ニュース

ハンドボール女子日本代表「おりひめジャパン」がホラーメイクをしたワケ

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 ハロウィーンの10月31日、インスタグラムでホラーメイクを披露した女性たちがいる。ハンドボール女子日本代表「おりひめジャパン」のメンバーだ。11月30日から12月15日まで熊本県内5会場で開かれる女子ハンドボールの世界選手権に出場するが、競技のファン層は広くはなく、国内開催の世界選手権への関心も低い。このため選手たちは、SNSでオフショットを中心に投稿し、ラグビーと同じように「にわかファン」獲得を目指している。そんな彼女らが戦う世界選手権や東京オリンピックで「にわか」になれるよう、ハンドボールとはどんな競技で、どんな魅力があり、どんな選手がいるのか、ルールや意外な事実もあわせて解説する。(読売新聞オンライン 河合良昭)

■ラグビー人気に刺激され、「にわかファン」獲得狙う

ハロウィーンのホラーメイクの投稿画面、インスタグラムから

 「他の競技の人たちがSNSで面白いことをやっているのを見て、『こんなことをやるんだ』『こういう人なんだ』と親近感が湧いた。何でもいいから興味を持ってもらい、そこからプレー映像を見たり、会場に来たりしていただくようになってもらえればうれしい」。代表副キャプテンの塩田沙代選手(30、北國銀行)は、SNSでの発信に力を入れる理由をこう話す。

 ホラーメイク画像の投稿は、デンマークでの海外遠征中に迎えたハロウィーンの日に行った。ただ、実際に白塗りやメイクをしたわけではない。塩田選手は「練習で自由な時間は少なく、仮装する手間はかけられないので、選手全員の顔写真を撮影し、画像加工アプリを使った」という。

 「ハンドボールをメジャーにしたい」と意気込むのは、キャプテンの永田しおり選手(32、オムロン)。「一度、生でプレーを見てもらえば良さはわかってもらえる。でも、現状はハンドボールを知っている人だけが会場に来ることが多い。メディアに頼るばかりではなく、自ら発信しなければダメだと思った。ラグビーのように『にわか』を呼び込みたい、ラグビー人気に続きたい」

 こうした選手の素の姿を知ることができるオフショットが投稿されているのは、インスタグラムの「ハンドボール日本代表応援団」。トレーニングの様子だけでなく、カードゲームで遊ぶ模様や「遠征中に必ず持っていくものは?」といった質問に選手が答える動画などを配信している。NG集もある。

■ハンドボールとは

コートとポジション図=提供:熊本国際スポーツ大会推進事務局

 ハンドボールとはどんな競技なのか。

 1チームは7人。コートは縦40メートル、横20メートル。ゴールは高さ2メートル、幅3メートル。ゴールキーパー(GK)以外は膝から下を使えず、ボールをキックすることはできない。ボールはドリブルかパスで運ぶ。ドリブルをしていないときボールを持てるのは3秒以内。ボールを持ったまま歩けるのは3歩までで、これはバスケットボールより1歩多い。バスケのように全員で攻撃し、相手ボールになったら全員で守る。GKは置かないことも可能で、ゴールを空けて全員攻撃を行うこともある。

 ゴールの前6メートルに半円の線があり、このゴールエリアの中にはGKしか入れない。攻撃側はシュートをこの外から打たなければならない。

■空中戦、体のぶつかり合いが魅力

空中戦や激しいぶつかり合いも見所の一つだ

 ゴールエリアは空中であれば入ることができ、ラインよりもゴールに近い空中でシュートを放つことも多い。GKも飛んで守ろうとすることもあり、「空中戦」は魅力の一つだ。

 また、ゴールエリア前ではシュートを防ごうとする守備側が攻撃側の選手に激しくぶつかることも多く、格闘技のような肉弾戦も頻繁に行われる。

■そこらじゅうベタベタ

選手が使う松脂

 ボールを握るのは親指と小指のみで、残りの3本の指は添えるだけ。汗をかくと滑ってしまうため、ボールをつかみやすくするため手に松脂(まつやに)を塗ることが認められている。ハンドボールの大きな特徴の一つだ。

 

試合中に塗るため、靴につけておく選手もいる

 試合ではベンチ脇に松脂の入った缶を置く専用の台が置かれ、選手は試合前やハーフタイム、ベンチに下がったときなどに手につける。コートの中でもすぐに松脂を手につけたい選手は、靴の脇に松脂をあらかじめ塗っておいて、それを触ることでベタベタをキープする。

 ただ、この松脂は体育館の管理者からは嫌われる。床がベタベタになるだけでなく、選手が利用するロッカー、トイレなどもベタベタになるからだ。そのため世界選手権では床に専用シートを張る。

 ■ハンドボール「あるある」…魔法のコールドスプレー

 シートが用意できない高校生以下の大会などでは松脂の使用は禁止され、代わりに両面テープを指に巻きつける。しかし試合が進むと床の埃などがボールを介して両面テープに付き、粘着力が弱くなる。この時、打撲した時のために用意してある「コールドスプレー」を両面テープに吹きかけると粘着力が復活するという。誰かが始めた行為が自然に広まり、競技者で共有されている「技」だという。

 ■激しい攻防で「傷だらけの天使」たち

 ゴールエリア前の攻防が激しいため、選手たちはみんな傷だらけだ。

右手中指が曲がったままの塩田選手

 塩田選手は2年前の国際試合で右手中指の先が骨折した。「指は全部『突き指』をしているし、このくらいはケガじゃないな」と思い、その後も試合に出続けたという。しかし、箸が持てなくなり、文字も書くことができなくなって手術をしたが、指が曲がったままになってしまった。

 普段は銀行の支店でお客さんの案内係をしているが、「ATMの操作を質問されて、『こちらのボタンです』と利き腕なので右手でやろうとして、慌てて引っ込めました。指が曲がっているので、『こちら』があさっての方向になっちゃう。左手を使うようにしていますね」と笑う。

手のひらが何度も裂けた永田選手。赤い丸内が手術痕

 永田選手は猛烈な勢いで突っ込んでくる相手選手に対し、体を張って止めることが多い。手を広げて守っていたところ、指と指の間に相手選手の体が入ってしまい、指が限界を超えて広がり、手のひらが裂けてしまう経験を何度もしている。「裂けたところの靭帯(じんたい)が切れて、指がぶらぶらになって、それを手術して……」と武勇伝を笑顔で語る様子は、ホラーメイクよりも怖かった。

 ■おりひめジャパンの「現在地」

11月21日のスロベニア戦でシュートを放つ大山真奈選手(26、北國銀行)

 女子日本代表は、東京オリンピックに向けてチームの強化を図っており、2016年に強豪デンマークで女子代表コーチを務めたウルリック・キルケリー氏を監督に招き、着実に結果を積み上げている。

 翌17年にドイツで行われた世界選手権(2年ごと開催)では、予選リーグを突破した。決勝トーナメント初戦で敗れたが、大会で3位になったオランダを延長戦まで苦しめた。

 11月21日から24日まで、国立代々木競技場(東京都渋谷区)で行われた世界選手権の前哨戦「ジャパンカップ」では、世界トップクラスと対戦。前回世界選手権優勝のフランスに23対28、優勝経験のあるブラジルに22対28と敗れたが、スロベニアとは28対28で引き分けるなど、調子を上げてきている。

■ゴールも決めた守護神に注目

日本の守護神、亀谷選手

 ハンドボールでは、ゴールキーパーの活躍が試合の結果に大きく影響する。日本代表の守護神は、ノルウェー出身の亀谷さくら選手(32)だ。身長1メートル73、前回の世界選手権のオランダ戦では神がかり的なセーブを連発。相手がGKを置かずに7人による攻撃を仕掛けたときは、シュートをセーブした後、すぐにボールを拾って相手ゴールにイチローばりの「レーザービーム」をぶち込み、得点を奪う活躍を見せた。

 現在はフランスのチームに所属しており、世界最高峰のシュートを日々受け続けている点でも頼りになる存在だ。

 加えて亀谷選手の存在は、日本代表の攻撃にも良い効果をもたらしている。亀谷選手はヨーロッパスタイルの守備をする。例えば、日本のGKが手だけで止めようとする顔の高さのボールを、足も高く上げてシュートコースを消しにかかる。こうした違いがあるため、日本の選手が国内リーグだけの経験で「決まる」と思ったコースにシュートを放っても、止められてしまうことがあるという。ヨーロッパスタイルのGKにはどんなシュートが通用するのかを練習できる存在となっている。

 亀谷選手は「ゴールすることも大好き。チャンスがあれば狙っていく」と話している。

■パブリックビューイングを日比谷公園で

おりひめジャパンの選手ら=11月18日撮影

 11月30日から始まる世界選手権は24か国が参加する。予選ラウンドではリオデジャネイロ五輪金メダルのロシア、スウェーデン、中国、アルゼンチン、コンゴ民主共和国と同じグループに入った。この中で決勝ラウンドに進める3位以内になることがまずは目標となる。

 残念ながら大会の様子は地上波のテレビによる中継はない。しかし12月3日午後7時半から行われる予選リーグ第3戦のスウェーデン戦は、パブリックビューイングが東京都千代田区の日比谷公園内の「SPORTS STATION & CAFE」で行われる。入場は無料(飲食は有料)だ。

 ワールドカップでラグビー日本代表が世界の強豪を次々と破ったように、「おりひめジャパン」もこれに続けるか、注目だ。

無断転載・複製を禁じます
関連キーワード
スクラップは会員限定です

使い方
924591 0 東京オリンピック2020速報 2019/11/29 19:00:36 2019/12/03 18:18:22 2019/12/03 18:18:22 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/タイル・ハンドボール.jpg?type=thumbnail
続きを読む

「ハンドボール」のニュース

オリンピック 新着ニュース