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マラソン五輪テスト大会@札幌・武井隆次さんリアルタイム解説

  
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 東京オリンピック・マラソンのテスト大会は5日午前9時50分から、札幌市内の本番コースで開催された。男女4人の代表選手も走るハーフマラソンの大会を、2002年釜山アジア大会銅メダリストの名走者・武井隆次さんが解説する。(以下は敬称略)

総括 くっきり分かれた4人の対応

出場した男女の五輪代表ランナー4人。左から服部勇馬、前田穂南、鈴木亜由子、一山麻緒(代表撮影)
出場した男女の五輪代表ランナー4人。左から服部勇馬、前田穂南、鈴木亜由子、一山麻緒(代表撮影)

 オリンピック3か月前。本来なら、レースに出るよりも走り込みを積みたい時期だ。このタイミングのハーフマラソンを、4人の代表ランナーが走ったのは、コロナ下でレースや実戦練習の機会が少ない影響でもあるだろう。

 そんなレースで、4人の対応はくっきり分かれた。服部と前田は本番を想定したフルマラソンのペースでコースの下見に徹し、一山と鈴木はレースの経験を積んだ。

 特に服部はゴール後の表情が明るかった。事前の設定よりもペースを上げた理由を「思ったより走りやすかった」と説明していた。より厳しい暑さの中でのレースになる本番にも、生かせる走りをできたのではないか。一山も、自己ベスト更新で笑顔。自信と手応えを得たことだろう。前田と鈴木のレース後の表情は、必ずしも明るくなかったけれども、2人とも落ち着いて結果をかみしめているようにみえた。

 それぞれに収穫を手にしたはずだ。ほか2人の代表ランナーも含め、残り3か月の調整が順調に進むことを期待している。

11:00過ぎ 五輪代表は一山、鈴木、前田の順にゴール

 女子は一山が優勝。1時間8分28秒と、宣言通り、ハーフの自己ベストを更新した。気持ちの面で収穫だろう。これから本番まで3か月弱の調整も、気分よく進められるのではないか。鈴木は、少し力を使ったレースだったかもしれないが、今の自分の状態を見極められたのではないか。前田は2人のずっと後ろを走ったが、落ち着いてコースを知ることができただろう。

11:00前 服部がゴール

 男子の服部は1時間3分を切るタイムでゴールした。1キロ3分を切る、設定よりも速いペースながら、走り終えて全く息が乱れていなかった。ハーフなのに、フルマラソンでみせるような走りを披露した。

10:55 最大の攻略ポイント、北海道大構内へ

 男子の服部は4~5人の集団で北海道大構内に入った。直角コーナーで、曲がりづらそうに手を体から離して走っていた。この短い時間に7度曲がるのは、やはり大変だろう。接触回避とスピード保持の兼ね合いを、ここで体験できたのは本番への収穫になるはずだ。大学構内には、無理なく走る目安として路面に緑のガイドラインが引いてある。もし私が走るなら、ラインの少し外側を走るだろうか。内側だと、少々無理なコース取りになると思う。

10:45 ばらけたレース展開、沿道は人まばら

 ハーフ後半の長い直線に入った。本番では気温が上がって徐々にきつくなるところだろうが、きょうは走りやすそうだ。すでに男子も女子も集団がばらけたレースになっている。この後、直角コーナーの続く北海道大構内で「集団走」を体験したいと、代表選手たちは思っているだろうが、そうなりにくい展開かもしれない。ただ、無理に集団走を求めて、この時期に接触事故でけがでもしたら元も子もない。落ち着いて、自分の走りに徹してほしい。沿道に、箱根駅伝の時と比べても観客が少ない。応援自粛の呼びかけが、ファンに届いている気がする光景だ。

10:30 鈴木と一山、いい上り

 8キロ前後の上りでは、女子の鈴木亜由子(日本郵政グループ)と一山の技術を感じた。平地とほとんどフォームが変わらない。特に鈴木の走りが軽快だ。男子の服部はレース前半は引き続き、設定よりも速いペース。設定の「1キロを3分5秒」は、各区約20キロの箱根駅伝あたりと比べてもだいぶ遅い。いざ走ってみると、周りの走者にも合わせて、やはりハーフマラソンのペースになってしまうものだ。調子は良さそうにみえる。

10:15 無理しない序盤

 「ハーフマラソンの自己ベストを狙う」と宣言していた女子の一山麻緒(ワコール)は序盤、その通りのペースで走っているようだが、無理をしているようには見えない。安心した。前田穂南(天満屋)はあえて集団についていかず、単独走になっている。コースの下見に徹する構えではないか。男子の服部勇馬(トヨタ自動車)は、宣言していた「1キロ3分5秒」よりは速いペースのようだが、こちらも落ち着きは感じられる。集団から少し外れたところを走ることがあるのは、この強い風を体感しておくためではないか。

一斉にスタートを切った選手たち(5日、札幌市で)
一斉にスタートを切った選手たち(5日、札幌市で)

9:50 4人の代表ら、男女一斉スタート

 大通り公園を周回するスタートのコース設定も、珍しい。走者はリズムがとりづらいだろう。奇襲で飛び出す作戦も、力の消耗につながるから、とりにくいはずだ。この経験も、きっと五輪本番につながる。風が強そうな中、男子の最初の1キロは2分52秒。ハーフマラソンとしては遅めのペースになっている。

スタート直前:走りやすい天候に恵まれた

 札幌市は午前8時時点で気温11度台、曇り空で雨もなく、走りやすい条件が整った。真夏の五輪本番は、朝のレースでも30度前後の過酷な戦いになるだろう。きょうの走りで、代表ランナーたちには手応えや自信をつかみ、本番への戦略に役立ててほしい。

展望 結果を求めずオリンピックを見据えてほしい、北大構内の走りに注目

 レース前日の記者会見では、男子の代表ランナー・服部勇馬(トヨタ自動車)の発言が頼もしかった。「1キロ3分5秒のペースを刻む」と言ったが、ハーフマラソンをこのペースで走ったら、間違いなく周りに置いて行かれる。目先のレースの順位など彼は眼中になく、8月の五輪本番だけを見据えている。五輪でのペース運びを具体的にイメージできているということは、ここまでの調整が順調にきているということだろう。

 女子では、一山麻緒(ワコール)の「自己ベストをめざす」という発言が、少し意外だった。五輪3か月前のハーフマラソンで、代表ランナーにはドーンと構えていてほしい。好結果で弾みをつけたいのかもしれないが、結果を求めない姿勢を強調した男子の服部とは対照的な感じを受けた。前田穂南(天満屋)と鈴木亜由子(日本郵政グループ)は、順位やタイムを求めないと話したけれども、この2人は不調や故障明けで、少し自信がなさそうだったのが気がかりだ。

 今回のコースでは、道幅が狭くて見通しのきかない曲がり角が連続する北海道大の構内での代表4選手の走りに注目したい。練習では試走したかもしれないが、5日のレースではここを集団で走る経験を積めるのが貴重だ。

 新型コロナ感染が拡大する札幌でのテスト大会となり、開催には批判の声もある。公道を走るマラソンにおいて、完全な「無観客」の実現も難しい。そんな中で、マスク着用の徹底などの感染症対策の面でも、五輪本番への手応えが得られることを期待したい。正月の箱根駅伝などでもコロナ下での開催を乗り切ってきた日本の長距離界の経験が生かされることを願っている。

解説者プロフィル

武井隆次(たけい・りゅうじ)1971年生まれ。東京都出身。早稲田大時代に箱根駅伝で4度区間賞に輝き、うち3度が区間新記録だった。エスビー食品時代は2002年のびわ湖毎日マラソンに2時間8分35秒で優勝。その年の釜山アジア大会で3位に入った。現役引退後はエスビー食品のコーチ、監督を歴任。現在は小学生を指導している。

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2030844 0 東京オリンピック 2021/05/05 08:51:00 2021/05/05 13:57:26 2021/05/05 13:57:26 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210505-OYT8I50006-T.jpg?type=thumbnail
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