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娘の名札をポケットにしのばせて聖火リレーに「見せに来たよ」

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 東京五輪の聖火リレーが19日、宮城県内で始まった。ギリシャから航空自衛隊松島基地(東松島市)に聖火が到着して1年3か月。コロナ禍による延期を経て、大会理念である東日本大震災からの「復興五輪」の下、ランナーはそれぞれの思いを込めてコースを走り抜けた。

震災を世界に発信したいと応募

 「大川伝承の会」共同代表の鈴木典行さん(56)は、ポケットに「鈴木真衣」と書かれた名札を忍ばせ、石巻市中心部を走った。

 次女の真衣さん(当時12歳)は、震災の津波で犠牲となった市立大川小の児童・教職員計84人の一人。6年生だった。名札はあの日の朝、真衣さんが家を出る時、自宅に置き忘れたものだ。

 バスケットボールのスポーツ少年団で練習に励んだ真衣さん。鈴木さんは未経験だったが、コーチとして一緒に汗を流した。だが楽しい日々は一変した。

 震災後、他の遺族らと語り部団体「大川伝承の会」を設立し、共同代表に就任。会社勤めの傍ら、全国から訪れる人々に語り続けてきた。子どもたちが校庭で待機して裏山に逃げなかったこと、保護者が子どもを必死で捜したこと。そして、学校現場で命が失われてはならないということ――。

走り終えた後、真衣さんの名札を手にする鈴木典行さん=武藤要撮影
走り終えた後、真衣さんの名札を手にする鈴木典行さん=武藤要撮影

 旧校舎は、新設の伝承館とともに震災遺構として整備され、来月にも公開される。会では「伝承館の展示内容でどれだけ伝えられるかが重要」と考え、市と議論を重ねた。

 聖火ランナーの募集を知り、すぐに応募した。震災を世界に発信したいという思いからだ。悲しみは決して消えないが、真衣さんと一緒に走ろうと、仏壇そばにずっと保管してきた名札を初めて持ち出した。

 沿道に笑顔で手を振り、走者の役目を果たした。その後、名札をユニホームに付けて大川小へ。「走ったぞ。見せに来たよ」。そう言って校舎に向けトーチを掲げた。

 (後藤陵平)

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2139815 0 東京オリンピック2020速報 2021/06/20 11:08:00 2021/06/20 11:08:00 2021/06/20 11:08:00 走り終えた後、真衣さんの名札を手にする鈴木典行さん(19日午後3時29分、宮城県石巻市で)=武藤要撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/06/20210619-OYT8I50058-T.jpg?type=thumbnail
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