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観戦ミニガイド

トランポリン…より高く、美しく 体操競技の空中戦

  • 日本トランポリンのエース、伊藤正樹(2016年2月6日撮影)
    日本トランポリンのエース、伊藤正樹(2016年2月6日撮影)

 人間の力では到達できない高さと、その高さを生かして宙返りの華麗さを競うトランポリン。シドニー大会から個人が正式種目に採用されている。滞空時間が長くて優雅なスポーツに見えるが、選手にとっては「一発勝負」の怖い競技のイメージが強い。

 競技では、助走に当たる予備ジャンプに続き、計10本のジャンプを跳ぶ。ジャンプは1本ずつ採点し、合計点を出す。これを「第1演技」と「第2演技」でそれぞれ行う。演技は一度始めたら、失敗したからといって途中でやり直しができない。一つのミスがその後のジャンプの点数に大きく影響する。難しいジャンプを先に跳ぶか、後に回すか。ジャンプの種類と順番を考えるところから、試合は始まると言っても過言ではない。

 ジャンプの採点には三つの要素がある。センサーで機械的に高さを計測する「跳躍時間点」(T点)、体のひねりや宙返りなどの内容に応じて点数が決まっている「難度点」(D点)、そして、ジャンプの完成度を審査員が減点方式で審査する「演技点」(E点)だ。

 最終的には第1演技と第2演技の総合点で順位が決まるが、ポイントになるのが比重が大きい演技点だ。難しいジャンプに挑戦すればするほど、高い難度点を期待できるが、きれいに跳べなければ演技点が大きく減点されてしまう。逆に、簡単なジャンプは難度点こそ低いが、高い演技点が期待できる。ライバル選手との駆け引きがここで生まれる。

  • 笑顔を見せる伊藤正樹(右)と棟朝銀河(2016年2月6日撮影)
    笑顔を見せる伊藤正樹(右)と棟朝銀河(2016年2月6日撮影)

 ロンドン大会4位の実力者で、日本トランポリンのエース、伊藤正樹はメダル候補の一人。伊藤の武器は世界トップレベルの高さだが、何度ジャンプしても同じ場所に着地する驚異の安定感が持ち味。この伊藤と同じく安定感が高いのが中国勢だ。空中で技を決めた瞬間の姿勢と、どれだけ同じ場所に着地を決められるかに注目してほしい。このほか日本から、男子は棟朝銀河、女子は中野蘭菜が出場する。

危険と隣り合わせ…安全対策を強化

 トランポリンは危険と隣り合わせの競技でもある。世界トップレベルの選手になると、ジャンプの高さは約8メートル。空中で姿勢を崩してトランポリンの外に着地したら、大けがをしかねない。そのため、トランポリンの周囲には、万が一に備えて4人の係員(スポッター)が落下点に素早くマットを敷けるよう待機している。国際ルールではマットを持つスポッターは1人だけだが、国内では安全のためマットを2人まで認める大会が増えている。

  • 初の五輪出場となる中野蘭菜(2016年4月19日撮影)
    初の五輪出場となる中野蘭菜(2016年4月19日撮影)

 もともとは中世ヨーロッパのサーカスで生まれたと言われているトランポリン。日本に伝わったのは戦後で、1960年代以降、練習方法の研究や組織作りが進んだ。日本体操協会によると、国内の競技人口(団体登録者数)はまだ約1500人と少ない。体操競技全体の約1割程度のマイナー競技だ。理由としては、トランポリンで使う器具が高額であること、高さと広さのある施設でないと大会が開けないことなどが挙げられる。

 あまり知られていないが、石川県で突出してトランポリンが普及している。都道府県別登録者数(2015年)は、1位が石川県の232人で、2位の東京都(231人)、3位の大阪府(218人)を上回っている。伊藤も在籍した金沢学院大学などが中心になって、地域の子どもたちやその母親を対象に裾野を広げてきたのが、近年効果を上げてきたと言われている。

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2016年08月12日 11時51分 Copyright © The Yomiuri Shimbun