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陸上の舞台となるトラックの進化は、記録向上とシューズの技術開発を下支えしてきた。特殊な粘土を熱処理した「アンツーカー」、ゴムやポリウレタンの「全天候型」へ。東京五輪に合わせて建設された国立競技場では、イタリア・モンド社のゴムで作られた最新の「高速トラック」でレースが繰り広げられる。
国立、体の負担は軽く
かつて土だったトラックは、20世紀に入ってフランス語で「晴雨兼用傘」などの意味を持つアンツーカーへ移行。1964年東京五輪の国立競技場もアンツーカーだった。その後、全天候型が主流となり、硬いほど足が安定して好記録が出やすい一方、ケガのリスクが増すとされてきた。新しい国立競技場はルール上限の「硬度」に加え、クッション性も高いのが特長だ。

「衝撃吸収性と反発性の相反する両方を兼ね備える」とモンド社と代理店契約を結ぶクリヤマ(大阪市)取締役の西田昌弘は説明する。厚さ14ミリのゴム製トラックは2層構造で地表面は弾力に富み、裏側に六角形の凹凸が並ぶ。この凹凸が衝撃を吸収して体への負担を軽減し、足を押し返して推進力を生む。ゴム製は紫外線の影響で劣化が早いのが欠点だったが、両社の共同研究で従来の2倍以上の耐候性(気候変化への耐性)を実現した。
トラックの改良はスパイクの技術革新とも密接な関係がある。土の時代は深く刺す必要があったためクギだったが、ゴムやポリウレタンになるとピンは短く軽量化する方向に進んだ。足元を支える高速トラック。東京五輪でも好記録が期待できそうだ。