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東京オリンピックに魂を込める その原点となった「アスリート・聖子」の時代

 
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銅メダルを獲得したアルベールビル五輪女子1500メートル。全力でラストスパートする橋本聖子。(1992年2月12日)
銅メダルを獲得したアルベールビル五輪女子1500メートル。全力でラストスパートする橋本聖子。(1992年2月12日)

 女性蔑視と受け取れる発言の責任を取って森喜朗前会長が辞任した東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会は、後任の橋本聖子・新会長のもと、新たにスタートを切った。「聖子」の名前は1964年東京オリンピック開会式の聖火にちなんだもので、選手として冬夏合わせて7度の五輪に出場した「五輪の申し子」である。着任に際して19日、「オリンピアンとしての魂を込めて会長職を全うする」と語った橋本新会長。その強い信念の原点となった「アスリート・聖子」を、現役時代の恩師や番記者が語った。(編集委員・千葉直樹)

「不言実行」「スポーツ万能」

 橋本さんは前回東京オリンピックの開会式5日前の1964年10月5日、北海道早来町(現安平町)で生まれた。オフィシャルサイトには、「世紀の祭典をどうしても自分の母親に見せたいと、二人で上京した父が、国立競技場で見た聖火。ランナーの手から聖火台に移された瞬間、抜けるような青空に燃え上がった炎を見て感動した父が名付けてくれたのが『聖子』という名前です」と記されている。

 富士急行スケート部で指導した長田(おさだ)照正監督は「現役時代から不言実行の頑張り屋で、決して負け惜しみや言い訳をしない子でした」と振り返る。1983年に北海道・駒大苫小牧高を卒業して入社した時、スケート部の女子部員は橋本さん1人だけだった。

 「スケーターとしての技術は決して高くはなかった。パワー一辺倒で、脚の力だけで滑っていました」と長田さんは振り返る。「富士急ではローラースケートでのトレーニングもありましたが、彼女は高校時代にやっていなかった。最初はなかなかついていけなかったけれど、早朝の4時や5時に起きて1人で練習をしていました。人一倍の努力と、もともとの素質があって、3年ぐらいで技術も追いついてきた」。長田さんによると、他の運動でも球技などはかなりの腕前で、ボウリングをやれば200点台後半のスコアを出すなど、スポーツは万能だったという。

海外の選手も「SEIKO」を目標に

オールラウンダーの証。全日本選手権で全種目制覇を果たし、5つの金メダルを掲げる橋本聖子。(1987年12月)
オールラウンダーの証。全日本選手権で全種目制覇を果たし、5つの金メダルを掲げる橋本聖子。(1987年12月)

 橋本さんはスケート選手としての現役時代、500メートルから5000メートルまですべての距離をこなすオールラウンダーだった。「基本は500と1000。でも練習させると長距離も速かった」と長田さん。1988年カルガリー冬季オリンピック(カナダ)では、女子の5種目全てで、いずれも日本記録を更新して入賞を果たした。

 カルガリー大会、そして1500メートルで銅メダルを獲得した1992年のアルベールビル冬季オリンピック(フランス)を現地で取材し、橋本さんと親しかった読売新聞運動部の元記者、長谷川一雄さんも「練習の虫で、よく頑張る選手だった」と話す。「ジュニア時代から世界で戦ってきたボニー・ブレア選手(米国)など、ライバルたちは短距離の選手。でも彼女は短距離も長距離も全部やった。全てで一流になりたかったのでしょう」

 1992年2月12日、夕やみ濃いアルベールビルのスピードスケートリンクで行われた女子1500メートルのレース。強豪がほとんど滑り終わった段階で、橋本さんは2分6秒88の好タイムで3位につけていた。最終組で、この大会500メートル優勝のブレア選手がスタート。前半快調に飛ばしたが、終盤に失速し、日本人女子として冬季五輪初のメダル獲得が決まった。

 長田さんは海外でこんな話を聞いたことがあったという。「カルガリーでの橋本選手の活躍をテレビで見て、憧れてスケートを始めた外国人選手も多かったそうです。彼女が世界的に認知されたのはあの身長(1メートル56)なのに、オールラウンドで活躍し、体の大きな外国勢とわたりあったからです。本人は、1980年レークプラシッドオリンピックで男子5種目すべてに金メダルを獲得したエリク・ハイデン選手(アメリカ)に感銘を受け、目標にしていました」

「困難な道を選ぶのが自分の生き方」

組織委員会で就任のあいさつをする橋本新会長。「オリンピアンとしての魂を込めて会長職を全うする」と語った。(2月19日)
組織委員会で就任のあいさつをする橋本新会長。「オリンピアンとしての魂を込めて会長職を全うする」と語った。(2月19日)

 長田さんも長谷川さんも、リンクの内外で、後輩の面倒をよく見る橋本さんの姿を覚えている。

「入社してきたころは木訥(ぼくとつ)で無口な印象だった。後輩ができても、自分からバンバン言わず、横に並んで冗談を言うようなタイプでしたから、下からは慕われていました」(長田さん)

 「世界を目指すためには、体調管理も含めていろいろなことをやらなければいけないと若い選手に熱心に教えていました。記者に対しても、最後まで誠実に、何でも話してくれる。原稿を書きやすい選手でした」(長谷川さん)

 政治家となった後も、講演などでは「目の前に困難な道と平易な道があれば、困難な道を選ぶのが自分の生き方」と話していた橋本さん。東京オリンピック開催に向け、組織委員会トップとして山積する課題に取り組むことになる。

 かつてのまな弟子に長田さんは「責任感や周囲への配慮が人一倍強い。新会長を引き受けたのも苦渋の決断だったと思う。黙っていてもまっすぐに進んでいってしまうので、少しはブレーキもかけながら、健康に気をつけて職を全うしてほしい」とエールを送る。

 長谷川さんも「アルベールビルの屋外リンクでは風が強い日には外から砂が舞い込んでくるようなこともあった。でも昔の選手たちは『条件はみんな一緒』と落ち着いていて、泣き言は言わなかった。現役時代に競技にかけた思いを、今度は組織のリーダーとして生かしてほしい」と期待している。

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1856593 0 東京オリンピック2020速報 2021/02/20 17:13:00 2021/02/21 12:48:43 2021/02/21 12:48:43 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210220-OYT1I50031-T.jpg?type=thumbnail
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