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東京五輪・パラリンピックで、海外観客の受け入れを断念することが、20日に行われた政府や国際オリンピック委員会(IOC)などの5者会談で決まった。新型コロナウイルスの感染防止のためだが、「おもてなし」の準備をしてきたホテル従業員やボランティアは複雑な表情。選手らは惜しがりながらも「開催が最優先」と理解を示した。
■落胆
コロナ禍で深刻な打撃を被る宿泊業界。数十万人とされる海外観客が来なくなったため、期待していた収益が見込めなくなった。

「感染を防ぐためには仕方がないけれど、五輪の時だけでも部屋が埋まり、海外のお客と盛り上がりたかった……」。英語の旅行誌に紹介され、年間約100か国・地域から客を受け入れる「サクラホテル池袋」(東京)のフロントスタッフ、本坊愛さん(39)は肩を落とした。
外貨両替機を新設し、レストランには和食の新メニューを用意していたが、昨年3月に大会が延期に。全103室の予約はキャンセルになった。その後も、客の8割を占めていた訪日外国人が戻る兆しはない。
大会期間中は、日本人客に国際色豊かな本来の五輪気分を味わってもらえるように、ホテル内の装飾を外国風にする検討を始めた。
影響は東京にとどまらない。「北海道民泊観光協会」代表理事で、マラソンと競歩などが行われる札幌市で民泊を経営する南邦彦さん(46)は「五輪までは何とか頑張るという同業者が多かったが、これで廃業や賃貸住宅への転換が加速する可能性がある」と漏らす。
■早く情報を
海外客への「おもてなし」は東京大会のキーワードで、一翼を担うのが約12万人のボランティアだ。
英語での道案内などをする予定だった女性(61)(埼玉県飯能市)はラジオの英会話講座を聞いて耳を慣らしてきた。「『日本に来てよかった』と思ってもらえるような手伝いがしたかったのに残念。英語を使えなくても、ほかの形で貢献したい」と話した。
東京大会では、約1万人の外国人ボランティアも採用されている。台湾在住の会社員の女性(49)は日本で働いた経験を生かし、日英中3か国語を駆使して活動する予定。「外国人である私の入国を日本政府は許可するでしょうか。正確な情報が欲しい」と求めた。