改善

 国際的観光地として知られるリオデジャネイロ。しかし、障害者のための社会インフラの整備は遅れており、コパカバーナ海岸など観光客らが集まる南部の海岸周辺の歩道は道幅も狭く凹凸が多いため、障害者にとって快適とは言い難い。

 00年パラリンピック・シドニー大会で女子砲丸投げなど2個の金メダルを獲得したロシーニャ・ドス・サントス(44)は18歳の時、交通事故で左足を失った。「市街地でも車いす用スロープが少なく、リオは買い物も大変」とこぼす。

 だが、パラリンピックをきっかけに変化の兆しも見える。リオ市は昨年から約200万・(約6000万円)をかけて観光地など10か所で、スロープや点字ブロックの整備を始めた。コパカバーナの公園には障害者向けの運動器具も新しく設置された。

 「大会をきっかけに障害者を取り巻く環境や人々の意識が良い方向に向かってほしい。それは競技成績以上に大切」とサントスらは願っている。

順位、着々とアップ

 ブラジルは近年、障害者スポーツへの支援が充実し、金メダル数による順位を着実に伸ばしてきた。2000年以降に政府がサポートを厚くし、潤沢な資金から様々な強化を行った効果が表れている格好だ。

 日本では長年、障害者スポーツは競技としての認識が低く、所管が厚生労働省から文部科学省に移管されたのも14年度から。パラリンピックの成績も下降していた。20年東京大会が決まって本格強化の仕組みが整いつつあり、リオ大会は4年後の東京へ向けた巻き返しの一歩となる。

2016年03月07日 14時10分 Copyright © The Yomiuri Shimbun