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五輪トピックス

賭博問題で揺れたバドミントン界。「代役」の心情は

編集委員・三宅宏
  • ロンドン五輪男子シングルス準々決勝で、絶対王者の林丹(左)に敗れたものの大善戦した佐々木(2012年8月2日、中村光一撮影)
    ロンドン五輪男子シングルス準々決勝で、絶対王者の林丹(左)に敗れたものの大善戦した佐々木(2012年8月2日、中村光一撮影)

 事前に発覚した一連のドーピング問題で、大会に参加できない選手が大量発生するという異様な五輪が始まった。出場を認められなかった選手・国に代わって、繰り上げ出場となった選手は多い。日本の例を見ると、重量挙げ男子の2人、陸上男子1600メートルのメンバーが、追加での出場組だ。違法賭博問題で無期限出場停止処分を受けた桃田賢斗に代わって代表権を得たバドミントン男子シングルスの佐々木翔(34)(トナミ運輸)も繰り上げ組には違いないが、事情はちょっと違う。2人はともに日本を引っ張ってきた僚友だったからだ。

 日本の男子シングルス出場枠は「1」で、その枠は当然、世界ランク4位(事件発覚時)で日本選手トップの桃田に回るはずだった。佐々木は3月に「自分は今年で終わり」と明言していて、五輪出場を逃したら、その時点で引退するつもりでいた。ところが、4月上旬に桃田の不祥事が発覚。世界ランクが抹消され、日本勢トップ(27位)になった佐々木にお鉢が回ってきた。当時の心境を、佐々木はこう振り返る。

 「同じ競技で、お互いに認め合って、日本の強さを証明したい、と2人でやってきたのでショックだった。男子シングルスのメンバーがバドミントン界に迷惑をかけた、という思いもあった。すごい複雑。誰も思いつかないような筋書きだった。出場できたから正解、というものではなかった」

 佐々木はロンドン五輪の準々決勝で絶対王者の林丹(中国)から1セットを奪って最後まで苦しめ、目の肥えた英国ファンから大喝采を浴びた実力者だ。桃田は、そんな佐々木を超えるエースとして期待されていた。弟分の不祥事、それに伴う代役出場に、揺れた佐々木の思いは理解できる。6年前からメンタルトレーニングを取り入れている佐々木にしても、しばらくはモヤモヤした気持ちをどうすることもできなかった。

 精神的に厳しい状態だった佐々木の心を晴らしてくれたのは、ひとつの音楽だった。

 「ルイ・ブルジョアの賛歌による変奏曲」

  • 今年6月にふるさとの北斗市を訪問、市役所で激励を受けた佐々木(中央)
    今年6月にふるさとの北斗市を訪問、市役所で激励を受けた佐々木(中央)

 昔から気に入っていた吹奏楽曲で、母校の上磯中(北海道北斗市)が6月中旬に開いてくれた壮行会で演奏してくれた。そのレベルがすごかった。上磯中は2015年の全日本吹奏楽コンクールで金賞を受賞した実力校で、その時に披露したのがこの曲だった。自分がいつも聴いている曲を、後輩たちが見事に演奏するのを生で聴くと改めて感動した。

 「純粋で澄みきった音色を聴いて、自分の育った原点を思い出した。清らかな気持ちで競技に向き合うことを、忘れてはいけないと思った」

 モヤモヤしていた気持ちが晴れた。

 経緯はどうであれ、「ずっと日本代表として、覚悟を持って戦ってきた」自負はある。その気持ちは今回も変わらない。五輪を一度経験している分、今回は周囲を見渡せる余裕もできた。

 日本時間8月13日午後10時10分、佐々木は1次リーグの初戦を迎える。

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2016年08月08日 13時18分 Copyright © The Yomiuri Shimbun