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差別という「見えない敵」を聖火で照らす、車いすで走って訴えたいこと

 
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 東京五輪の聖火リレーは17、18日、愛媛県内で行われる。17日に丸亀市や観音寺市など9市町、18日に坂出市や高松市など8市町を回る。18日には、ハンセン病の国立療養所・大島青松園(高松市)に入所する松本常二さん(89)がランナーとして参加。差別を恐れ、長く偽名で生活した経験から、新型コロナウイルスの感染者への差別に心を痛め、「ハンセン病もコロナも見えないものへの恐れは共通。自分をさらけ出し、差別と偏見を吹き飛ばしたい」と語る。(高山智仁)

「卒業証書」きっかけに本名に

トーチを模した筒を持って聖火リレーの練習をする松本さん(高松市で)=大島青松園提供
トーチを模した筒を持って聖火リレーの練習をする松本さん(高松市で)=大島青松園提供

 愛媛県西条市出身。小学5年で受けた健康診断でハンセン病と診断され、1942年に瀬戸内海に浮かぶ大島の療養所に入所した。以来、大島で過ごす。親族に偏見の目が向くのを恐れ、園では本来の姓ではなく、自宅近くにあった神社名にちなんで「磯野」を名乗ってきた。

 本名を名乗り始めたのは2011年、母校の西条市立神戸かんべ小が、卒業できなかった松本さんに本名の「卒業証書」を贈ったのがきっかけだ。67年遅れで開かれた卒業式で旧友と抱き合い、「松本君」と本名で呼ばれると、感動で足の震えが止まらなかった。

 親類にも「もう名前を隠す時代じゃなくなったんよ」と背中を押され、本名でシンポジウムに参加するなど、啓発活動に積極的に協力するようになった。

「コロナとハンセン病、根底で共通している」

 今回のリレーへの参加は、ランナーの公募を知った療養所職員に勧められた。1964年の東京五輪で、「東洋の魔女」と呼ばれた女子バレーボールチームや、男子マラソン・円谷幸吉の活躍を伝えるラジオに感動した思い出がよみがえり、喜んで応募。もちろん、本名での参加だ。

 最近気にかかるのは、新型コロナの感染者への誹謗ひぼう中傷を伝えるニュースだ。厳しい差別にさらされたハンセン病の歴史と重ね合わせ、「感染者への差別は『いつ自分にうつるか』という恐れが要因。コロナとハンセン病は根底で共通している」という。

 本番では、高松市内で車いすに乗って介助者と共に聖火を運ぶ。コロナの感染対策で、この1年は園内の散歩程度しか運動ができていないが、「私の走る姿を見てもらうことで、病気への正しい理解の重要性を伝え、見えない敵への恐れを解消するきっかけになったらいい」と願う。

ハンセン病 古くから身体変形を引き起こす原因不明の病として恐れられてきたが、1873年に細菌が原因の感染症とわかった。1943年には治療薬の有効性を確認。しかし、その後も国は患者の強制隔離政策を維持し、96年にらい予防法が廃止されるまで続いた。患者や回復者への人権侵害も続き、国が2001年に謝罪した。

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1989334 0 東京オリンピック 2021/04/16 11:09:00 2021/04/16 11:09:00 2021/04/16 11:09:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210416-OYT8I50001-T.jpg?type=thumbnail
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