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[スキャナー]WHOから「甘さ」指摘、五輪ルール突貫修正

  
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コロナ対策指針 第3版

東京五輪・パラリンピックのプレーブック3版
東京五輪・パラリンピックのプレーブック3版

 国際オリンピック委員会(IOC)などが15日公表した新型コロナウイルス対策指針「プレーブック」第3版は、選手・チーム役員への検査や行動制限の内容が具体的に記載された。違反者への厳しい処分も盛り込んだ背景には、東京五輪・パラリンピックによる感染拡大を懸念した世界保健機関(WHO)からの指摘があった。(社会部 水野祥)

開催悲観論を警戒 厳格化

■水面下

 「今のプレーブックは甘い。不安の声が上がっている」。先月下旬に寄せられたWHOの意見は、日本政府を戸惑わせた。初版、2版の作成に関わったパートナーだったからだ。

 WHOに影響を与えたのは、直前に米国の医学誌に掲載されたプレーブックについての論文だった。全競技の感染対策を一律に扱っていることや、マスクは選手各自が用意すると定めていることなどを感染症の専門家らが挙げ、「科学的なリスク評価に基づいていない」と批判していた。

 丸川五輪相は5月28日の閣議後の記者会見で「明確な事実誤認や誤解が見受けられる」と反論したが、水面下では別の動きがあった。

 大会組織委員会や内閣官房、厚生労働省の幹部が緊急会合を開き、完成しつつあった3版の見直しに入った。米誌だけでなく、WHOから感染対策を表立って批判されると、開催を危ぶむ声が高まりかねなかった。

■流れ明示

 2月に公表された初版は、選手の検査を最低4日に1回と定めた。しかし、世界各地で変異ウイルスの感染が拡大し、IOCを通じてWHOの助言をもらった2版では「毎日」に変更した。

 3版には「検査の流れと、陽性になった場合の対応を詳しく知りたい」との選手側の要望に応える記述もある。競技開始時間帯が午前と午後のケースに分け、検体提出時間や結果判明、再検査までの流れを明示した。

 海外選手は日本を出国した後も14日間、検温などの健康観察を続け、発症した場合、各国・地域のコロナ対策責任者を通じて報告するよう新たに求め、行動制限を厳格にした。

 参加に必要な資格認定証の 剥奪はくだつ のほか、大会からの除外や制裁金など、重い処分も記載された。禁止されている繁華街や観光地に出向くなど、違反が確認されれば、政府が国外退去を求めることもある。

■実効性は

 大会中、訪日する選手は計約1万5000人。本当に、厳しいルールは守られるのだろうか。

 違反が疑われる選手は、スマートフォンの位置情報をIOCなどに提供する必要がある。組織委などの調査チームは事実確認をした上で処分をする。スマホを部屋に置いて外出していることが明らかになれば、それだけで処分対象になる。

 検査拒否も罰せられる。選手が部屋で採取した唾液を検体に使うが、直前の歯磨きやうがいなどの不正がないか、抜き打ちで点検することも検討されている。

 IOCは今後、メディアやスポンサー、国際競技連盟(IF)関係者などを対象に、同様の処分や行動制限を示したプレーブックをそれぞれ公表する。

 舘田一博・東邦大教授(感染症学)は「海外選手が帰国した後も一定期間、健康観察を続ければ、国内外の安心につながる。厳しいルールができたので、今後は、どのように順守させるかに、重点を置く必要がある」と指摘する。

真後ろ走らない、コートチェンジせず…競技ごとに模索

 今後の大きな課題は各競技の特性に応じたルール作りだ。個人競技と団体競技があり、さらに両分野の中でも陸上など非接触型と格闘技など接触型といった色分けがあり、全競技共通のルールだけでは感染防止策として不十分だからだ。

 各国際競技連盟(IF)は、独自のガイドライン(指針)を設定し、東京五輪・パラリンピック予選などの国際大会を運営してきた。世界陸連は今年1月に指針を公表し、1500メートルなど中距離種目でゴールした後に呼気が著しく荒くなるため、観客席前で走りながら勝利を祝う「ウィニングラン」は控えるよう明記した。各国・地域の大会運営側にも、3000メートル障害の水ごうの塩素消毒などを求めた。

 競技成績に影響しそうな指針も出された。国際トライアスロン連合はスイム(水泳)、バイク(自転車)に続くランについて、「4メートル未満の距離で他選手の真後ろを走らない」を推奨項目に掲げた。先行の選手を「風よけ」にして力を温存するレース展開が難しくなるためか、5月中旬に横浜市で実施された国際大会で、厳密に守られている様子はなかった。

 5月初めに東京都江東区の有明アリーナで開かれたバレーボールの五輪テスト大会では、セットごとに両チームの陣地を入れ替える「コートチェンジ」を取りやめた。IFの指針で明確に定められた項目ではなかったが、東京都に3度目の緊急事態宣言が発令された直後でもあり、競技規則の変更に踏み込んだ。

 各競技の特性に合わせて公平性も確保し、実効性を持たせた上で安全な大会運営を最優先とするならば、コロナ禍の状況を見ながら臨機応変に対応する姿勢も必要になりそうだ。(運動部 佐藤謙治)

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2127019 1 東京オリンピック2020速報 2021/06/16 05:00:00 2021/06/16 06:31:45 2021/06/16 06:31:45 東京五輪のプレーブック(6月15日午後8時44分、読売新聞東京本社で)=富永健太郎撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210615-OYT1I50126-T.jpg?type=thumbnail
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