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Road to リオ 決戦へ

攻める泳ぎ「金」名乗り…金藤理絵(27)(Jaked)

競泳女子平泳ぎ

 5月、2011年から支援を受けている東京の水泳用品メーカー「フットマーク」の壮行会で、マイクを握った。参加者を前にあいさつを始めると、泣くのを我慢できなかった。

 「世界大会でも結果が出せず、これまで、いい報告ができませんでした。皆さんのおかげで、オリンピックの金メダル候補として、この場に立たせてもらっています。長い間、お待たせしました」

悔し涙の過去 昨年転機

 20年近くの競技人生には、いつも「涙」があった。

 1メートル75と日本選手としては大型で、東海大2年の08年、北京五輪200メートル平泳ぎで7位入賞した。翌年は、同種目で日本記録を連発した。暗転したのは、10年の日本選手権の直前だった。筋力トレーニングで腰を痛め、泳ぎが慎重になった。12年、集大成と決めていたロンドン五輪の出場を逃してしまった。

 五輪では、三つのメダルを獲得した2歳下の鈴木聡美(ミキハウス)に日本記録で並ばれた。続けて、8歳下の渡部わたなべ香生子かなこ(JSS立石)が台頭してきた。引退したい気持ちに揺れた一方、応援の声が耳に入ると「やらないといけないのかな」と悩んだ。シーズン節目の国際大会を終えるたび「今後については、少し考えたい」と泣いた。

 水泳と真剣に向き合えない自分が嫌で、15年は渡部に勝つことを一つのテーマとした。しかし、世界選手権で渡部が優勝を果たした一方、自身は6位に終わった。決勝では全くメダル争いに加われず、渡部からは2秒以上も後れをとった。

 宿舎に帰ってレースのビデオを見ると、情けなさが押し寄せた。前半100メートルのラップは最下位の8番手。150メートルで一つ順位を上げてラストスパートをかけたが、6位に入るのが精いっぱいだった。積極性のかけらも見せられず、目が覚めた。「これで終わったら応援してくれる人の記憶に、みっともない姿だけが残る。最後は納得したレースで終わりたい」。自らの意思で、現役の道を選んだ。

 東海大時代から師事する加藤健志コーチ(50)からは、「地獄」と呼ばれる猛練習を課された。腰に不安を抱えながら1万メートルを泳ぎ、筋力トレーニングを挟んで、さらに1万メートル。ゴーグルの奥に涙をためて、歯を食いしばった。

 レースに対する考え方も変えた。「後半型」と思っていた自分のスタイルは「バテるのを恐れて、ただ、前半を抑えているだけ」と気がついた。今年2月、7年ぶりの自己ベストとなる2分20秒04の日本記録を樹立した。4月の日本選手権は前半から攻めて2分19秒65をマークし、日本女子として初めて「2分20秒」の壁を破った。世界記録まで0秒54に迫り、喜びの涙を流した。

 女子では異例の競泳主将に抜てきされ、複数の金メダルを目標に掲げる「トビウオジャパン」の主役として五輪に挑む。今のところ最後の五輪と決めているリオ大会で、目指すのは前人未到の2分18秒台。そして、もう一つ。「やり切って、笑顔で終わりたい」(北谷圭)

2016年07月17日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun