卓球…暗号のようなプレースタイル
「右S裏表前陣速攻」とは?
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「右S裏表前陣速攻」の福原
オリンピックの球技で、一番小さいボールを使う競技。その小さなボールを打ち合うスピード感あふれるプレーが魅力だ。大国・中国の壁は厚いが、日本勢にメダルの期待もかかる。
「右S裏表前陣速攻」。まるで暗号のような言葉が並ぶが、これを一目見て意味が理解できる方は、かなりの卓球経験者、卓球マニアだろう。
これは日本卓球協会が紹介するリオ五輪代表、福原愛のプレースタイルだ。一つひとつ説明すると、「右」は右利き、Sは後述するが、シェークハンドと呼ばれるラケットの握り方。裏・表は、簡単にいえばラケットに貼るラバー。凸凹があるのが表、平らなのが裏。そして最後の「前陣速攻」が本来の意味でのプレースタイルをあらわしている。
卓球では、選手が立つ位置を、卓球台に近い順に「前陣」、「中陣」、「後陣」と呼ぶことを、覚えていただいた上で、選手のプレースタイルを大別すると、「前陣速攻」、「ドライブ主戦」、「カット主戦」に分かれる。少し説明しよう。
【前陣速攻】
卓球台に張り付くように立ち、速いピッチでショットを繰り出して、スピードで相手を打ち負かすスタイル。リオ五輪代表では女子の福原、伊藤美誠がこのタイプとされている。
【ドライブ主戦】
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「左S裏裏ドライブ」の水谷
中陣から後陣に立ち、ボールに前方回転をかけるショットを中心として攻めるスタイル。現在の主流とされるが、ボールを前でさばくことも多く、前陣速攻との差はあまりなくなってきている。リオ五輪代表では、男子の水谷隼、丹羽孝希、吉村真晴、女子の石川佳純がこのタイプ。
【カット主戦】
後陣に立ち、後方回転を中心に強い回転をかけたボールを粘り強く打ち返すことにより、相手のミスを待つ、「守備型」のスタイル。実はこのタイプとの対戦を苦手とする日本の選手は多い。
もちろん、前陣速攻の選手が後方に下がることもあるし、カット主戦の選手がドライブやスマッシュを打つこともある。水谷選手はオールラウンド型と呼ばれることもあるように、プレースタイルはあくまで目安だ。
ラケットは「握手」か「ペン」か?
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シェークハンドの握り
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ペンホルダーの握り
ラケットの持ち方は、握手するようにラケットを握る「シェークハンド」と、鉛筆を握るように持つ「ペンホルダー」に代表される。
ロンドンオリンピックの女子団体で、卓球では初のメダルとなる銀メダルに輝いた日本代表。石川、福原らが個人でもメダルを目指すリオ大会の代表は、男女6人全員がシェークハンドで、フォアでもバックでも対応でき、現在の主流ともいえる。
利き腕でいえば、日本代表6人のうち、石川と水谷、丹羽が左利き、福原、伊藤、吉村は右利き。ただし、水谷は、幼いころは右利きだったのを、卓球で有利なようにと左でプレーするようになった。世界にはティモ・ボル(ドイツ)のように、ラケットを持ち替えて「両打ち」を見せる選手もいる。
ラケットの面に貼るラバーは、表ラバーは表面に粒が出ているので球離れが速い。裏ラバーは平らなので、ボールとの接触面積が広く、回転がかけやすい。
つまり、福原は、右利きで、表面に平らな裏ラバー、裏面に凸凹の表ラバーを貼ったラケットをシェークハンドで握り、卓球台の近くに立ち、速攻が得意な選手、ということになる。
長時間試合を防ぐ「促進ルール」
卓球の面白いルールもいくつか挙げておこう。サーブでトスを上げる際、選手はボールを握らずに、手のひらに乗せている。しっかり握ったほうが、正確なトスが上げられそうなものだが、実は、ルールで決まっている。トスを上げるボールを握ってはいけないし、いったん静止させなければいけない。トスはほぼ垂直に16センチ以上投げ上げ、落ちてくる途中に打たなければいけない。トスを上げてから打つ瞬間まで、相手にボールをはっきり見せなくてはいけない。サーブにまつわるルールは意外と細かい。
長時間試合を防ぐための「促進ルール」と呼ばれる規則もある。各ゲーム(11ポイント先取制)開始後、10分たってもそのゲームが終了しない場合、適用される(両者のスコアの合計が18以上の時は適用されない)。促進ルールでは、レシーバー(サーブを受ける選手)が13回返球すると、レシーバーのポイントとなる。通常では2本ずつで交代するサービスも1本交替に変更となる。