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東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(83)は11日、女性
会談1時間「引き受けてくれたら全てうまくいく」

森氏は11日午前、組織委幹部に電話し、「(自らの発言が)反発を招き、迷惑をかけた」と陳謝し、会長を退く意向を示した。同日午後には、東京都内の自宅マンションが入るビルの一室で川淵氏らと会談した。

関係者によると、会談は約1時間に及び、森氏は川淵氏に「引き受けてくれたら全てうまくいく。後見人役は務める」と語り、後任会長を引き受けるよう要請した。
会談後、川淵氏は取材に対し「正式な手続きを経ておらず、決まったわけではない。ただ、(森氏に)お世話になってばかりだから断るわけにはいかない」と、後継就任を受け入れた理由を語った。
森氏は今月3日、日本オリンピック委員会(JOC)の臨時評議員会で、女性理事を増やす目標に関し「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」などと述べた。国内外で、女性差別だとの批判が広がっていた。

森氏は4日の記者会見で謝罪し、発言を撤回したが、辞任の考えはないと明言。組織委も続投させる意向だった。だが、大会を支えるボランティアの辞退が相次ぐなど国内外の批判は収まらず、大会開催まで5か月余りの状況で組織委トップが交代するという異例の事態になった。
組織委は12日、評議員と理事による緊急の「合同懇談会」を開く。森氏は懇談会の場で、自らの思いを説明する方針だ。
森氏は文相、通産相などを経て、2000年4月から01年4月まで首相を務め、12年に政界を引退した。東京大会の招致に携わり、14年1月、組織委の発足とともに会長に就任した。
川淵氏は1964年東京五輪のサッカーに選手として出場した。引退後は、Jリーグ初代チェアマンや日本サッカー協会会長などを歴任し、日本バスケットボール協会会長も務めた。2015年からは、各種球技の国内リーグで作る日本トップリーグ連携機構の会長を、前任の森氏から引き継いで務めている。
組織委の定款によると、会長は、理事会が理事の中から決める。川淵氏が会長になるには理事に就く必要がある。
◆東京五輪・パラリンピック大会組織委員会=大会運営や開催に向けた諸準備を行う一般財団法人として2014年1月24日に設立され、15年1月に公益財団法人へ移行した。評議員は6人、理事は35人。昨年4月1日現在の職員数は3803人で、東京都からの出向者と契約・派遣職員が各3割、国・自治体出身者が2割、残りを各スポーツ団体、民間企業出身者が占める。
疑念招く「密室での後継指名」

国際社会に、日本の異質さを印象付ける結果となってしまったのではないか。
組織委の森喜朗会長が女性に対する不適切な発言で辞任に追い込まれた。発言は、世界から「日本は男女平等に後ろ向きな国」だとの評価を受けかねない状況を招いており、不見識だとのそしりは免れない。スポンサーからも批判が噴出してからの辞任は、結果的に後手に回った。
さらに疑問なのは、森氏が辞任の意思や理由などを自ら公に説明していない段階で、川淵三郎・日本サッカー協会相談役に後任会長への就任を要請したことだ。混乱を招いた森氏本人による「密室での後継指名」という印象がぬぐえない。
新会長選びは、世界の目も意識し、適正な手続きにのっとって進めるべきだ。組織委の定款では、会長は理事会が選任すると決められている。新型コロナウイルスの脅威が続く中での大会の成功には、国際社会の理解と協力が欠かせない。そのためには、組織運営の透明性に疑念を持たれないことが必要だ。(政治部次長 栗林喜高)