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[プロジェクト TOKYO 2020]<9>訪日客 夜を遊ぶ…観光多様化 消費促す

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「カワイイ モンスター カフェ」のショーに参加して一緒に楽しむ外国人客ら(東京都渋谷区で)
「カワイイ モンスター カフェ」のショーに参加して一緒に楽しむ外国人客ら(東京都渋谷区で)

 2018年に訪日外国人客は3000万人を超えた。しかし、日本は海外に比べ、夜間に観光できる場所が乏しいのが弱点だ。東京五輪を機に夜の観光を多様化し、「ナイトタイムエコノミー(夜間経済)」を活性化しようとする動きが広がっている。

 ◇カワイイ

 扉をくぐると、巨大なケーキや動物などのカラフルなオブジェが並び、おとぎ話の世界の雰囲気が漂う。

 東京都渋谷区の「KAWAII MONSTER CAFE HARAJUKU(カワイイ モンスター カフェ ハラジュク)」は、今や世界でも通じる「カワイイ」文化の発信地として知られる。訪れた7月の水曜の夜、色鮮やかな衣装に身を包んだ「モンスターガール」がかわいらしいダンスを見せると、米フロリダ州から日本に短期留学中のモーガン・アレクサさん(20)は「世界でもこんなにポップでカワイイ店はなかなかないわ」と目を輝かせた。

 このカフェは、多数の訪日外国人が見込まれる20年の東京五輪を見据え、15年に開店した。昼間のにぎわいが目立つ原宿にあって、火~金曜の午後7時半から3時間、日替わりのナイトショーを行い、夜の集客に力を入れる。広報担当者は「夜は特に外国人が増える。ここでしか見られない、これまでにない日本文化を体験してほしい」と話す。

 ◇資源不足

 観光庁が行った18年度の調査で、訪日時に夜間観光を体験した外国人の割合やその満足度は、海外よりも低いという結果が出た。

 パリのルーブル美術館が曜日によっては閉館時間を午後9時以降とし、米ニューヨーク・ブロードウェーのミュージカルも夜間公演を充実させるなど、海外では選択肢が多い。日本でも、東京国立博物館が金、土曜の開館時間を午後9時までとするなどの試みはあるが、「海外に比べるとまだまだ夜の観光スポットは少ない」(観光庁観光資源課)のが現状だ。

 訪日外国人客1人あたりの消費額は、15万円強で伸び悩む。夜間の観光振興は打開策としても期待されている。

交通・安全が課題

 日本における夜間経済に関する議論は、訪日外国人の不満のほか、16年6月、原則午前0時までだった「クラブ」の営業が朝まで可能になった改正風営法の施行で本格化した。

 自民党の議員連盟が17年末、文化施設の開館時間延長や、夜間の安全確保に関する提言を作成。18年にはデジタルダーツとシミュレーションゴルフの夜間営業が容易になった。IT企業が多く加盟する経済団体・新経済連盟も政府関係機関に夜間経済の振興策を提案している。また、観光庁は18年度からモデル事業認定を始め、19年度も「浅草ナイトタイムツアー」(東京)など13件が決まった。

アンバサダー

 多数の飲食店や観光スポットを擁する東京都渋谷区は、とりわけ積極的だ。区観光協会は夜専用の外国人向け観光マップを作成したり、外国人向けの「ナイトツアー」を実施したりしている。また、16年にヒップホップアーティストのZeebraさん(48)を「渋谷区観光大使ナイトアンバサダー」に任命した。クラブを活動拠点とするZeebraさんは、夜の楽しみ方や安全確保などについて行政にアドバイスしている。

 大きな課題が、鉄道やバスといった交通機関の協力だ。ロンドンやニューヨークなどでは、週末を中心にバスや地下鉄が24時間運行している。夜間に働く人をどう確保するかという問題もある。こうした課題を共有し、夜間経済の可能性を探るため、都内で11月、国内外の観光関係者が集う「ナイトタイムサミット」が初開催される予定だ。

[DATA]6000万人…2030年の訪日客数目標

 日本政府観光局(JNTO)によると、訪日外国人旅行者数は2013年から18年まで、6年続けて過去最高を更新している。

 東日本大震災があった11年は大幅に減少したが、13年に1000万人を突破し、18年には3119万人を記録した。政府は20年に4000万人、30年に6000万人の目標を掲げる。19年1~6月は1663万人と前年同期を超え、通年の記録更新が予想されている。

昼と夜の懸け橋に…渋谷区ナイトアンバサダー・Zeebraさん

 ナイトアンバサダーは、渋谷の夜の魅力を発信するのが役割だ。渋谷は新しい文化が生まれる街で、外国人に好きになってもらえる場所がたくさんある。これまで、行政は夜の街になかなか目が届かなかった。今は自分が窓口として区長と話ができ、夜の重要性をさらに意識してもらえるようになった。昼と夜の懸け橋になっていきたい。

 日本全体を見ると、寺やお城など外国人が見たいと思う観光地がたくさんあり、「オシャレな国」だと思われている。それを夜に見せないのはもったいない。夜の音楽イベントをお寺でやってみるなど、外国人が訪れやすいような、海外の文化と融合させたコンテンツがあるといいと思う。

 さらに、夜の安全確保といったより幅広い役割を担う「ナイトメイヤー(夜の区長)」の創設を目指している。渋谷が成功モデルとなるよう頑張りたい。

ロンドンの夜 経済規模3・4兆円

ナショナル・ポートレート・ギャラリーでの夜の模写イベント
ナショナル・ポートレート・ギャラリーでの夜の模写イベント

 ヘンリー8世やエリザベス1世など歴史上の人物の肖像画を集めたロンドンの「ナショナル・ポートレート・ギャラリー」は毎週金曜、普段より3時間遅い午後9時まで開いている。

 肖像画を模写するイベントが開かれるほか、音楽を聴きながらお酒を楽しむこともできる。初めて夜に訪れたというローラ・バルコネンさん(25)は「お酒を飲みながらゆっくり絵を鑑賞できるなんて最高だわ」と笑顔を見せた。

 博物館や動物園、ミュージカルやオペラなど、ロンドンの夜の楽しみ方は豊富だ。夜間経済の規模は263億ポンド(約3兆4000億円)に上り、被雇用者は70万人以上と推計されている。

 夜の重要性がより意識されたきっかけは、世界中から観光客が集まった2012年のロンドン五輪だった。16年に就任したサディク・カーン市長は、その年の夏から毎週金曜日と土曜日は地下鉄を24時間営業にし、夜のロンドンは一層にぎわうようになった。

 カーン氏は、ナイトライフの発展などを任務とする公職の「ナイトツァー(夜の皇帝)」を新設し、テレビ司会者などとして知られるエイミー・ラメ氏を任命した。市は6月、商店街の営業時間延長などを想定した「夜の経済特区」の設置を発表した。ラメ氏は「夜間経済はロンドンの重要な一部。経済特区で商店街の魅力を高める」と意気込む。

[Fromアスリート]海外へ遠征 細心の注意

リオデジャネイロ五輪で空港に到着した柔道代表選手たち
リオデジャネイロ五輪で空港に到着した柔道代表選手たち

 海外の試合で最高のパフォーマンスを目指す選手にとっても、現地の生活環境はかなり重要。細心の注意を払い調整している。柔道の朝比奈沙羅選手(22)(パーク24)は、欧州など西に移動する場合と、北米など東に移動する場合で、時差調整の仕方が変わるという。

 「ヨーロッパで試合することが基本的に多かったので、行ったときより、帰りに時差ボケがある状態が多かった」といい、「東に移動すると結構時間調整が大変。飛行機の中で寝る時間を変えたり、現地で頑張って寝ずに起きておくとか、そういうことが必要かなと思う」と話す。

 丸山城志郎選手(25)(ミキハウス)はコンディション維持に気を使うという。「慣れない場所で練習するときには、ストレッチやテーピングに30分ほどかけ、体のケアをしっかりやっている」と、海外では何事にも慎重さが求められることを強調した。

 海外ではパフォーマンスに直結する食事で苦労するのは日常茶飯事。日本食を持ち込む選手が多く、素根あきら選手(19)(環太平洋大)が「海外の食べ物でおなかを下した話を聞くので気をつけている」というような声はよく耳にする。

 食べて増やすことだけでなく、減らすのも一苦労だ。ウルフ・アロン選手(23)(了徳寺大職)は、海外での減量に気を使っているという。「国内だと施設がそろっているので落とす手順が立てられるけど、海外だと1人で動くことができないので、ある程度余裕を持っておかないと大変」と話している。

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718879 1 東京オリンピック2020速報 2019/08/01 05:00:00 2019/08/01 06:11:07 2019/08/01 06:11:07 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190731-OYT1I50045-T.jpg?type=thumbnail
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