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小倉記者の現地リポート

ものものしい警備と、会場の熱気…開会式

メディア局編集部 小倉剛
  • リオ五輪の開会式が行われ、花火に彩られたマラカナン競技場(5日午後8時5分、ブラジル・リオデジャネイロで)=増田教三撮影
    リオ五輪の開会式が行われ、花火に彩られたマラカナン競技場(5日午後8時5分、ブラジル・リオデジャネイロで)=増田教三撮影
  • 会場の外はものものしい警備が
    会場の外はものものしい警備が
  • 会場からファベーラを望む。写真奥の斜面に広がる家々がファベーラ
    会場からファベーラを望む。写真奥の斜面に広がる家々がファベーラ
  • 開場前にもかかわらず、すでに多くの人が列を作る
    開場前にもかかわらず、すでに多くの人が列を作る
  • 笑顔を見せる売店の職員(彼らが無愛想だったわけではない)
    笑顔を見せる売店の職員(彼らが無愛想だったわけではない)
  • ひときわ目立つ栗原さん
    ひときわ目立つ栗原さん
  • 寄せ書きの書かれた日の丸を広げる三平さん
    寄せ書きの書かれた日の丸を広げる三平さん

 リオ五輪の幕開けを告げる開会式が5日(日本時間6日)、リオ市内のマラカナン競技場で行われた。日本でも、多くの人が華やかなセレモニーの様子を目にしたことだろう。

 無事、成功を収めた開会式だったが、実はテロの可能性など、治安面での問題が懸念されていた。会場の外はものものしい警備で、最悪の事態に備えていた。

 一方で、セレモニー自体はブラジルらしい音楽と踊りにあふれた華やかなもので、観客も大いに盛り上がっていた。開会式の中と外を取材した。

会場周辺は、銃で武装した兵士らが警備

 5日当日、開会式を見るため、会場を訪れた。セレモニーは午後8時開始予定だが、念のため開場時間の午後4時半をめざして出発した。五輪期間中は、会場周辺の交通規制が厳しく、タクシーではなかなか近くまでたどり着けない。少し離れた場所から、入場口に向けて歩くことになった。

 会場周辺にはファベーラ(貧民地区)もあり、治安があまり良くない地域だという。タクシーを降りると、早速、銃で武装した兵士の集団が目に入った。消防車や救急車も待機している。

 そこから10分ほど会場沿いの道を歩く。道沿いには、侵入者を防ぐためのフェンスが張り巡らされていた。ここにもところどころに警察や軍が哨戒に立ち、不意の事態に備えている。彼らの姿を見ると、守られているように思え、若干安心する。

会場内は一転、笑顔で歓迎

 入場口に着いたのは、開場の30分ほど前だった。セレモニーまでまだ4時間もあるが、すでに多くの人が列を作っていた。特に緊張した様子はなく、みな「開会式が待ちきれない」といった表情だ。

 午後4時35分、入場が始まった。予定より5分ほど遅れたものの、非常に順調だ。会場内に入ると、ボランティアが笑顔で迎えてくれる。接客中は無愛想な売店の人たちも、カメラを向けると笑顔を見せてくれた。会場内にも兵士が立っているが、彼らも笑顔。会場の中に入ると、ものものしさがすっかりなくなってしまった。

 客席を見渡すと、様々な国からたくさんの人がやってきているようだ。しかし、日本人の姿はあまり多くなさそう。競技の応援に来る人はいても、開会式まで見る人は珍しいのかもしれない。

 そんな中、ひときわ目立つ日の丸の帽子をかぶった男性に遭遇した。埼玉県熊谷市の会社社長、栗原志功さん(44)。地元から代表メンバーが多く出ている女子ラグビーを目当てに来たそうだ。

 ブラジルに来る機内で、開会式のチケットが買えることに気づき、せっかくだからと購入したという。「どんな演出があるのか、楽しみにしている。2019年のラグビーワールドカップの参考にしたい」と話す。

 ラグビーは2019年、日本でワールドカップが開催され、熊谷市も競技会場の一つ。自身が所属する商工会議所でも、イベントができないか検討しているそうだ。

 日の丸とブラジル国旗を両方巻いた若い女性にも話を聞いてみた。リオ市の隣、ニテロイ市に留学中の大学生、三平麻央さん(21)。留学中にこのようなイベントがあることはめったにないと、親にもすすめられてやってきたという。

 「友達のブラジル人も誘ったんですが、あまり興味がないみたいで……。でもみんなに寄せ書きを書いてもらって持ってきました」と、日の丸に書かれた寄せ書きを見せてくれた。「これまで開会式を見たことがないですが、今回はすごいと聞いているので早く見たい」と笑顔を見せた。この後は、卓球やレスリングなども見る予定という。

ハイテンションの観客、抑えられない熱気

 セレモニーが始まるまで、まだしばらく時間がある。水でも買おうと売店に行くと、どこも長蛇の列。仕方なく並ぶが、列の進みがとんでもなく遅い。おそらくオペレーションの問題なのだろうが、日本のそれに慣れた身には非常にもどかしい。結局、30分以上待つことになった。

 そうこうしていると、ようやく開会式が始まった。セレモニーの内容はニュース記事を読んでいただくとして、会場の盛り上がりは想像以上だった。観客席もほぼ満席といっていい印象だ。セレモニー前から、会場ではウエーブが起きたり、ダンスの練習イベントがあったりと、観客のテンションは上がり続けていた。始まってからは、ダンスに合わせて立ち上がって、踊る、踊る、踊る……。後ろから「座れ!」と声がかかっても、だれも熱気を抑えられない。

 各国選手団の入場が始まると、客席からはたびたび歓声が。観客が多いと思われる南米や欧州の国の盛り上がりがすごいが、選手団の規模が小さい国に対しても、客席からは国名を呼びかける温かい声援が送られていた。日本の入場時にも、日系人の多い土地柄か、かなり大きな歓声が上がっていた。

 そして、最後にブラジル選手団が現れると、会場は「ブラジル」コール一色。音楽もそのものずばりのサンバ曲「ブラジル」に切り替わり、まさにお祭りモードといった感じだ。そのまま聖火リレー到着まで会場は盛り上がり続け、終演を迎えた。

 興奮冷めやらぬ中、観客は続々と帰途についた。記者も戻ろうと会場を出ると、相変わらずのものものしい警備が目に入ってきた。遠くからはサイレンの音も聞こえてくる。なんとなく今までの盛り上がりに水を差されたような気がしたが、よく考えるとこの警備があったからこそ、安全に盛り上がれたわけだ。

 だんだんと人通りが少なくなる会場沿いの道を歩きながら、たぶん開会式を見られなかっただろう警察官や兵士に心の中で感謝をした。

2016年08月07日 11時53分 Copyright © The Yomiuri Shimbun