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    平昌リポート

    江陵で五輪観戦のあとは「コーヒー通り」がオススメ

    • 安木(アンモク)海岸に設営された会場。辺り一面にコーヒーの香ばしい香りが漂う
      安木(アンモク)海岸に設営された会場。辺り一面にコーヒーの香ばしい香りが漂う

     平昌オリンピックの取材で韓国に滞在して約2週間。早朝から深夜まで競技会場をかけまわるので疲れがたまる毎日だ。きょう、ふと気がついたのは、日常生活に潤いを与える「何か」が欠けているということ。よく考えたら、朝と昼に1杯ずつ飲んでいたコーヒーをしばらく口にしていないことだった。

     各競技場のプレスルームの一角には、ドラム缶のようなコーヒーポットが置かれていて、蛇口をひねれば紙コップで自由に飲めるようになっている。だが、味も香りもとうに飛び、ただ熱いだけの黒い液体になり果てている。

    • 「コーヒーストリート」の一角で、スホランとバンダビがお迎え。記念撮影のスポットになっていた
      「コーヒーストリート」の一角で、スホランとバンダビがお迎え。記念撮影のスポットになっていた

     氷上競技が開かれている江陵(カンヌン)で午前のスケート取材を終えて一息ついた時、スマホで「おいしいコーヒーが飲みたい」と打って検索したところ、海岸方面で「コーヒーフェスティバル」なるものが開かれているではないか。夕方まで取材の予定がないことを確認すると、フェスティバル会場へと急行した。

     イベントの公式サイトなどによると、江陵は韓国の中でもカフェの町として売り出し中で、コーヒーフェスティバルは今年で10年目になるという。例年だと夏から秋にかけて開催しているが、オリンピックイヤーとなった今年は大会期間中にも特別開催しているのだそう。

    • コンサート会場の頭上には万国旗がはためいてた
      コンサート会場の頭上には万国旗がはためいてた

     江陵駅からバスで30分ほど東にある「安木(アンモク)」と呼ばれている砂浜でフェスティバルは開かれていた。

     タクシーを降りた瞬間、コーヒーの何とも言えない香りが鼻をくすぐった。香りの元をたどっていくと、「焙煎体験コーナー」の看板が。2000ウオン(約200円)を払うと、生豆を100グラムもらえて、小さめのフライパンで実際に煎ることができるのだ。

    • ひときわ人気だったコーヒー豆の焙煎体験コーナー。生豆を20分ほど火にかけて煎る。パチパチとはぜる音も楽しい
      ひときわ人気だったコーヒー豆の焙煎体験コーナー。生豆を20分ほど火にかけて煎る。パチパチとはぜる音も楽しい

     店の人に聞くと、20分くらい時間がかかるというのでやむを得ず断念したが、少しだけ見学させてもらった。ガスコンロにかけたフライパンで白い豆を回すように煎っていくと、だんだん色が濃くなり、やがてパチン、パチンと豆が割れていく。そのまま続けて、2回目のパチン、パチンという音がしたらできあがり。お客さんたちも大いに珍しがっていて、スマホでその様子をずっと撮り続けている人もいた。

     その隣では、数日おきにブラジルなど各国名産のスペシャルティーコーヒーをドリップ方式で丁寧に提供してくれるブースが。本日はブラジルの何とかという豆の日で、店頭で5分以上待たされたが、久しぶりにおいしいコーヒーをいただいた。胃袋、というより脳みそがコーヒーの味に感動しているような気がした。

     会場の中央はコンサート会場になっている。午後は入れ替わりでバンドの生演奏を楽しむことができる。きょうは珍しくポカポカ日和なので、お客さんのほとんどはカップルか家族連れ。そろいのジャンパーを着たカナダ選手団の姿もあって、皆さんのんびりと昼下がりを楽しんでいるように見えた。

     砂浜を歩いていると、二人乗りのブランコが何台か設置されていた。10代の男女がぎこぎこ揺らしながら語らう姿がほほえましい。

    • 客のリクエストに応えてレコードをかける昔ながらのDJ喫茶店を再現したコーナー。壁には懐かしいジャケットも
      客のリクエストに応えてレコードをかける昔ながらのDJ喫茶店を再現したコーナー。壁には懐かしいジャケットも

     ところで、なぜ江陵でコーヒーなのか? 答えの前に地元で「ミックスコーヒー」と呼ばれる、インスタントコーヒーのことを紹介したい。昔よく行楽地に持って行った、お湯を注いだカップにサラサラと入れるスティック状のインスタントコーヒーだ。

     コンサート会場のそばに、韓国のコーヒーの歴史を紹介する掲示板があり、1896年に皇帝が銀のカップでコーヒーを口にしたことが始まりという。その後、コーヒーは長らく高価なものだったが、1976年に韓国の企業が「ミックスコーヒー」を開発し、手頃な値段もあって一気に大衆化したという。日本でふだん飲むコーヒーと違って、砂糖が入っていてしっかりと甘いのが特徴で、小さく切ったモチと一緒に味わうのが定番のようだ。

    • ゆで卵をアルミホイルに包んで、芋と同じように焼いていました
      ゆで卵をアルミホイルに包んで、芋と同じように焼いていました
    • 会場では焼き芋屋さんも営業。3つで2000ウオンと安い! 甘くてほくほくでした
      会場では焼き芋屋さんも営業。3つで2000ウオンと安い! 甘くてほくほくでした

     ソウル五輪が終わって1990年代に入り、経済的な余裕が出てきてからは、若者を中心に本格的なドリップ式のコーヒーを楽しむ人たちが増えてきた。従来のミックスコーヒーに対して、「アメリカン」と呼ばれる本格的なコーヒーが日常生活に浸透したという。しかし、今でもお年寄りがコーヒーというと、ミックスコーヒーのことを指すのだとか。

     そうそう、なぜ江陵でコーヒーなのかという話だが、フェスティバルのスタッフさんによると、ここ安木海岸は昔から若者のデートスポットとして有名だったことと関係がある。彼らを目当てに、通り沿いにミックスコーヒーの自動販売機が立ち並んでいたことから、「コーヒーストリート」の通称で呼ばれるようになり、やがてカフェが1軒、2軒と増えていったという。10年くらい前から、海岸に沿った300メートルくらいの道の山側に数十店舗のカフェが立ち並び、それぞれが味と店作りを競い合っているようにも見える。

    • かつて、デートする若者をターゲットに設置された「ミックスコーヒー」の自販機
      かつて、デートする若者をターゲットに設置された「ミックスコーヒー」の自販機
    • ハングルが読めないので、1000ウオン札を入れて、適当に赤いボタンを押した。安い分、量も少なめ。しっかりと甘い味に懐かしさを覚える。なぜか、おつりが1100ウオン返ってきた
      ハングルが読めないので、1000ウオン札を入れて、適当に赤いボタンを押した。安い分、量も少なめ。しっかりと甘い味に懐かしさを覚える。なぜか、おつりが1100ウオン返ってきた

     地元人によると、かの自販機では、200~300ウオンくらいで紙コップ1杯のミックスコーヒーが出てきたという。「味わってみたかなったー」と言ったら、「まだ残っていますよ」と教えてくれた。少し歩くと、たしかに4台ほどの古めかしい自販機が並んでいた。値段を確かめると、400~500ウオンがほとんどで、どうやら倍くらい高くなったようだ。

     表示はすべてハングルなのでよく分からなかったが、冷たいか、温かいかを選べるようになっていた。とりあえず、温かくて1杯500ウオンのコーヒーを買うことにした。1000ウオン札を投入し、ボタンを押すと、全自動で紙コップがコロッと落ちてきて、コーヒーがチョロチョロと注がれた。カップは思ったより小さめ。一口飲むと、コーヒーの香りより先に甘みが口に広がり、何だか懐かしい気分に。「昔飲んだ味だよなー」と思っていると、なぜか500ウオン硬貨が2枚と100ウオン硬貨1枚が釣り銭口に出てきた。

     韓国では時代とともにコーヒーも本格志向が強まってきたが、私の目から見た限りでは、ミックスコーヒーの座はまったくと言っていいほど奪われていない。商店や事務所にはたいていミックスジュースの束とお湯のポットが置いてあるし、スーパーにはたくさんの種類の商品が山積みになっている。手軽さというより、食文化として国民生活に根付いているのを感じずにはいられない。

     そうは言っても、私はドリップ派だ。「あー、早くうちでおいしいコーヒーいれたい!」。フェスティバルは2月25日まで。(笠井智大)

    2018年02月21日 16時21分 Copyright © The Yomiuri Shimbun

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    OARはロシアからの五輪選手
    日本の獲得メダル 4 5 4
    国別メダル
    1 norノルウェー 14 14 11
    2 gerドイツ 14 10 7
    3 canカナダ 11 8 10
    7 kor韓国 5 8 4
    11 jpn日本 4 5 4

    2/25 17:17

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