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45歳落語家が20年ぶりに気づいた「スケボー愛」

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 古今亭志ん五。45歳の噺家(はなしか)。20代の頃、数年間やっていたスケートボードにおよそ20年ぶりにハマっている。本人曰く「体は硬いし、足は短いし、ついでに顔も大きい」けれど……。板とともにジャンプする「オーリー」や、空中で板を回して着地する「キックフリップ」などの技に挑む。そんな志ん五が東京オリンピックでの新競技採用を祝してスケボー愛を語る。「こんなおじさんがスケボーやっちゃってスミマセン――」(編集委員・千葉直樹、笠井智大)

衝撃の出会いと落語家への道

とうに縁は切れたと思っていたスケボーに20年ぶりにハマってしまった
とうに縁は切れたと思っていたスケボーに20年ぶりにハマってしまった

 スケボーとの出会いは大学生の時。コンビニエンスストアのアルバイト仲間にプロのスケーターがいたのだ。

 「毎日、スケボーに乗ってやって来るんだけど、ある時、店の入り口にあった高さ50センチくらいの傘立てをひょいっと飛び越えた。衝撃を受けてねえ。それであたしもやってみようと思ったんです」

 大学を卒業後、セールスマンなどいくつか職を変わりながら、スケボーを趣味で楽しんでいた。

 転機は介護の仕事をしていた時だ。落語好きのお(じい)さんに勧められて、口演を筆録した速記本(そっきぼん)を読んだら面白くて、寄席に通い始めた。自分でも演じてみたくなっていた頃、笑いすぎて椅子から転げ落ちるほど面白い落語家がいた。初代の古今亭志ん五。与太郎(よたろう)噺を得意とし、その風貌(ふうぼう)から「ドラキュラ」とあだ名された人気者だ。

 「弟子になりたくて、スーツを着て履歴書を手に、新宿末廣亭(すえひろてい)の楽屋口で師匠が来るのを待っていた。高座終わりで出てきた時に話を聞いてくれたんです」

 2003年、28歳で入門がかなう。

 「偶然にも師匠のおかみさんがあたしの大学の先輩で、娘さんと誕生日が3日違いというのが縁だったんでしょう」

 ちなみに、末廣亭の前で師匠より先に楽屋入りしてきた某大物師匠に「志ん五師匠はいつごろ来ますか」と無謀にも声をかけた。返ってきた返事は「知らねえよ、そこで待ってろよ!」――。最初にもらった小言は、自分の師匠からではなかったのだ。

テレビの企画で再び…今が一番うまい

先代の志ん五。デフォルメされた与太郎噺で、人気者だった
先代の志ん五。デフォルメされた与太郎噺で、人気者だった

 「今までのことは全部忘れろ。サラリーマンで覚えたことは口にするんじゃねえ」とは師匠の教え。厳しい前座修業のスタートである。「サラリーマン時代に、スケボーで脚をけがして、松葉づえで出社したことがありました。でも今度は正座をする仕事だからねえ……」

 落語家になり、スケボーとはいったん縁が切れた。

 古典も新作もこなす明るい芸風だ。入門4年目で二ツ目に昇進。2010年に師匠の早逝で、同じ一門の古今亭志ん橋(しんきょう)の弟子となり、2017年9月に真打ち昇進。二代目志ん五を襲名した。

 再びスケボーに乗り始めたのはこの頃だ。レギュラー番組を持っている地元・埼玉のケーブルテレビで<落語家がスケボーに乗る>という企画があった。

 「久しぶりの板の感触で、懐かしくて最高だった。落語家は勤め人と比べて時間が自由に使えるから上達できるのかもね。こんなんだけど、今が一番ウマいと思うよ」

 あたしのスケボーとかけまして、腕の良い刑事とときます
 そのこころは
 足がついてないのに検挙(謙虚)に励みます

師匠の志ん橋と。右は自筆イラストの「アマビエ」。「師匠にそっくりでしょ」(志ん五提供)
師匠の志ん橋と。右は自筆イラストの「アマビエ」。「師匠にそっくりでしょ」(志ん五提供)

デニム地の着物姿でユーチューブ

デニム地の着物に角帯が志ん五スタイル。「この着物はね、上野の店で買ったんです。パークに行くと目立つんだよ。子供が寄ってきたりね」
デニム地の着物に角帯が志ん五スタイル。「この着物はね、上野の店で買ったんです。パークに行くと目立つんだよ。子供が寄ってきたりね」

 落語家は、「旅」と呼ぶ地方での仕事も多い。その時はホテルに前もって板を送っておき、仕事が終わったら、ボードを抱えて地元のスケボー施設(パーク)に行くのだ。

 「子供から大人までその土地のいろんな人たちと友達になれることが財産かな。相手がどんな人か分からなくてもボードを持っているだけで話が弾む。『今、カミさんが口をきいてくれない』なんて愚痴を聞かされたりね。北は北海道から、南は奄美大島まで、十数か所のパークに行ってます」

 自らが楽しむ様子をスマホで撮って動画投稿サイト「ユーチューブ」で発信している。あくまで「自分が忘れないようにメモのつもり」で、宣伝しようなんて気はさらさらない。それなのに、「20年ぶりにオーリーをやってみました」は視聴30万回を超えた。ウエアはデニム地の着物というこだわりようだ。角帯に尻っぱしょりで滑る動画に海外から「ユカタ ワンダフル」とコメントが寄せられたことも。

やめられない「中毒性」の爽快感

旅先の奄美大島のスケボーショップで(志ん五提供)
旅先の奄美大島のスケボーショップで(志ん五提供)

 三十ならぬ、四十にして(ボードに)立つ――。何でそんなに楽しいのか。

 「難しいからかな。うまい人がやると簡単そうに見えるけど、あたしらは板の上に乗るのもままならない。そこを克服して、いっぱいある技の、一つでも二つでもできるとすごい爽快感なんだな。そのうえ中毒性もあって、やめられないの。でも危険なドラッグにハマっている人たちと違ってスケボーなら健康になれるよ」

 スケボーが東京オリンピックで採用されたことがうれしかった。

 「スケボーは日本では海外に比べてまだまだスポーツとしての認知度が低いし、選手もスケボーだけでやっていくのは苦しいと聞きます。地元オリンピックでの活躍がそうした環境を変える契機になればいいね。日本トップクラスの白井空良(そら)選手は、自分の名前がついた『空良グラインド』っていう技を持ってます。男子も女子も過去の世界大会で優勝している選手もいるし、多くの日本人選手がメダルを取れることを願っています」(敬称略)

取材協力・ハオレスケートパーク→ インスタグラムはこちら

略歴風あとがき

 ここんてい・しんご 1975年6月16日、埼玉県生まれ。スケボー以外の趣味は似顔絵を描くことで、落語会のプログラムに仲間のイラストを描く。「昨年、アマビエを師匠・志ん橋の顔で描いたら、新聞が載せてくれた」。オリンピック種目ではないが、スケボーの「フリースタイル」にも注目している。「平らなコートで逆立ちしたり、回転したり、まるで曲芸みたい。コロナ自粛中に新しいことに挑戦したくて、専用の板を取り寄せました」

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1870575 0 東京オリンピック2020速報 2021/02/26 16:00:00 2021/02/26 18:06:28 2021/02/26 18:06:28 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210224-OYT1I50078-T.jpg?type=thumbnail
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