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五輪トピックス

日本の「金」可能性は10~14個…データで予測

メディア局編集部 小坂剛
 南米大陸初のオリンピックにのぞむ日本勢。前回2012年のロンドンでは金銀銅合わせて過去最多の38個のメダルをとったが、リオでは果たして何個のメダルを獲得できるのか。01年から国際競技力向上のため情報収集や分析にあたってきたスポーツ情報戦略の草分け、和久貴洋氏(日本スポーツ振興センター情報・国際部長)に聞いた。

  • ロンドンオリンピックでは過去最多の38個のメダルを獲得した日本代表
    ロンドンオリンピックでは過去最多の38個のメダルを獲得した日本代表
  • 日本スポーツ振興センター情報・国際部作成
    日本スポーツ振興センター情報・国際部作成

 ――リオでメダルを獲得できる可能性のあるアスリートはどのくらいいるのでしょうか?

 「選手団の実力を分析し、メダルを獲得する可能性のあるアスリートを意味する『メダルポテンシャルアスリート』(以下、メダル候補)という考え方があります。日本では、オリンピック前年の世界選手権もしくは世界ランキングで8位以内の成績に位置づけられるアスリートをそう呼んでいて、バレーボールなどチームスポーツも1人と数えれば、リオの選手団では80人います。種目で言えば、柔道、競泳、体操、レスリングが多い」

 ――では、リオオリンピックでは実際にメダルをどのくらい、とれると予想できるのでしょうか?

 「メダルの獲得総数は、メダル候補の数に、メダル獲得成功率をかけて算出できるという計算式があります。過去のデータを分析すると、成功率は平均すると25~30%で、ロンドンオリンピックで日本は約30%でした。ロンドンオリンピックと同じ成功率だとすると、80人×30%で24人。金メダルは10~14個獲得できる可能性があるということになります」

 ――日本の課題は何でしょうか。

 「ロンドンオリンピックで日本が獲得したメダル数は世界で11位でした。北京オリンピックの上位4か国は中国、アメリカ、ロシア、イギリスで、ロンドン五輪の上位4か国はアメリカ、中国、イギリス、ロシアの順番です。日本は、これらの国に比べて成功率は決して低くない。日本はメダル候補が一部の限定された種目に偏っているので、メダル候補を有する競技をいかに増やすかという点が重要です。

 メダル候補は08年北京オリンピックのときは51人でした。北京からロンドンにかけて力を持った選手が大幅に増え、前回のロンドンオリンピックのときには84人でした。リオが80人ですから、ロンドンとほぼ同じぐらいの実力といえます。ロンドンからリオにかけて、メダル候補を有する新たな競技があまり出ていません。これは東京オリンピックに向けての課題といえます」

 ――メダル獲得の成功率は何で決まるのでしょうか。

 「成功率はやってみないとわからない。選手のコンディションや組み合わせ、審判にも左右されますし、メダル候補でないダークホースが勝つこともあります。ただ、直前の準備、試合前の調整がうまくいくかが、成功率に影響することははっきりしている。このためロンドンオリンピックの時に日本は初めて選手村の外に医療や栄養補給、疲労回復の設備を備えた「マルチサポートハウス」という支援拠点をつくりました。選手村内ではスペースが限られ、入場制限が厳しく一部のスタッフしか入れないためです。リオでも村外に『ハイパフォーマンスサポート・センター』を設けています。

 アメリカは早くから支援拠点を設置し、取り組みを進めていました。それに我々が気づいたのは04年のアテネ五輪で、こうした情報をいち早く入手できるかがスポーツ情報戦略の成否を左右します。

 競り合ったときにほんのちょっとの差で勝ち負けが決まるのが、トップアスリートの世界なんですよね。そういう世界ではテクノロジー、用具開発が効果を発揮する。例えば10年のバンクーバー五輪の女子スケルトンでイギリスに初の金メダルをもたらした選手は、新たに開発された保温性の高い新素材を使ったウォーマーを使って試合前の体温の低下を防いでいました」

  • ロンドンオリンピックでメダルをみせる競泳日本代表
    ロンドンオリンピックでメダルをみせる競泳日本代表

 ――メダル獲得成功率という指標の意味

 「我々が選手団の実力を分析するのは、国際競技力の向上のためで、今回のオリンピックでメダルを何個とるかという予測のためではありません。日本選手団の潜在能力がこのくらいある。それを超える結果を出せたのか、潜在力を出し切れずに終わったのか。その結果をもとに、今後の競技力アップのために必要な方策を考えるのが僕らの仕事です。

 ビジネスと一緒です。このぐらいのマーケットがあって、売れる可能性があったけど、実際には売れなかった。これはなぜなんだろうと。投資が効果を上げたか、実を結んだかを評価し、検証する。日本のスポーツでの取り組みが科学的に、システマチックに行われることが重要です。

 ロンドン五輪に向けて、イギリスは06年から「ミッション2012」と呼ばれる改革に乗り出しました。各競技団体の競技力アップの実績に応じて強化資金を戦略的に投資するというもので、日本もこれを参考にしています。

  • ロンドンオリンピックでメダルを手に記者会見にのぞむ体操の内村航平
    ロンドンオリンピックでメダルを手に記者会見にのぞむ体操の内村航平

 以前は国や日本オリンピック委員会(JOC)、日本スポーツ振興センターなどから様々な名目で各競技団体に資金が流れましたが、スポーツ庁ができて強化費が一元化され、資金の流れがみえやすくなりました。遠征や合宿、コーチなどの強化費として年間87億円(2016年度予算)が各競技団体に配分されますが、柔道やレスリング、競泳など国が設定した重点種目に手厚く配分されています。

 イギリスは地元開催のロンドン五輪では、メダル数で世界3位になることを目標に掲げ、それを実現させました。日本は1964年の東京五輪では3位のメダル数でしたし、アテネ五輪では5位でした。金メダルを14~17個とれば、5位以内が視野に入ってきます。メダルの順位は相対関係で決まりますし、ライバルの動向次第では、2020年の東京五輪で世界3位のメダル数を獲得することは不可能ではありません。

 もちろん、メダルの数を増やすことと、国全体のスポーツ環境をよくすることとは表裏の関係です。メダルを数多く獲得するトップスポーツを支える、広いスポーツのすそ野がなくてはならないし、だれもがスポーツを通じて自己実現を果たせる社会でなくてはなりません」

プロフィル
和久 貴洋(わく・たかひろ)
 独立行政法人日本スポーツ振興センター情報・国際部長1965年、北海道生まれ。筑波大学大学院修士課程体育研究科修了。2001年から、国際競技力向上のための情報戦略を担当。筑波大学体育系客員教授。2012ロンドン・オリンピックタスクフォースプロジェクトダイレクター(2011-2012)、文科省スポーツ・青少年局技術参与(2011-2012)。著書に『スポーツ・インテリジェンス:オリンピックの勝敗は情報戦で決まる』(NHK出版)。
2016年08月03日 17時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun