ニュース

[再挑戦]聖火リレー、要人警護…IOC聖域に切り込めるか

  
[読者会員限定]
メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 来夏の東京五輪・パラリンピックの追加経費は最大3000億円程度かかるとされるが、新型コロナウイルスの影響で収入増は難しく、いかに支出を抑えるかが重要になる。

コロナ禍の中、支出どう抑える

 大会期間中、国際オリンピック委員会(IOC)の最高幹部は東京都心の高級ホテルに滞在する。IOCは警備の観点から、上階にあるレストランフロアなどを閉鎖するよう要求しており、組織委がこれに応じれば、ホテル側に億単位の休業補償をする必要がある。

 「米大統領並みの警備が本当に必要なのか。経費削減の検討は当然だ」。大会関係者は強調する。ただ、こうしたIOCの「聖域」に切り込めるかは、今後の交渉にかかっている。

 組織委とIOCは約1か月協議した後、6月10日に大会を簡素化する方針で一致した。当初、約200項目について交渉を始めたが、組織委の武藤敏郎事務総長(77)は今月9日、「重要なものから検討する」と話し、約50項目に絞って議論していると明かした。

 開会式のほか、大会を盛り上げる聖火リレーも簡素化の対象だ。延期がスタートの2日前に決まったため、福島県が警備員のキャンセル料など約2億5000万円を支出したほか、他県や組織委も一部の予算をすでに使っており、追加費用は抑えたい。

 組織委は約1万人の走者を維持する一方、日程の短縮や、各地での式典の見直しを検討する。ただ、スポンサーや自治体の意向を踏まえる必要があり、変更は容易ではない。

 大画面で観戦するパブリックビューイング(PV)や競技体験コーナーなどが設けられる「ライブサイト」も再考される。都内や東日本大震災の被災地など30か所で予定されていたが、感染防止の観点からも、削減する可能性が高いという。

 アスリートが宿泊し、交流の拠点となる選手村(東京都中央区)については、食事の内容や提供方法などが議論される。1964年の東京五輪で好評だった理容や美容などのサービスを提供するかも検討する。

会場に補償も

 今夏に使用するはずだった9都道県の43競技会場は、来夏も使われる。延期前は賃借料として530億円を見込んでいたが、さらに、来夏の予約を受けていた会場側への補償金などが必要になりそうだ。

 スポーツクライミングなどを行う「青海アーバンスポーツパーク」(江東区)では先月中旬、屋外観客席の撤去が行われた。来夏まで設置しておくと劣化する恐れがあるためだ。こうした仮設設備を改めて作る際には、新たな費用がかかる。

 昨年末の試算で、組織委と都、国が負担する経費は計1兆3500億円。多額の延期経費が加わることになり、組織委は国内スポンサーに追加支出を求める交渉を始めた。コロナ禍で収入が減った企業側が応じるかは不透明で、感染対策に1兆円超を支出した都も財政的に苦しい。

 都幹部は、「華美を廃し、支出を極力抑えた大会にしなければならない」と話す。

競技団体の強化費に暗雲、JOCもスポンサーも苦境

 五輪延期は各国内競技団体(NF)の資金繰りにも影を落とす。コロナ禍で大会が開かれず、選手が競技団体に支払う登録料やスポンサー協賛金の減少に加え、日本オリンピック委員会(JOC)の独自財源から各NFに配分される強化交付金も大幅に減った。

 NFにとっての最重要課題が、スポンサーの確保。新型コロナで打撃を受けた社が多く、例年は協賛金が収益の約3分の1となる約7億円に上る日本水泳連盟では、航空業界などが継続に難色を示しているという。

 登録料の減少も顕在化している。日本卓球協会では、前年度の2億7000万円から半減する可能性があるという。日本協会は各都道府県連盟など加盟団体に対し、記念事業用に積み立てていた基金を取り崩し、上限100万円の支援を開始した。日本セーリング連盟は全大学生の登録料免除を決定。約1400万円の減収を補うため、寄付を募る方針だ。

 JOCの予算も波紋を呼んでいる。今年度の収益見込みは前年度比21億円減の141億円、経常費用は27億円減の128億円に抑えられ、各NFに配分される交付金は総額20億円から8億円に減った。支出を抑え、来年度へ財源を残すための苦肉の策だ。山下泰裕会長は14日の記者会見で、「財政は極めて厳しい」と話した。

中止なら巨額の損失

 万が一、大会が中止されれば、開催が決まった2013年からの準備が無駄になる上、ホテルなどから多額のキャンセル料を要求される可能性が高い。どこが負担するかは決まっておらず、混乱は避けられない。

 約1万人分の聖火トーチ、約5000個のメダル、競技会場の仮設スタンド、選手村など、今夏の大会に合わせて多くの品や施設がすでに用意されている。開会式の準備も進んでいた。

 大会組織委員会は今、関係者向けに押さえたホテル4万室超の予約を来夏にずらそうと交渉している。1年後の利用を条件に、無償で応じるホテルもあるが、中止になれば補償を求める声が上がりそうだ。警備会社も同様だ。

 「『補償しろ』『弁償しろ』となれば、倍にも3倍にもなる」。組織委の森喜朗会長(83)は17日の記者会見で、中止になった場合、多額の費用がかかるとの見解を示した。

 組織委は、大会のチケット計約544万枚を販売済み。払い戻しになれば、膨大な手間と費用がかかり、約900億円を見込んでいた収入を失うことになる。

 大会にかかる費用は組織委と都、国が分担するが、中止の場合は想定していない。IOCがどの程度、負担するかもわからない。

 都は17年の試算で、大会の経済波及効果について、30年までに計約32兆円に上るとした。大会関係者は「開催を見込んで、多くの企業やホテル、店が設備投資をしてきた。経済損失が計り知れない『中止』という言葉は、おいそれと口にできない」と話す。

今後の開催・招致に影

 今後の五輪・パラリンピック開催都市にも波紋は広がる。

 2022年に北京冬季五輪・パラリンピックを控える中国の国家体育総局(スポーツ省)は9日、新型コロナウイルス対策のため、五輪テスト大会を除く年内の国際大会を原則として中止すると発表。中国政府で五輪準備を統括する韓正筆頭副首相は6月、感染対策を取りながら「全ての競技会場を年内に完工させる」よう指示した。

 24年パリ夏季大会組織委員会のトニ・エスタンゲ会長は6月、「この前例のない危機は、私たちの選んだ方向へ一層努力を注がなくてはならないことを表している」と述べ、選手村の宿泊者数を1万7000人から1万4000人へ減らすなど経費削減に取り組む意向を示した。東京大会での経費削減の手法も取り入れていくという。

 東京五輪のマラソン・競歩会場であり、30年冬季五輪・パラの招致を目指す札幌市。秋元克広市長は6月25日の定例記者会見で、東京大会の簡素化や経費節減の方向性を参考にしながら、「ポストコロナの大会運営を考えていく必要がある」と述べ、招致への意欲を改めて強調した。

 市長は五輪・パラを通して札幌を世界に売り込みたいと訴えてきたが、好調だったインバウンド(訪日外国人客)はコロナ禍で激減した。観光需要の回復や市中心部の再開発事業に遅れが生じれば、「(招致に向けて)影響は避けられない」と懸念を示す。

無断転載・複製を禁じます
1360570 1 東京オリンピック2020速報 2020/07/23 05:00:00 2020/07/23 05:43:37 2020/07/23 05:43:37 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/07/20200722-OYT1I50087-T.jpg?type=thumbnail
続きを読む

「新型コロナ」のニュース

オリンピック 新着ニュース