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[用具革新]ぶれぬ視界 走り軽く

  
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 「西日のまぶしさを防ぎたい。マラソン用のサングラスを作れないか」。1992年バルセロナ五輪を前に、日本陸連からサングラスメーカー大手「山本光学」(大阪府東大阪市)にそんな依頼が持ち込まれた。まだサングラスを掛ける選手は珍しく、「SWANS(スワンズ)」ブランドで知られる同社もマラソン用を手がけるのは初めてだった。

 まぶしさを感じると、目を細めることで顔や肩に力が入りやすい。有害な紫外線を通さないサングラスには疲労を軽減し、集中力を高める効果が期待された。レンズは一般的な左右計2枚ではなく、1枚にして広い視野を確保。着用した有森裕子は「表情を悟られない」という利点も生かし、銀メダル獲得につなげた。

 選手が重視するのはフィット感だ。2004年アテネ五輪金の野口みずきは、跳びはねるようなストライド走法で知られた。つるをレンズ下部に取り付ける「上下逆」のデザインを採用し、重心を下げてずれにくくした。チタン製のつるは手で曲がり、レース直前でも角度を調節できた。

 当時は石膏せっこうで顔の型をとっていたが、現在は3Dスキャナーでより精密に計測できる。東京五輪向けに、代表内定の前田穂南(天満屋)を含めて数十人の中長距離選手の頭部を測定。以前より選手の頭部が一回り小さい傾向が判明し、前田のフレームもそのデータを基に設計されている。

 近年、特定の波長の光を透過させないことで「見たい対象をくっきり見せるレンズ」の研究も進む。12年ロンドン五輪男子アーチェリー銀の古川高晴(近大職)も、的の中心部の赤色や黄色が見えやすいレンズを活用する。同社スポーツ事業部の乾倫太郎は「遮光だけでなく、選手に情報を与える道具にもなっている」。勝敗を分ける武器として、存在感がますます高まっている。(平野和彦、敬称略)

機能性+デザイン

 パラリンピック競技でも視覚に関する用具開発が進む。競泳で視覚障害の最も重いクラスでは公平性を保つため、「光を通さないゴーグル」の使用が義務づけられる。ペンキで黒く塗る選手もいるというが、近年は光を完全に遮断する「ブラックゴーグル」が作られ、競技に専念しやすくなった。

 デザイン性も重視。山本光学では、視覚障害者で競う「ゴールボール」のアイシェード(目隠し)を開発。レンズとフレームを一体化して強度を高め、日本代表の男子には金色、女子にはピンク色を基調としたデザインの製品を提供する。同社の山尾優太郎は「スポーツギアである以上、見た目も大切。選手の意欲向上にもつながっている」と話す。

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1545926 1 東京オリンピック2020速報 2020/10/14 05:00:00 2020/10/14 05:00:00 2020/10/14 05:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201014-OYT1I50012-T.jpg?type=thumbnail
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