ニュース

[Tokyo2020]競歩 「金」への歩み 力強く

  
メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 東京五輪の陸上競技で日本勢のメダル・入賞ラッシュが期待される種目が、躍進著しい競歩だ。男子は昨秋の世界選手権を制した50キロの鈴木雄介(富士通)と20キロの山西利和(愛知製鋼)をはじめ、国内外での実績豊富な選手が続々と代表入り。一方の女子も入賞争いが視野に入り、かつての「マイナー種目」が黄金期を迎えつつある。(平野和彦、西口大地)

速く 美しく 「究極の歩型」…男子50キロ 鈴木雄介 32 富士通

昨年の世界選手権男子50キロ競歩で金メダルを獲得した鈴木雄介
昨年の世界選手権男子50キロ競歩で金メダルを獲得した鈴木雄介

 20キロの世界記録保持者であり、50キロの世界選手権覇者。特性が異なる両種目でトップを極めた日本のエースは「50キロだから、20キロだからという言葉は絶対言わない。どんな距離であろうと勝ちたい」と言い切る。

 競歩の全国大会が毎年行われ、国内随一の「競歩どころ」として知られる石川県能美市の出身。中学2年で地元の指導者に適性を見いだされて以来、歩型違反を取られず、なおかつ速い理想の歩きを常に追究し、「世界一美しい」と評されるフォームを確立した。

 2015年、恥骨付近を痛めた影響で世界選手権を途中棄権。故障は長引き、リオデジャネイロ五輪挑戦を断念。レース復帰に2年9か月もの時間を要した。

 一時は引退も考えた苦境を乗り越え、昨年初めて世界の頂点に立てたのは、競歩担当のスタッフを増やして鈴木を支えた所属先の富士通や、復活を信じた家族、友人らの後押しがあったから。「自分だけのものではなく、皆さんに喜んでもらうための金メダルと思えるようになった」。感謝の心が、日本競歩初の五輪制覇への意欲をかきたてる。

 五輪で50キロ競歩が行われるのは、今回が最後。「目標は金メダルだけじゃない。競歩界の世界的なレジェンドになりたい」。最後の王者として名を刻み、伝説への一歩を踏み出せるか。

 すずき・ゆうすけ 石川県出身。20キロで2012年ロンドン五輪出場、15年に1時間16分36秒の世界記録を樹立。50キロで昨年、3時間39分7秒の日本新(当時)。

必勝の「中盤スパート」…男子20キロ 山西利和 24 愛知製鋼

昨年の世界選手権男子20キロ競歩で優勝した山西利和
昨年の世界選手権男子20キロ競歩で優勝した山西利和

 「京大出身」の肩書が先行していたが、今や男子20キロ競歩の頂点に最も近いウォーカーに成長した。昨秋の世界選手権では、日本勢初の金メダルを獲得。東京五輪へ向けて「圧倒的な勝利をできるように、チャレンジを続けたい」と誓う。

 気温30度を超える酷暑だった世界選手権。スローペースが予想される中、6キロ過ぎに意表を突くロングスパートで抜け出し、一人旅を演じた。他の選手がついてくるようであれば、「相手の体力を削った状態で、ラスト2、3キロの勝負に持ち込む」と、次の一手も見据えた上での仕掛けだった。

 この中盤のペースアップが、必勝パターンになりつつある。今年2月の日本選手権でも、同様の展開でライバルを揺さぶり、初優勝へ結びつけた。安定したフォーム、豊富な練習で培った持久力があるからこそなせる業。「自分の持ち味を一番生かせる」と、レースで常に主導権を握る感覚をつかんだ。

 陸上で京大出身の五輪金メダリストとなれば、1936年ベルリン大会男子三段跳びの田島直人さん以来。「僕は二番煎じ」と受け流すが、狙うのは無論、表彰台の真ん中である。

 やまにし・としかず 京都府出身。京都・堀川高で競歩を始め、2013年世界ユース選手権1万メートルで金。京大卒業後、愛知製鋼へ入り、18年アジア大会20キロ銀。

男子…21歳・池田が急上昇

女子…岡田と藤井 メダルに挑む

男子20キロ・池田向希
男子20キロ・池田向希
男子50キロ・川野将虎
男子50キロ・川野将虎
女子20キロ・岡田久美子(右)と藤井菜々子
女子20キロ・岡田久美子(右)と藤井菜々子

 日本勢「史上最強」

 鈴木、山西だけでなく、男女計3種目のいずれをとっても「過去最強」と呼べる陣容が整ってきた。

 男子20キロは、15日の全日本競歩能美大会で優勝した池田向希(東洋大)が初の五輪代表に内定した。しなやかで安定した歩型に定評があり、大学2年で出場した2018年世界チーム選手権で同種目初の金メダル、昨秋の世界選手権でも6位入賞した21歳の成長株だ。

 リオ五輪代表の高橋英輝(富士通)も能美大会2位で代表入りを確実にした。昨年まで日本選手権を5連覇。世界選手権は3大会連続出場し、昨年は入賞も近い10位と、苦手だった夏場の大会も克服しつつある。

 五輪の同種目でまだ日本勢のメダル獲得はないが、今村文男・五輪強化コーチは「ワンチームで、メダル独占ぐらいの勢いで戦ってほしい」と期待を込める。

 日本勢が15年世界選手権以来、五輪を含めて4大会連続メダルに輝く男子50キロは、昨秋の全日本競歩高畠大会を3時間36分45秒の日本新記録で制した川野将虎まさとら(東洋大)が、鈴木に続く2人目の代表に内定した。

 最終選考会となる4月の日本選手権(石川・輪島)ではリオ五輪銅、17年世界選手権銀の荒井広宙ひろおき(富士通)を軸に、同選手権銅の小林快(アルビレックス新潟)、4位の丸尾知司(愛知製鋼)らが激突。最後の1枠を巡る熱戦が予想される。

 女子20キロは岡田久美子(ビックカメラ)が2月の日本選手権で6連覇を達成し、リオ五輪に続く代表入り。さらに、15日の能美大会を初制覇した20歳の藤井菜々子(エディオン)が内定した。昨年の世界選手権では岡田が6位、藤井が7位でダブル入賞を果たし、東京五輪では女子競歩初の入賞、その先のメダル争いも見据える。

■競歩とは…最も過酷な陸上競技

 競歩は「陸上競技で最も過酷な種目」と呼ばれる。両足が地面から離れる「ロス・オブ・コンタクト」、前足が接地した瞬間から地面と垂直になるまでに膝を曲げる「ベント・ニー」という2種類の歩型違反に気をつけながら、男子20キロなら1時間20分前後、同50キロは3時間半超の長丁場を戦わなければならないからだ。

 審判から違反の警告を3回受けた選手は、原則失格となる。東京五輪では警告3回で規定のエリアに一定時間足止めされる「ペナルティーゾーン」が採用され、警告を受けた回数に応じた各選手のレース運びの変化は大きな見どころだ。

 今回の五輪コースは札幌・大通公園を発着点に、20キロは往復1キロの直線を20往復、50キロは往復2キロを25往復する。観客が1か所にいながら何度も目の前を通る選手に声援を送れるのが魅力で、鈴木は「競歩は現場で見るのがエキサイティング。全国から札幌へ応援に来てほしい」と呼びかけている。

スクラップは会員限定です

使い方
1113649 0 東京オリンピック 2020/03/18 05:00:00 2021/08/04 17:24:41 2021/08/04 17:24:41 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/03/20200317-OYT1I50054-T.jpg?type=thumbnail
続きを読む

「陸上」のニュース

オリンピック 新着ニュース