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観戦ミニガイド

重量挙げ…“ルーツ”は採点競技、実は繊細

 体重の倍ほどもあるバーベルを両手でつかみ、高々と頭上へ――。豪快で迫力満点の「重量挙げ」競技だが、勝敗を分けるポイントは意外なところにあるという。

  • 写真=重量挙げ女子48キロ級に出場する日本のエース・三宅宏実(今年5月、山梨市で)
    写真=重量挙げ女子48キロ級に出場する日本のエース・三宅宏実(今年5月、山梨市で)

 基本ルールは見た目の通り、単純明快だ。使うのはバーベルと生身の肉体。挙げ方は2種類ある。床に置いたバーベルを一気に頭上へと引き上げる「スナッチ」と、肩の高さまでいったん上げて静止し、続けて全身の反動を利用して持ち上げる「ジャーク」。各3回の試技を行い、それぞれのベストの重さを足した合計で順位を競う。世界記録は、男子の最も重い階級で472キロ、女子では348キロにもなる。

 といっても、単なる「怪力比べ」ではない。「その力をどう使うのか、どんなタイミングで出すのかがカギになる」(日本ウエイトリフティング協会・篠宮稔専務理事)。技術が重要なのだ。

 床から頭上へとバーベルを引き上げる動きにはいくつかのポイントがあり、そこで最大の力を発揮するためには、逆に「力を抜く」ことも必要になる。また、重いバーベルは動かした時の反動が大きく、必要以上の力を入れると、余計な重みとなってのしかかって来る。腕力・筋力の絶対量と同じぐらい、その微妙なコントロールが大切だ。うまくできるかどうかは、コンディションや感覚、経験、イメージなど様々な要素に左右されるといい、「そういう意味では繊細な競技」と同専務理事は話す。

 同じように「繊細」なのが、成功・失敗の判定だ。目を光らせるのは、3人の審判と5人のジュリー(陪審)。バーベルを頭上に挙げることができても、「両足、胴体、バーベルが平行でない」「動きがスムーズでない」などと判定されれば、失敗とされてしまう。求められるのは、動作を乱すことなく極限の力を発揮するという、採点競技にも似た「二律背反の両立」だ。

  • 写真=リオ五輪に出場する女子重量挙げの代表選手たち(左から三宅、八木、安藤、63キロ級の松本潮霞(なみか)=今年7月、味の素ナショナルトレーニングセンターで行われた公開練習で)
    写真=リオ五輪に出場する女子重量挙げの代表選手たち(左から三宅、八木、安藤、63キロ級の松本潮霞(なみか)=今年7月、味の素ナショナルトレーニングセンターで行われた公開練習で)

 それもそのはず、近代五輪の草創期、重量挙げは体操競技の1種目として実施されていた。当時は体重による階級分けがなく、現在では見られない「片手ジャーク」などの種目も行われていたという。“独立”を果たしたのは1920年のアントワープ大会から。2000年のシドニー大会から女子が正式種目に加わった。

 そんな生い立ちを持つ重量挙げ競技の“申し子”と呼べそうな選手が、日本女子の「期待の星」としてリオ五輪に出場する。53キロ級の八木かなえ(24)と、58キロ級の安藤美希子(23)だ。

 2人は体操選手出身。ともに高校入学を機に重量挙げを始めた。八木は、全国高校選手権で史上初の3連覇を達成し、20歳の時にロンドン大会で五輪初出場(53キロ級12位)。バーベルを掲げた瞬間に見せる笑顔がトレードマークだ。今回が初出場の安藤は、48キロ級の銀メダリスト・三宅宏実(30)と同じ「いちごグループHD」に所属。前回、出場を逃した悔しさをバネに腕を磨いてきた。

 八木の高校時代からの重量挙げの恩師は、転向に成功した理由を「(体操種目の)跳馬で培った瞬発力とバランス」と話している。こうした「しなやかな力」を武器に、日本勢が表彰台に見事な“着地”を決められるのか、注目したい。

2016年08月05日 15時45分 Copyright © The Yomiuri Shimbun