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短距離シューズ120年の挑戦[極める Tokyo2020]

   
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 陸上の短距離シューズは誕生から120年余りを経て、より軽くより丈夫に、よりアスリートの能力を引き出す最適解を求めて進歩を続けてきた。走る者と支える者がともに目指すのは1000分の1秒先の世界だ。(敬称略)

日本製でルイス対バレル

 世界最古とされる陸上のスパイクを開発した英国人のジョセフ・ウィリアム・フォスターは1900年、「J・W・フォスター社」(現リーボック)を設立。世界中のトップ選手が競技力を支える用具に着目し、シューズは海外メーカーを中心に発展を遂げていく。

 日本のメーカーが「最速」の争いに本格参入するのは、1980年代。88年ソウル五輪では、ミズノが男女100メートルで金メダルに輝いたカール・ルイス(米)とフロレンス・ジョイナー(米)のスパイクを製作した。アシックスは91年に9秒90の世界記録を樹立したリロイ・バレル(米)を担当する。

樹脂と毒蛇

 両社が技術を競ったのが、91年の世界選手権東京大会。五輪王者ルイス、世界記録保持者バレルの両雄対決が注目され、ミズノは1足約230グラムという当時としては画期的な軽さのスパイクを投入する。ピンは交換可能な金属製ではなく、靴底と一体の樹脂製。同社は「1回走り切れたらいい」と耐久性を度外視し、ルイスは靴底にカバーをかぶせてスタート地点に向かった。

 アシックスも神戸市に建設した研究所でバレルの走りを科学解析。爪先の感覚を重視するバレルの要望に応え、先端に2本のピンを配置した。蛇の牙に似ていることから「バイパー(毒蛇)ピン」と名付けた。

 決勝ではルイスが9秒86の世界新で優勝。ミズノ陸上・ランニング課長の河野光裕は「技術を結集し、世界中にミズノの名をアピールできた」と振り返り、アシックススポーツミュージアム・アーカイブ担当部長の福井良守は「F1に自動車メーカーが最先端の技術を投入するのと同じ。トップ選手で性能を実証し、一般向けに応用した」。両社の技術力は日本陸上界の発展を後押ししていく。

「9秒」後押し

 ミズノの技術は、2003年世界選手権男子200メートル銅メダルの末続慎吾(当時ミズノ)のスパイクへ受け継がれた。米航空宇宙局(NASA)の丈夫なパラシュート素材を格子状に組み合わせて軽量化し、「スケルトン」と呼ばれたモデルだ。アシックスの知見も1998年に10秒00の日本記録を樹立した伊東浩司、2017年に日本人で初めて「10秒の壁」を破る9秒98をマークした桐生祥秀(日本生命)ら多くの選手を支えた。

 4年に1度の五輪はメーカーにとっても最新技術を披露する最高の舞台だ。アシックスが東京五輪に投入するのが、桐生が履くピンのない新型モデル。その開発者の一人、小塚祐也は「今までは考えられなかった技術。何度も壁にぶつかったが、諦めようとは一度も思わなかった」。今年、一般用も発売予定だ。

 0秒01は距離にしてわずか約10センチ。より速く走るために努力を重ねる選手を、足元の技術革新が支えることで記録は塗り替えられてきた。「限界」への挑戦は続く。

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1017689 0 東京オリンピック2020速報 2020/01/24 12:10:00 2020/08/01 12:49:06 2020/08/01 12:49:06 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/01/20200124-OYT1I50078-T.jpg?type=thumbnail
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