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東京五輪の各会場の観客数の上限を1万人とすることが21日、政府や国際オリンピック委員会(IOC)などの5者会談で決まった。選手から歓迎の声が上がる一方、約90万枚減るチケットや、新型コロナウイルスの感染拡大を心配する人もいた。五輪の開幕まで23日で1か月。観客を迎える競技会場では急ピッチで準備が進んでいる。
「頑張らなきゃ」

「最初は『無観客でもやってほしい』という気持ちだったが、お客さんに見てもらえる状況になるのなら、うれしい。余計に頑張らなきゃなという気持ちになる」。レスリング女子代表で、五輪連覇を目指す川井梨紗子選手(26)は、こう語った。
サーフィン男子で五輪出場権を獲得している大原洋人選手(24)は、故郷の千葉県一宮町で行われる大会を楽しみにしており、「地元の人が見ている海で良い演技をしたい」と意気込んだ。
「無効になれば…」
「何とか観戦したい」と願うのは、川崎市麻生区の主婦(39)。横浜国際総合競技場(横浜市)でのサッカー男子決勝のチケット2枚が当選しているが、収容人数は約7万2000人で、再抽選の対象になる可能性がある。
サッカー教室に通う小学3年の長男(8)には、当選は内緒にしている。「チケットが無効になれば、がっかりさせてしまうから」と悩ましそうに話した。
五輪の国内向けチケットは2019年5月、抽選申し込みが始まった。大会延期決定後、希望者に払い戻しが行われ、有効なチケットは約364万枚。上限が1万人になったことで、チケットによっては再抽選が行われ、約272万枚まで減らされる。
「財政に余裕ない」
大会組織委員会は東京五輪とパラリンピックのチケット収入として約900億円を見込んでいた。今年3月の海外客受け入れ断念に続き、五輪の国内客も制限することで、収入は計画の半分を下回る見込みだ。
組織委が資金不足に陥った場合、都が
「上限1万人でも、近接する会場で同時に競技が行われれば、それ以上の人出が見込まれる。やはり無観客開催が望ましい」。東京都医師会の新井悟理事(68)は、こう述べた。
都内の感染者数は最近、下げ止まりの状態が続いている。17日の都の専門家会議でも「リバウンド(感染の再拡大)のリスクが高まっている」と指摘された。
「期待は禁物」
大会期間中、観客らの道案内などを行う「都市ボランティア」。都内で21日に始まった研修では、活動2週間前から体調を報告することなどが説明され、青地のユニホームが渡された。
港区の主婦(58)は「観客を入れることに不安はあるが、しっかり感染対策をして、自分ができる範囲で大会を支えたい」と話した。

都内では五輪需要を見込んで、多くの宿泊施設が開業しており、観客制限は大きな打撃になる。
「プロスタイル旅館 東京浅草」は訪日観光客の需要を見越し、2019年12月にオープン。43の客室は全て畳敷きで、約半数に露天風呂も設けた。
コロナ禍に見舞われ、稼働率は一時、1割を切った。海外観客受け入れ断念が決まった際は、外国人からの予約数十件が取り消された。
小野勇・総支配人(36)は「国内のお客様に楽しんでもらえるよう、もてなす準備をしたい」としつつ、「感染状況次第で無観客になるかもしれず、過度な期待はしないようにする」と気を引き締めた。