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「演技以外にも役割がある」――。6日の体操・全日本種目別選手権(群馬・高崎アリーナ)の鉄棒で東京五輪出場を決めた元男子世界王者の内村航平選手(32)(ジョイカル)は、真剣な表情で語った。心は体操の、スポーツの力を社会に示す使命感で満たされていた。

個人総合と団体総合を制した2016年リオデジャネイロ五輪後、けがで苦しんだ。引退もちらつく中、現役を続けた理由は「『特別』としか言いようがない」とする自国開催の東京五輪の存在だった。
11年3月、東日本大震災が発生し、同年10月に世界選手権が東京で開かれた。個人総合3連覇を果たした内村選手は、被災者らから声をかけられたという。「『勇気をもらいました』という言葉をいただいた。自分たちがやっていることは、社会に光を与えられるんだと知りました」。困難に立ち向かう姿は人の心に響くと信じているから昨年11月、「(新型コロナウイルスで五輪が)『できない』ではなく、『どうやったらできるか』と考えてほしい」と呼びかけた。
「経験を下の代に伝えていかなきゃならない」と内村選手。約1か月半後、これまでよりも深い意味を持つ特別な舞台に立つ。