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延期でかなわなかった出走…夫は「元気や感謝届ける願いを消したくない」

  
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 6月8、9日に秋田県で開催予定の東京五輪聖火リレーまで、8日で1か月。昨年夏に55歳で亡くなった能代市二ツ井町の佐々木若子さんは、聖火ランナーに登録されながら、新型コロナウイルスによる1年延期で出走がかなわなかった。夫の顕信さん(56)は「不自由な体でもリレーを走れると伝えることで、元気や感謝を届けたかった若子の願いを消したくない」と思いを語る。(中村桐佳)

リレーまで1か月

佐々木若子さんの遺影と聖火リレーランナーに選出されたことを知らせる通知(能代市二ツ井町の自宅で)
佐々木若子さんの遺影と聖火リレーランナーに選出されたことを知らせる通知(能代市二ツ井町の自宅で)

 若子さんが聖火リレーに応募したのは2019年7月。前年秋に脊髄硬膜外血腫で胸から下がまひし、一時は人工呼吸器が必要な状態となった。

 しかし、治療とリハビリで車いす生活ができるまでに回復。退院して聖火ランナーの募集を知り、「絶対に走りたい」と目を輝かせた。何度も推敲すいこうを重ねた応募の作文には若子さんの思いが詰まっている。

 「『自分の命が守られたのは、自分にはまだ何か役目があるからではないか』。何かをしなければ。今の自分にできることは何だろうか。何かに挑戦して、元気な姿を見せて、私を支えてくれていた人たちに感謝の気持ちを伝えたい」

 さらに「私のような障害を持っている人や、何かで自信をなくしている人が、私の姿を見て元気になってくれたらうれしい」ともつづった。

 若子さんは小学生の頃に太い血管に炎症が生じる病気を発症し、多くの時間を病院で過ごした。病棟の友人が白血病で亡くなるのを目の当たりにしたためか、「生かされたことへの感謝が人一倍強く、誰かのために精いっぱい取り組む明るい人だった」と顕信さん。運動会のメダル作りなど地域活動やボランティアに積極的に参加したという。

 19年12月、聖火ランナー選出の通知が届くと、若子さんは走る日を思い描いては「車いすを絶対に押して」と楽しそうに介助を頼み、顕信さんは「任せとけ」と応じた。昨年3月に延期が決定した後も「走るまでは死ねない」とリレーは生きる目標になっていた。しかし、その後体調を崩すことが増え、容体の急変から昨年7月に亡くなった。

 昨年12月、大会組織委員会から走者を務めるかどうかの確認があり、顕信さんは若子さんが亡くなったことを伝えた。車いすに若子さんの写真を乗せて走りたいと希望したが、認められなかった。

 それでも県内での開催が近づき、前向きな思いも芽生えている。「新しい人が選ばれるということは、若子のような特別な思いで聖火リレーに臨む人が増えたということ。若子が聖火ランナーだった事実にかわりはないんです」。能代市でリレーが行われる6月9日には若子さんの写真と車いすを携えて見に行きたいと考えている。

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2036910 0 東京オリンピック 2021/05/08 10:30:00 2021/05/08 10:30:00 2021/05/08 10:30:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210508-OYT8I50000-T.jpg?type=thumbnail
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