家族全員アスリート、世界一でMVP…3人制バスケ・山本麻衣選手
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3人制バスケットボール女子で、東京オリンピックの出場権獲得を目指す日本代表候補の山本麻衣選手(20、トヨタ自動車)。父はバレーボール元日本代表、母はバスケの元実業団選手、姉は3人制バスケのプロリーグに出場し、弟は甲子園で活躍と、家族全員がアスリートという環境で育った。小中高校で日本一を経験し、昨年は世界一にもなった。東京大会の代表はわずか4人。生き残りと、夢のオリンピック出場に向けた戦いを続けている。(読売新聞オンライン 河合良昭)
出場枠獲得目指す…代表はサバイバルレース

3人制バスケ女子は、東京オリンピックの開催国枠を確保できなかったため、3月にインドで開かれる予選での出場権獲得を目指している。代表候補には山本選手を含む5人制の女子実業団チームによる「Wリーグ」所属の選手を中心に9人が選ばれ、東京都北区の味の素ナショナルトレーニングセンターで強化合宿を行った。代表に残れるのはこのうち4人というサバイバルレースだ。
世界一、さらにMVPも獲得

山本選手は小中学校で日本一を経験し、高校は強豪の桜花学園高(名古屋市)に進学した。入学後いきなりレギュラーを獲得して、高校でも日本一を経験。卒業後はWリーグのトヨタ自動車に入った。
身長は1メートル65で代表候補の中で最も低い。だがスピードがあり、ボールハンドリングの技術が高く、ドリブルで大きな選手を交わしてゴール下に切れ込むプレーが得意だ。
そして、最大の長所は、5人制では3点となる遠い位置からの2点シュートの正確性と決定率の高さだ。5人制の3点シュートは通常のシュート(2点)の1.5倍だが、3人制は通常のシュートは1点なので、2点シュートは2倍となる。このため決定率は勝敗に大きく影響する。
6日に行われた公開練習では、9人が限られた時間に決められた五つの方向から2点シュートを放ち、そのゴール数を競ったが、29本中22本を決めて1位だった。
こうした実力を世界に示したのが、昨年10月に中国で行われた23歳以下のワールドカップだ。日本代表は決勝で当時世界ランキング1位のロシアを破って初優勝を果たした。山本選手はMVPを獲得し、シュートコンテストでもトップとなった。このワールドカップ優勝はバスケ界にとって、男女全カテゴリー(5人制・3人制問わず)を通じても日本史上、初めての快挙だった。

女子日本代表を指導するディレクターコーチのトーステン・ロイブルさんは、山本選手について、「候補の中で一番若いが、最初に3人制の代表に選ばれたときから、最も成長した選手だ。このままのスピードで成長を続ければ、代表に残れるチャンスは大きいのでは」と評価する。
一家のメダルは「北名古屋市のおばあちゃん家」に

山本選手の父はバレーボールの元日本代表でリベロとして活躍した。母親はバスケットボールの実業団チーム・三菱電機などでプレーした経験があり、山本選手の中学時代のコーチだ。その父と母は、現在もそれぞれの競技で強豪校を教える。
姉(青山学院大4年)は、3人制プロバスケリーグでも活躍し、弟(桐蔭学園高3年)も甲子園に出場、タイムリーヒットを打つなど活躍した。まさにアスリート一家だ。
姉とは3人制バスケのプレーについて相談し、パスの出し方などでアドバイスをもらう。同じバスケに関わる母からは「もっと攻めなきゃいけんよ」などとアドバイスがあり、父は会ったときに優しい言葉をかけてくれるなど、家族が支えになっているという。
家族5人が一堂に集まるのは「年に数回」といい、それぞれの活動場所もバラバラ。各自が獲得してきた多くのメダルなどは、「(愛知県)北名古屋市のおばあちゃん家に、だいたい集まっている」という。
小さいけど戦えることを証明したい

予選ではオーストラリアやウクライナがライバル。両国とも身長の高い選手が多く、体のぶつかり合いでも強い。公開練習ではオーストラリアの選手を想定して男子選手と試合形式の練習も行った。山本選手は「(男子選手との練習でぶつかり合っても)ふっとばされず、戦えた部分はあった」と自信をのぞかせた。
ロイブルさんは、重要な試合と位置付けるオーストラリア戦について、「点の取り合いのような試合になっては勝てない。守備が重要で、それがしっかりできる選手を選びたい」と話している。山本選手は、「ボールを持っている人へのプレッシャーで貢献できる。小さくても世界と戦えることを証明したい」と意気込み、積極的にアピールしている。