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五輪トピックス

「見方」が変わる? アーチェリーの新感覚メガネ

編集委員・三宅宏
 アーチェリーという競技を、新しい切り口で捉えるメガネ(アイウェア)が登場した。メガネ・サングラスと言えば、普通、視力の矯正や目の保護に使われるが、この新製品はなんと、的中央の黄色い部分が目立って見える工夫が施されているのだ。

  • 上が裸眼、下が「黄色をよく見させるためのレンズ」を通して見た的。写真では分かりにくいかもしれないが、上の的は黄色の周囲の赤と青も鮮やかなのに対して、下の的は周囲がぼやけて、黄色が浮かんで見える。的上部にある黄色で書かれた数字の「2」にも注目。明らかに下のほうがくっきりと見える
    上が裸眼、下が「黄色をよく見させるためのレンズ」を通して見た的。写真では分かりにくいかもしれないが、上の的は黄色の周囲の赤と青も鮮やかなのに対して、下の的は周囲がぼやけて、黄色が浮かんで見える。的上部にある黄色で書かれた数字の「2」にも注目。明らかに下のほうがくっきりと見える

 五輪で行われるアーチェリーは70メートル先の的に向かって矢を放ち、合計得点を競う。的は直径122センチで、1射による最高得点は10点。的の外側に行くに従って得点は下がり、一番外は1点になる。10点を得るには半径6・1センチ以内の中央部に命中させなければならず、この10点ゾーンと、そのひとつ外側の9点ゾーンが黄色で示されている。

 アーチェリーのトップ選手にとって凝視すべきは、この黄色部分だ。7~8点になる赤いゾーン、5~6点になる青いゾーンはあまり重要でない。

 そこに、スポーツ用メガネ・サングラスで定評のあるオークリージャパンが注目した。専門的なことは難しいので省略するが、要は、「レンズで透過率を変えて、余計な光波長を網膜に当てない」ようにして、中央の黄色だけがよく見えるメガネを開発することに成功した。さらに、風が吹く日は、選手たちは矢が曲がることを計算して、あえて、黄色の外側の赤い部分を狙うことがあるため、赤がよく見えるバージョンも作った。

 「選手は何度も何度も70メートルの距離を経験しているので、力加減はつかんでいる。あとは外的要因をセットすれば、よりよく判断できると考えた」と露木慎吾・同社ビジョンマイスター。これまでの常識ではありえなかった発想に関係者も注目、同社は2015年11月に、全日本アーチェリー連盟ナショナルチームのオフィシャルパートナーになった。リオ五輪では、川中香緒里(ミキハウス)、永峰沙織(同)、林勇気(堀場製作所)の女子3選手がこのメガネを持参している。

  • 林勇気は2大会ぶりの五輪出場
    林勇気は2大会ぶりの五輪出場

 「新兵器」が完成したのはそう古くなく、3人がこのメガネを初めて身につけたのは、つい最近、5月のことだった。露木マイスターが3人を訪ね、その際、近くに的がなかったので、マクドナルドの看板を見てもらった。黄色と赤の組み合わせは、アーチェリーの的中央部と同じ。「黄色(のMマーク)が浮き出て見える!」。3人は大興奮。中でも林はその後の練習で完全に自分のものにしており、「光波長をコントロールするレンズに期待している」とコメントしている。

 ただ、リオ五輪で、3人全員が新アイテムを使うかどうかは微妙だ。

  • 川中香緒里(左)と永峰沙織。川中は女子団体で2大会連続のメダルを狙う。永峰は初出場
    川中香緒里(左)と永峰沙織。川中は女子団体で2大会連続のメダルを狙う。永峰は初出場

 大きな大会での実戦経験がないため、慣れ親しんだスタイルからの変更は、ある種の賭けにもなるだろう。当日の気象条件が影響するかもしれない。まだ迷いもあるようで、ロンドン五輪銅メダリストメンバーの川中は「すごくよく見えるけど、(当日の)感覚で判断したい」と話しているという。女子は日本時間の6日午前1時にランキングラウンドが始まる。選手たちの目元に注目だ。

2016年08月04日 15時41分 Copyright © The Yomiuri Shimbun