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野口みずきさん解説・元箱根駅伝ランナー試走、東京五輪マラソン@札幌コースの全て

 
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 来夏に延期された東京五輪では、札幌市が男女マラソンの舞台となる。男子マラソンのちょうど1年前となる8月8日、アテネ五輪女子金メダリストの野口みずきさん(42)にコースをチェックしてもらった。箱根駅伝ランナーの本紙記者による試走、温度を色彩に変換するサーモグラフィーカメラを使った温度分析と合わせ、コースの攻略ポイントを探る。

1)大通公園

スタート直後 直角ターン

 スタート直後に直角のターンを繰り返し、細長い長方形を2周します。競技場のトラックを回ってから公道に出るコースは多いですが、ロードではかなり珍しいパターン。大声援と五輪独特の雰囲気にも包まれるはずで、大集団での位置取りを考えながら平常心で走り出したいですね。

2)すすきの交差点

名物看板 調子の目安

 巨大なニッカウヰスキーの看板前を走り抜けます。最初の数キロでレース当日の感覚、調子がわかってくるはず。体の状態を測るいい目印になりそうです。

3)コース最高点

まだ8キロ 楽に上りたい

 緩やかな上り坂。私は現役時代、こういう坂が好きでした。フラットな道が続くよりも、走り方を切り替えることでリズムを作れるし、気持ちの面でアクセントにもなります。最高点が約8キロ地点で、まだまだ序盤。後半に備えていかに力を使わず、楽に上るかがカギです。逆にここで脚を使ってしまうようだと、終盤にかなりきつくなります。

4)長い下り

海外勢の仕掛け 注意

 視覚的には坂とわからないほど、少しずつ緩やかに下っています。上りの直後でもあり、意図せずに集団のスピードが上がるかも。海外勢はこういう地形を利用して早めに仕掛けることがあるので、警戒して対応したいポイントです。南七条大橋までは目印も少ないため、無意識のスピード変化でリズムを崩さないことが大切です。

5)さっぽろテレビ塔

貴重な目印

 遠くから見える目印が少ないコースにあって、テレビ塔は2、3周目に横を通過する貴重なランドマーク。ここで気持ちをリフレッシュさせたいですね。

6)長い直線

気になる日差し

 日差しを遮る高い建物が少ないです。2、3周目にかけて太陽の位置が高くなるにつれ、直射日光と気温の上昇が気になる区間です。単調な景色が続くだけに、特に1周目は実際よりも長い距離を走ってきた錯覚に陥るかもしれません。こうした変化の少ないポイントこそ勝負に集中したいですね。JRの高架下は短いですが、選手に日陰を提供してくれるオアシスになりそうです。

7)クランクが続く北大構内

最重要 急カーブと狭い道

 札幌のコースは全体を通してランナーを悩ませるポイントが多いのが特徴。その戦略的なコースの中でも、急カーブが続く上に道幅が狭い北大構内は最も重要です。ここで集団の中に取り込まれると、最短距離を走れず、カーブで足首に大きな負担をかけることになります。周回ごとに負担が積み重なり、終盤の勝負に影響するでしょう。集団の後方にいると、建物の陰になって先頭が見えず、一気に離されるリスクもある。私なら大学の手前で集団を抜け出し、自分のペースとコース取りを優先して走ります。

8)北海道庁赤れんが庁舎

死角 駆け引きの舞台

 庁舎の敷地内に、カーブと街路樹で前方の視野が遮られる場所があります。私ならこの死角を駆け引きに使います。一気にペースを上げて後続の選手の視界から消え、精神的な揺さぶりをかけるのです。3周目まで勝負がもつれるようなら、ラストスパートの仕掛けどころとしても使えそうです。

運動部・近藤雄二の試走リポート

 本番の出発時刻となる午前7時。曇り空のスタート地点で手元の温度計は20・8度。からっとした涼風の中、心地よく走り出した。

 大通公園で2キロ弱の周回を2周した後、繁華街すすきのを抜け南へ。5キロ過ぎの中島公園付近から上り基調となり、幌平橋で豊平川を越え、コース最高地点の8キロ付近を目指す。約1キロで15メートルほど上り、汗ばんできた。最高点を過ぎると北上。緩やかな下りが16キロ付近まで続く。スピードが出やすく、アフリカ勢らの仕掛けに警戒したい。

 南七条大橋で豊平川を再び渡り創成川通へ。12キロ過ぎ、出発点近くのテレビ塔に戻ってきた。ここから北側の約10キロのほぼ平らな周回を3度回る。一時晴れ間が広がり汗が噴き出した。8~16キロは日陰が少なく、好天時は暑さを感じる。

 18キロ過ぎ、南下しつつ北大のキャンパスを抜ける。構内に入る手前から左、右と直角カーブが8回。集団では接触が怖く、後方なら先頭との距離に注意したい。連続カーブの後は長い直線。構内は高い木々がコースを覆い、冷たい空気で一息つけた。20キロ過ぎ、鋭角に左へ曲がってから北大を出ると中間点。赤れんが庁舎を抜け、出発点に戻った。

北大クランク 仕掛けどころ

 この周回をあと2周。38キロ過ぎの最後の連続カーブは全力で挑んだが、曲がる度に足裏に痛みが走った。脚にダメージがあれば直線以上に踏ん張れず、余力があれば仕掛けどころだ。偶然、同じ時間帯に試走していた男子代表内定者の服部勇馬選手(トヨタ自動車)に、ここで一気に抜かれた。スパートのイメージはつかめただろうか。

 試走は信号待ちを含め3時間40分ほどで、走った時間は2時間59分台。ゴール時の温度は23・4度で快適に走り切れた。本番なら高速レース必至のコンディションだが、猛暑への備えも当然必要だ。耐久メインの東京から冷涼な札幌へコースが移り、選手たちには、速さとタフさ双方が求められそうだ。

プロフィル

こんどう・ゆうじ 1968年生まれ。早大時代、箱根駅伝に6区と8区で計3度出場。95年から読売新聞運動部に在籍し、マラソンを含む夏季五輪取材などを担当。昨年2月の別府大分毎日マラソンは2時間44分16秒で完走。

※取材は新型コロナウイルス感染対策に十分配慮し、試走中と撮影時以外はマスクを着用して行いました。

気象学者のコース温度分析

佐藤友徳・北大准教授

 サーモグラフィーカメラで撮影したコースの画像を、市民ランナーで、札幌の気象に詳しい佐藤友徳・北海道大准教授(43)(気象学)に分析してもらった。

東京より涼しさ明らか

 スタートとゴールがある大通公園周辺は、「草木が多い所で低温になっているが、日が当たると路上はそれほど涼しくないかもしれない」と指摘。周回コースで選手が3度通過する創成川沿いは「路面は熱くなっているが、北に向かって走るので日差しを正面に受けなくて済むはずだ」という。

 勝負のポイントになりそうなのは、北大の構内。「木々が多く、かなり低温になっている。走るには快適だろう。カーブが多く道幅が狭いので、上位争いの駆け引きがあるのでは」とみる。

 日の出頃の気温は東京より低い上、乾燥しており、日陰はより涼しい。とはいえレース展開は「真夏のマラソンなので海外勢も様子見で、スローペースで進むだろう」と予想する。

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1421034 0 東京オリンピック 2020/08/20 05:00:00 2020/08/20 15:34:25 2020/08/20 15:34:25 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200819-OYT1I50062-T.jpg?type=thumbnail
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