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観戦ミニガイド

番外編…日本列島がわいた! 逆転メダルの数々

 リオデジャネイロ五輪が閉幕した。組織的ドーピングを理由とするロシア陸上選手団の排除、治安への懸念などのマイナス要素もあった大会ではあったが、競技自体のレベルは低くなかった。競泳、重量挙げのほか、五輪では記録が出にくいと言われる陸上でも三つの世界新記録(男子400メートル、女子1万メートル、女子ハンマー投げ)が出た。2020年に東京五輪を控える日本勢は大躍進。メダルの数は、金12、銀8、銅21で合計41個は史上最多となった。中でも印象的なのは逆転でつかんだメダルの数々だ。主な逆転劇を、本人の言葉とともに振り返ってみる

■大会2日目(日本時間8月7日)

・重量挙げ女子48キロ級銅メダル 三宅宏実(いちごグループHD)

  • 重量挙げ女子48キロ級で銅メダルに輝いた三宅宏実。ロンドンの銀に続く2大会連続のメダル獲得となった(2016年8月8日、関口寛人撮影)
    重量挙げ女子48キロ級で銅メダルに輝いた三宅宏実。ロンドンの銀に続く2大会連続のメダル獲得となった(2016年8月8日、関口寛人撮影)

 逆転劇の先陣を切ったのが三宅だった。3回行う前半のスナッチでは81キロを2回失敗、3回目を挙げられなければ後半のジャークに進めないところまで追い込まれた。その3回目は尻もちをつきそうになる場面もあったが、何とか持ち上げに成功した。それでも、この時点ではまだ8位。ロンドン五輪銀に続くメダルは厳しいかと思われたが、ジャークでは、成功→失敗の後の3回目に107キロを挙げ、計188キロで銅メダルを獲得した。

 「もう私の夏は終わったと思った。奇跡です。この日のために4年間、積み重ねてきた。表彰台に乗れて本当にうれしい」

■大会5日目(日本時間8月10日)

・競泳男子200メートルバタフライ銀メダル 坂井聖人(早大)

  • 競泳男子200メートルバタフライで、五輪初出場の坂井聖人は、マイケル・フェルプス(米)に0秒04差に迫る2位で銀メダルを獲得した(2016年8月9日、金沢修撮影)
    競泳男子200メートルバタフライで、五輪初出場の坂井聖人は、マイケル・フェルプス(米)に0秒04差に迫る2位で銀メダルを獲得した(2016年8月9日、金沢修撮影)

 マイケル・フェルプス(米)が登場することと、400メートル個人メドレーで銅メダルを獲得した瀬戸大也(JSS毛呂山)がいたことから、レース前は目立った存在ではなかった。レースでも150メートルまでは6位と中位以降にいて、フェルプスには1秒以上も離されていた。ところが残り50メートルになってからの猛追がすごかった。先行する選手を次々と抜いて2位でゴール。王者フェルプスまで、0秒04差に迫る快泳だった。

 「4位ぐらいかなと思った。電光掲示板を見てびっくりした。この喜びは何度も味わえないと思う。多くの人に支えてもらった」

■大会6日目(日本時間8月11日)

・体操男子個人総合金メダル 内村航平(コナミスポーツ)

  • 体操男子個人総合で2連覇を達成した内村航平。逆転での金メダルが決まった瞬間、喜びを爆発させた(2016年8月10日、竹田津敦史撮影)
    体操男子個人総合で2連覇を達成した内村航平。逆転での金メダルが決まった瞬間、喜びを爆発させた(2016年8月10日、竹田津敦史撮影)

 五輪連覇を狙う大本命を、ウクライナの22歳が脅かした。5種目を終えて、首位はオレグ・ベルニャエフで、内村はまさかの2位。差は0・901点もあり、残りの鉄棒1種目だけでは、逆転は難しいと思われた。ここで、内村が神懸かり的な演技を見せる。四つの手放し技を含む、ベルニャエフより難度が0・6点も高い演技構成をダイナミックに表現、着地もピタリと決めた。15・800点。一方のベルニャエフは車輪で肘が曲がるなどのミスがあり、着地は両足が前に弾んだ。14・800点。0・099点差で内村が逆転した。着地で動けば、少なくとも0・1点を引かれる。内村の着地がずれていたら、0・001差で優勝を逃したかもしれないほど僅差の勝負だった。

 「出し切った。自分が求めていたスタイルを変えずに、ミスなく着地までまとめることが五輪でできたのは達成感がある。本当に持ち味を出せた」

■大会7日目(日本時間8月12日)

・競泳男子200メートル個人メドレー銀メダル 萩野公介(東洋大)

  • 競泳男子200メートル個人メドレーで銀メダルの萩野公介。「もっといい勝負をしたかった」と満足できない部分もあったが、表彰式を終えると笑顔を見せた。(2016年8月11日、金沢修撮影)
    競泳男子200メートル個人メドレーで銀メダルの萩野公介。「もっといい勝負をしたかった」と満足できない部分もあったが、表彰式を終えると笑顔を見せた。(2016年8月11日、金沢修撮影)

 400メートル個人メドレーで金メダルを獲得している萩野が2冠に挑んだ。最初のバタフライは3位。背泳ぎも伸びず、平泳ぎで5位にまで落ちたが、最後の自由形で猛追、順位を2位にまで押し上げた。ただ、優勝したフェルプスとのタイム差は1秒95もあった。「怪物」と優勝争いができなかったことに、日本のエースは満足できなかった。

 「もっといい勝負をしたかったというのが、率直な感想。素直に疲れました。今一番ほしいのは、強さ。どうやったらもっと強くなれるのかと思う」


■大会8日目(日本時間8月13日)

・テニス男子シングルス銅メダル 錦織圭(日清食品)

  • テニス男子シングルス準々決勝。大逆転でガエル・モンフィス(仏)を下した錦織圭は勝利の瞬間、拳を握りしめた。(2016年8月12日、関口寛人撮影)
    テニス男子シングルス準々決勝。大逆転でガエル・モンフィス(仏)を下した錦織圭は勝利の瞬間、拳を握りしめた。(2016年8月12日、関口寛人撮影)

 錦織が銅メダルを決めたのは、大会10日目のラファエル・ナダル(スペイン)と戦った3位決定戦なのだが、メダル獲得への道を語る時、大会8日目の準々決勝、ガエル・モンフィス(仏)戦は外せない。試合は1-1から最終第3セットに入り、タイブレイクにもつれこんだ。ここで、錦織は4連続失点で0-4に。そこから3-6と進み、マッチポイントを握られた。錦織が執念を見せたのがここからだ。ラリーの主導権を奪って盛り返す。3度のマッチポイントをしのぎ、一気の5ポイント連取で、土壇場の大逆転に成功した。

 「相手の集中力が下がる部分が絶対に来るはず(と思っていた)。ずっと劣勢だったので、信じられなかった」


■大会13日目(日本時間8月18日)

・レスリング女子48キロ級金メダル 登坂(とうさか)絵莉(えり)(東新住建)

・レスリング女子58キロ級金メダル 伊調(いちょう)(かおり)(ALSOK)

・レスリング女子69キロ級金メダル 土性(どしょう)沙羅(さら)(至学館大)

  • 決勝をいずれも大逆転で勝ったレスリング女子の3選手。左から、69キロ級の土性沙羅、58キロ級の伊調馨、48キロ級の登坂絵莉。(2016年8月17日、松本剛撮影)
    決勝をいずれも大逆転で勝ったレスリング女子の3選手。左から、69キロ級の土性沙羅、58キロ級の伊調馨、48キロ級の登坂絵莉。(2016年8月17日、松本剛撮影)

 1日で3人もの金メダリストが生まれるという日本レスリング界にとって画期的な日になった。決勝はいずれも終盤になってからの奇跡的な逆転劇で、「歴史的な1日」として長く語り継がれることだろう。

 まず登坂は、残り5秒での大逆転。0-2から1点を返したあと、残り13秒で相手選手の足に飛び込み、そこから背後を取った。2点を加え、3-2で金メダルを勝ち取った。

 「足を取るまで全然覚えていない。でも絶対に離さないぞと思った。絶対に勝ちたいという気持ち。ここで取らないと勝てないという時に、気持ちが折れちゃいけない」

 続く伊調も、残り5秒での大逆転。1-2とリードを許して迎えた残り30秒、相手選手が足にタックルにくるのを逃さなかった。これをつぶして、背後に回って2得点。こちらも3-2での逆転勝ちだった。

 「攻めに行くことを考えていたけど、相手が来た。相手に入らせて取らせようと思っていたわけじゃなく、ナチュラルです。(自己採点は)金メダルに免じて30点」

 最後の土性は、残り30秒での大逆転。0-2の劣勢から、倒れた相手選手の左足を取って同点に追いつき、同点の場合は「より大きな技で得点を挙げた方が勝つ」という「ビッグポイント」の規定により内容勝ちした。

 「前に試合をやっていた(伊調)馨さん、(登坂)絵莉さんも、最後の最後まであきらめなかったのを見ていたので、最後まで絶対にあきらめずにやろうと決めていた」


■大会14日目(日本時間8月19日)

・バドミントン女子ダブルス金メダル 高橋礼華(あやか)、松友美佐紀組(日本ユニシス)

  • 奇跡的な大逆転で日本バドミントン界初の五輪金メダルをもたらした女子ダブルスの高橋礼華(左)、松友美佐紀組。表彰式では満面の笑みを見せた(2016年8月18日、三浦邦彦撮影)
    奇跡的な大逆転で日本バドミントン界初の五輪金メダルをもたらした女子ダブルスの高橋礼華(左)、松友美佐紀組。表彰式では満面の笑みを見せた(2016年8月18日、三浦邦彦撮影)

 世界ランク1位の高橋、松友組は、同6位のデンマークペアに1ゲームを先行された。第2ゲームを取り返したものの、最終第3ゲームは16-19となり、あと2点で敗戦という絶体絶命のピンチに追い込まれた。ここから日本の逆襲が始まる。松友がネット際に落として17-19。松友の強打が決まって18-19。松友のスマッシュで19-19。長いラリーを日本が制して20-19。高橋の強打を相手がネットにかけて21-19。驚異的な5点連取で、日本バドミントン界初の五輪金にたどりついた。

 高橋「(16-19の場面について)ここからでも逆転はあり得ると思っていた。追いつけた時に、『こういう時は自分たちの方が強い』と思ってプレーできた。19オールからはどうやって決めて、ここまできたのかがわからないぐらいすごい集中していた」

 松友「ファイナル(ゲーム)で『もう一回自分がやってきたことを最後あきらめずに出そう』と思った。それが出せて逆転できたと思う。2人でオリンピックで金メダルを取りたいという目標でやってきて、まさか本当にかなうとは思っていなかった」


■大会15日目(日本時間8月19日)

・陸上男子50キロ競歩銅メダル 荒井広宙(ひろおき)(自衛隊)

  • 陸上男子50キロ競歩。3着でゴールした荒井広宙だったが、一時は失格になりかけた。念願のメダルを手にして、喜びもひとしお(2016年8月19日、竹田津敦史撮影)
    陸上男子50キロ競歩。3着でゴールした荒井広宙だったが、一時は失格になりかけた。念願のメダルを手にして、喜びもひとしお(2016年8月19日、竹田津敦史撮影)

 レース終了後に、「逆転」→「再逆転」が起きた。荒井は3着でゴール。銅メダルを獲得したかと思われたが、カナダ陸連が「4位のカナダ選手と接触したのは妨害行為にあたる」として審判長に抗議、認められて、荒井は失格となってしまった。ただちに、日本陸連が国際陸連に上訴、荒井の失格処分は取り消されて事なきを得た。コースで応援していた荒井の兄の英之さんが「大どんでん返しが起きた」と評したほどの「再逆転劇」だった。

 「なんで? という思いだったが、上が決めたことだから仕方ないと考えていた。ダメなのかなあという思いと、(メダルを)取れたらどうしようと、気持ちが行ったり来たりしていた。普通に取ったメダルよりうれしい」

2016年08月22日 13時21分 Copyright © The Yomiuri Shimbun