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2020年はスポーツ界もコロナ禍に揺れました。昨年11月の野球の国際大会「プレミア12」で前回王者の韓国を破り初優勝を果たした日本代表「侍ジャパン」も2008年北京大会以来のオリンピックの舞台に臨むはずでしたが、東京大会延期に伴い、活動は仕切り直しとなりました。先月下旬に幕を閉じたプロ野球は4年連続の日本一となったソフトバンクの充実ぶりが話題をさらいましたが、来夏の東京オリンピックでも有力候補になるであろうプレミア12組たちの奮闘ぶりはどうだったでしょうか。
V字回復・大野雄、福本超え・周東

昨年のプレミア12では、試合の流れを引き寄せ、または引き戻す2番手として主に起用され2勝を挙げた中日・大野雄大投手(32)。2018年は不調でまさかの0勝に終わった左腕は、昨年9月の無安打無得点試合も弾みに侍ジャパンに復帰し存在感を見せました。そして、今季は沢村賞初選出です。
「素晴らしい投球をされてしまった。アンビリーバブルなパフォーマンスだった」(DeNA・ラミレス監督=当時)。相手指揮官をも脱帽させた完封劇は今年10月22日。初回の1点を守り切った快投でした。
9月22日のヤクルト戦から完封・完封・6回無失点・完封と続き、このDeNA戦で5連勝。次戦の初回に失点し連続イニング無失点は途切れましたが、その数は9月15日の広島戦の二~四回を含め実に45イニングに及びました。
2年連続で最優秀防御率のタイトルを獲得し、チームの8年ぶりのAクラス(3位)に大きく貢献。20試合登板で10完投というタフネスぶりで、そのシーズンの最も優れた先発完投型の投手をたたえる沢村賞に輝きました。
プレミア12の2次ラウンド・豪州戦で代走から二盗、三盗を決め、バントで生還した「足のスペシャリスト」も今季、大きな飛躍を遂げました。周東佑京選手(24)は9月後半からソフトバンクの1番打者に定着、昨季の25盗塁から倍増の50盗塁を決め、初の盗塁王獲得です。
育成選手のスタートから3年目でつかんだ初タイトル。11月10日付の読売新聞西部本社の朝刊運動面には「アドバイスをくれた本多コーチや、2番で待ってくれた(中村)晃さん、色々な人に感謝したい」との喜びの声が掲載されました。
ハイライトはペナントレースが最終盤に入った10月でしょう。21日にチームが10連勝で優勝へのマジックナンバー8を点灯させると、その減り具合とともに周東選手の盗塁量産が注目の的に。ロッテとの直接対決で優勝が決まった27日に10戦連続で盗塁を記録すると、最終的に30日の西武戦まで成功させ、福本豊氏(阪急=現オリックス)が1971、74年に打ち立てた「11」を抜き去る13試合連続のプロ野球新記録を樹立しました。
ほかにプレミア組では、楽天の浅村栄斗選手(30)が本塁打王、オリックスの吉田正尚選手(27)が首位打者、日本ハムの近藤健介選手(27)が2年連続で最高出塁率のタイトルを獲得。大会では主に八回を任されたオリックスの山本由伸投手(22)は本来の先発で奮闘、最多奪三振に輝いています。
2000安打に守備率10割も

昨年のセ・リーグの首位打者で、プレミア12では不動の4番に君臨し最優秀選手(MVP)を獲得した広島の鈴木誠也選手(26)。今季は数字こそ落としましたが打率は3割ちょうどで、本塁打は25本を放ちました。同じ広島勢では菊池涼介選手(30)が二塁手でのシーズン無失策、守備率10割(守備機会503)を達成し、守りの名手に新たな勲章が加わりました。
その菊池選手と二遊間を組んでいたのは巨人の坂本勇人選手です。先月には31歳10か月で通算安打数が2000に到達しました。榎本喜八(東京=現ロッテ)に次ぐ年少記録で、プレミア組でもトップを走ります。
守護神不調、故障者も
一方で、不振や故障に苦しむ選手もいました。プロデビュー以来、毎年30前後のセーブを記録し、昨年のプレミア12では守護神を務めたDeNAの山崎康晃投手(28)は、今季はわずか6セーブで、中継ぎへの配置転換を余儀なくされました。

大会で先発の一角を担ったDeNAの今永昇太投手(27)は、今年8月に左肩の違和感を訴えて出場選手登録抹消となり、10月にクリーニング手術を受けています。
巨人の小林誠司捕手(31)は開幕3戦目の阪神戦で左前腕に死球を受けて骨折。9月に一軍昇格しましたが10月には再び抹消となり、結局10試合の出場にとどまりました。
球界屈指のあの選手は…
産業能率大学スポーツマネジメント研究所は9月、インターネット調査会社を通じて行ったプロ野球ファンへのアンケート結果を発表しました。日本代表監督のつもりで一番重要な試合(国際大会の決勝など)にスタメン起用したい選手を大リーグの日本勢も含めて選んでもらったところ、投手で田中将大選手(ヤンキースからフリーエージェント)、一塁で筒香嘉智選手(レイズ)、指名打者で大谷翔平選手(エンゼルス)、そしてプレミア12に向けた強化試合で右足に死球を受けて骨折、大会直前に代表辞退となった秋山翔吾選手(レッズ)は左翼で、それぞれ1位になりました。ただ、現在発表されている大リーグの来季日程では7、8月も試合があり、中心選手になるほどオリンピック派遣のハードルは高いとみられています。
このスタメンに、プレミア組からは二塁・菊池涼選手、遊撃・坂本選手、右翼・鈴木選手、捕手でソフトバンクの甲斐拓也選手(28)の計4人が名を連ねました。調査時点では、まだシーズンも序盤でしたが、とりわけ甲斐選手については終わってみれば12球団トップのチーム防御率2.92に貢献、日本シリーズでも全4戦でスタメンマスクをかぶるなど存在感を一層高めたと言えましょう。

残る中堅、三塁の1位はソフトバンクの柳田悠岐選手(32)と巨人の岡本和真選手(24)です。岡本選手は今季、本塁打と打点の2冠を獲得しました。柳田選手は昨年こそ左膝裏の故障でレギュラーシーズンは38試合の出場にとどまりましたが、今季は最多安打に輝くなど復調。2018年11月の日米野球第1戦では九回に逆転サヨナラ2ランを放つなど国際大会でもパワーを見せつけています。
エース候補も忘れてはいけません。ソフトバンクの千賀滉大投手(27)は昨年のプレミア12を右肩違和感で辞退しましたが、今季は最多勝、最優秀防御率、最多奪三振のタイトルを獲得。開幕戦から13連勝のプロ野球新記録を作った巨人の菅野智之投手(31)も最多勝、最優秀勝率に輝いています。日本シリーズ第1戦では両雄が投げ合い、大きな話題となりました。
菅野投手については、米大リーグ挑戦に向けたポスティングシステムの利用を巨人が認め、申請手続きを行ったことが今月8日に発表されました。大リーグ球団との移籍交渉の行方が注目されます。