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「元気になった真備を知ってほしい」…西日本豪雨で浸水被害の歯科医

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 「地元の人に元気を」「引っ込み思案を変えたい」――。岡山県内での東京オリンピックの聖火リレー2日目は20日、新型コロナウイルスの感染拡大のため公道での実施を中止し、津山中央公園グラウンド(津山市)で代替の式典を行った。あいにくの雨だったが、83人のランナーはそれぞれの願いを胸に、晴れやかな表情で「トーチキス」を行い、聖火をつないだ。

「聖火が復興の希望の光になれば」

町の復興を思い、トーチに聖火をともす水川さん=前田尚紀撮影
町の復興を思い、トーチに聖火をともす水川さん=前田尚紀撮影

 西日本豪雨で大規模な浸水被害を受けた倉敷市真備町で、30年以上歯科医院を営む水川正弘さん(59)は、復興途上の町を思いトーチを掲げた。

 豪雨が襲った2018年7月6日の夜。医院2階の自宅から外を見ると、道路を水が覆っていた。「このままだとカルテが危ない」。1階の診察室のカルテを、棚の上へと移動させた。

 とっさに体が動いたのは、11年の東日本大震災での経験があったからだ。発生直後、県歯科医師会の要請で宮城県に入り、犠牲者の身元確認のため歯型や治療痕を調べた。カルテが失われて家族が見つからない被災者もおり、「カルテの記録は患者の命と同じ」という意識があった。

 しかし、作業を始めて15分ほどで水が流れ込み、あっという間に胸までつかった。慌てて2階に逃げ込んだが、2日後、水が引いた診察室に降りると、約1万人分のカルテが泥だらけになっていた。

 カルテをスタッフと1枚ずつ、丁寧に水で洗っては乾かす作業を繰り返した。「この人は入れ歯の調整で何度も来てもらったな」「子どもの時はいつも大泣きしてたのに、立派なお父さんになって」。患者一人一人の顔が浮かんだ。10月下旬には再開にこぎ着け、「何とか地域とのつながりを守れた」と振り返る。

 真備町で約5700棟以上が浸水被害を受けた豪雨から3年近く。真新しい家が増え、町は日常を取り戻しつつあると感じる。「元気になった真備を知ってほしい」との思いから、ランナーに応募した。

 リレーは走れなかったが、「地域のみんなで助け合い、今日を迎えられた。聖火が真備復興の希望の光になればうれしい」と満足そうに語った。

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2067404 0 東京オリンピック2020速報 2021/05/21 09:40:00 2021/05/21 10:24:42 2021/05/21 10:24:42 トーチに聖火をともす(0530505)水川正弘さん(20日午後5時7分、岡山県津山市で)=前田尚紀撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/05/20210521-OYT8I50000-T.jpg?type=thumbnail
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