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東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(83)が12日、女性蔑視(べっし)と受け取れる発言をした責任を取り、辞任を表明した。組織委は、後任候補を選ぶ「候補者検討委員会」(委員長・御手洗冨士夫名誉会長)を設置し、新会長を選出する。後任には、橋本聖子五輪相(56)が浮上している。

新会長候補を選ぶ委員会は理事会のメンバーで構成し、委員はアスリート出身者を含め、男女がほぼ同数になるように配慮して決める。組織委の武藤敏郎事務総長は「(新会長を)できるだけ早く決めたい」と述べ、五輪開幕が約5か月後に迫る中、適任者は五輪やパラに関わった経験があり、男女平等や多様性への意識が高いことを挙げた。
組織委内には「女性の橋本氏は元五輪選手で行政経験もあり、会長に適任だ」(幹部)との声が出ている。ただ、選考過程の透明性を確保するため、検討委員会での議論を重視する考えだ。後任会長に橋本氏が就任する場合、閣僚を辞任することになる。
橋本氏は12日、東京都内で記者団に、後任会長への打診の有無を問われ、「全くない」と語った。

森氏はこの日開かれた組織委の緊急会合で、「大事なのは7月に五輪を開催すること。私がいることが妨げになってはならない」と決断に至った心境を語った。自身の不適切な発言について、「解釈の仕方だと思う。多少意図的な報道があったのだろう」と語る場面もあり、終了後の記者会見には出席しなかった。
森氏から11日に会長就任を要請されて受諾した川淵三郎・日本サッカー協会相談役(84)は12日、一転して辞退することを表明した。
記者会見した武藤氏によると、会合は予定を1時間超える2時間半にわたって行われ、御手洗名誉会長や組織委の評議員、理事らが出席した。
組織委は男女平等を推進するプロジェクトチームを設置し、3月22日の理事会に向け、女性の役員増員や副会長以上への登用を検討する方針だ。
「密室」で後任選び図る…ガバナンス能力が欠如
組織委会長の森喜朗氏は、権限を持たないまま後任の人選と交渉に乗り出した。世論の圧力に押し切られて辞任を決断したにもかかわらず、周囲の声が届かない「密室」で決着を図った。立て続けの失態は組織委のガバナンス(組織統治)能力の欠如を物語っていた。
森氏は組織委の要職の人事を左右した。それはスムーズな意思決定を後押しする一方で、活発な議論を妨げた。後任を巡る森氏の動きについて、組織委内部から表立った批判は聞こえなかった。運営に関する透明性が確保されない環境に、組織委は慣れてしまっていなかったか。
評議員と理事の緊急会合は出席者が積極的に意見表明し、組織改革として男女共同参画の推進などを打ち出した。五輪開幕まで、あと160日。改革の姿勢を示すチャンスは、これが最後だと言える。(運動部 下山博之)