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栃木県内で29、30日に行われる聖火リレーに関し、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会が17日、各地で予定されていたセレモニーを中止とするなどの新型コロナウイルス感染症対策を発表した。県や市町の職員らは関係者への連絡などに追われ、出演予定者からは「楽しみだったのに」「練習してきたのでやりたかった」と落胆の声が上がった。
組織委の発表を受け、福田知事は「国を挙げて感染拡大の防止に取り組んでいる状況においてはやむを得ないのではないかと考える」とのコメントを出した。
宇都宮市教育委員会スポーツ振興課では、担当者らがスマートフォンやパソコンを見ながら、連絡を待った。組織委の方針が発表されると、担当者の一人は「従うしかないが、イベントの関係者にも早く連絡しないといけない」と話した。
那須塩原市は、同市出身で北京五輪陸上女子1万メートル代表の渋井陽子さんら五輪出場経験者4人を招いた「ミニセレブレーション」を行う予定だった。17日には新聞折り込み広告で市民に告知したばかり。同市教委スポーツ振興課の小高裕一課長は「市民が集まって五輪の機運を高めるために企画した。人を集めるべきではないということであれば、中止せざるを得ない」と肩を落とした。
佐野市では、市内の中高校生によるダンスやブラスバンドの演奏などを予定していた。同市の担当者は「1年以上前から準備し、最終段階で中止になってしまうのは落ち込む」と残念がった。
組織委は沿道で応援する観客に「密集状態を避ける」よう求め、過度の密集状態が生じた場合は「やむを得ず実施形態の変更がある」とした。
県内の聖火リレーを統括する県総合政策課の担当者は「かなり具体的な方針が示されたので、速やかに各市町に情報提供したい」と話した。18日以降は、沿道での観覧を希望する県民への対応などを確認し、県単位での対応方針を検討していくという。
宇都宮市では21日に開催予定のボランティアスタッフ向けの説明会で、「沿道の観客に密集しての応援は避けるよう声かけをする」よう求める。栃木市の担当者は「一生に一度あるかどうかの大イベント。制限しても人は集まる」と話し、沿道整理などのため職員の動員を増やす予定だ。
蛇祭りやお囃子も中止に
「式典用の
29日に同市のミニセレブレーション会場で、竜の頭に蛇の体という蛇体を担いで練り歩く予定だった。「たくさんの人に見てもらえると保存会のみんなも楽しみにしていた。本当に残念」と話した。
30日の日光市の日光二荒山神社での出発セレモニーでは、地元・大工町の小中学生などが伝統の「弥生祭」で奏でるお
自治会長の斎藤信厚さん(75)は「本番を盛り上げるため、これまで2回の稽古を行った。子供も大人も一生懸命に練習してきたのでやりたかった。プログラムは中止ですか……」とため息をついた。
昨年10月の台風19号の水害で甚大な被害を受けた栃木市では、氾濫した
「セレモニーで演奏できるとの知らせを聞いた時、子供たちは跳び上がって喜んでいただけに残念」と話すのは、「うつのみやジュニアジャズオーケストラ」代表の吉原郷之典さん(77)。
30日のミニセレブレーション会場の宇都宮城址公園では、同オーケストラがジャズの演奏を予定し、小学5年から高校3年までのメンバー約30人が聖火を運ぶランナーへのエールを込め、演奏を披露することを心待ちにしていた。
吉原さんは「五輪のイベントはもう二度とないかもしれないのに。屋外だし、間隔を空けてでもやってほしかった」と悔しがった。