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小倉記者の現地リポート

五輪の評価は?…ブラジル人に聞く

メディア局編集部 小倉剛

 プールの水が変色したり、チケットの売れ行きが伸び悩んだりと、日々、問題が報道されているリオ五輪だが、実際に会場に行ってみると、意外と順調に進んでいるように見える。競技会場の集まる五輪公園で、ブラジルに住む人たち約20人にリオ五輪の感想を聞いてみた。少し気が早いが、東京五輪についてもあわせて質問してみた。

意外?にも運営は及第点

  • チアゴ・ゼネーロさん(右)と妹のカロリーナさん
    チアゴ・ゼネーロさん(右)と妹のカロリーナさん
  • マルセロ・ベアエニ・バンコービさん(右)一家
    マルセロ・ベアエニ・バンコービさん(右)一家

 リオ五輪の感想で多かったのが、「きちんと組織化されている」という意見だ。開幕前のスタジアム建設の遅れや資金不足の問題などがあっただけに、予想外の順調な進行ぶりは、ちょっとした驚きをもって見られているようだ。

 首都ブラジリアから観戦に来たチアゴ・ゼネーロさん(24)は「実はあまり期待してなかったけど、来てみたらきれいで組織立っていて、とてもいいよ」と評価。家族で訪れていたマルセロ・ベアエニ・バンコービさん(42)も、自身がかつて住んでいた米国や欧州の五輪と比較して「不十分なところもあるけど、よくやっているんじゃないかな」と及第点をつけた。

 日々、運営が改善されていくのを実感している人もいた。ブラジル北部のアマパー州から来たというエリザーニ・メロさん(36)は、「初日は売店でだいぶ待たされたけど、今は待ち時間も減った」と話していた。大イベントをやりきることで「心持ちが明るくなって、ブラジルが良くなるきっかけになるはず」というジオバンニ・パスコアールさん(21)のような意見も聞かれた。

 一方で、五輪に多額の費用がかけられたことに対する不満の声もあった。カミーラ・ファリアシさん(25)は、「リオ市長が教育や福祉にかけると言っていた予算が、五輪に回されて無くなってしまったのは残念」と指摘した。とはいえ、アリーニ・メロさん(27)のように「スポーツと政治や経済は別。たとえそういうことがあっても、アスリートを応援することに変わりありません」という人が多かった。

  • エリザーニ・メロさん
    エリザーニ・メロさん
  • ジオバンニ・パスコアールさん(左)ときょうだい
    ジオバンニ・パスコアールさん(左)ときょうだい

  • カミーラ・ファリアシさん(右)と友人のアリアーニ・テイシェイラさん
    カミーラ・ファリアシさん(右)と友人のアリアーニ・テイシェイラさん
  • アリーニ・メロさん
    アリーニ・メロさん

東京五輪では…行列を減らして!

  • タイナーラ・メロ・ジ・カルバーリョさん
    タイナーラ・メロ・ジ・カルバーリョさん

 日本についても尋ねてみた。リオ五輪で日本人が活躍しているので、まず「知っている日本の選手はいますか?」と聞いてみた。

 自身も柔道選手のタイナーラ・メロ・ジ・カルバーリョさん(21)は、「松本薫選手と大野将平選手が好き」と名前を挙げてくれたが、それ以外のブラジル人からは、具体的な名前は一人も挙がらなかった! 個人的には、体操の個人総合で優勝した内村航平選手なら知っているだろうと思っていたのに……。

 少し残念に思っていると、前出のマルセロさんから「君たちだって、ブラジルの選手はネイマールくらいしか知らないだろう?」と逆襲されてしまった。

  • ジョラーシ・シェンさん(右)と娘のカロウさん
    ジョラーシ・シェンさん(右)と娘のカロウさん

 東京五輪についても質問した。全員が、次の開催地が東京だと知っていた。中には、ジョラーシ・シェンさん(40)と娘のカロウさん(19)のように「東京五輪には、ボランティアで行きたいと思っているの」とうれしい返事をしてくれた人も。

 「リオ五輪を経験してみて、次の東京五輪に望むことは?」と聞くと「とにかく行列を減らしてほしいわね……」とのことだった。私も、リオに来てから、五輪公園の入り口や売店など至るところで長蛇の列に並んできただけに、この意見には「確かに」と深く同意してしまった。

 前出の柔道選手タイナーラさんは「今回は出られなくて悔しいけど、東京五輪には必ず出るわ」と、選手として東京を目指すことを宣言してくれた。

  • パウラ・カルバーリョさん
    パウラ・カルバーリョさん

 また、東京五輪成功の秘けつを教えてくれたのは、パウラ・カルバーリョさん(30)。「ブラジル人はオープンな人柄だから、どんな人でも受け入れられる。それがうまくいく秘けつね。次の日本も含めて、五輪を開催する国には、ぜひ同じような気持ちで運営してほしいわ」と期待していた。

リオではインフラが残る、日本では何を残すのか

 「東京五輪の意義を考えるべき」と提案してくれたのは、前出のチアゴさん。「大切なのは大会後に何を残すか。たとえばリオはインフラがレガシー(遺産)として残る。日本でも何を残すのか、考えるべきじゃないかな」と、五輪の目的のひとつである「レガシー」の大切さを話してくれた。

  • ガブリエラ・モウラさん(右)と子どもたち
    ガブリエラ・モウラさん(右)と子どもたち

 今回話を聞いて一番心に残ったのは、子ども連れで訪れたガブリエラ・モウラさん(43)の言葉だ。

 「ブラジルといえばサッカーだけど、五輪が開かれたことでサッカー以外のスポーツを知るきっかけになった。そういったスポーツを子どもたちに見せられることは、とても意義のあること。子どもの可能性を広げることができるから」

 テレビで五輪を見ていると、「日本はメダルをいくつとれるか」といった見方になりがちだが、五輪の本当の魅力はスポーツの素晴らしさを実感できることなのだなと思った。これは実際に五輪を体験してみないと、なかなか気づかないことかもしれない。

 東京五輪の話題は、新国立競技場の建設費や増大する開催費用、海外の観客に対する「おもてなし」の方法といった課題面が多い。そうした課題の解決とともに、開催した後で、私たち開催国に住む日本人が、五輪を通して何を得ることができるのかを、じっくり考える必要がある。その答えが出た時、東京五輪の成功が見えてくるのではないかと、インタビューを通じて感じた。

 (ブラジル人へのインタビューを、公式アカウント「読売新聞五輪報道」のツイッターフェイスブックの「リオ発VOZ(声)」でも紹介しています。)

2016年08月17日 11時57分 Copyright © The Yomiuri Shimbun