ニュース

「ミスしない男」萱和磨、5年磨いた技で団体・個人の金メダル目指す

  
メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

(2021年6月29日付朝刊掲載)

 体操男子代表の 萱和磨かやかずま 選手(24)(セントラルスポーツ)は、団体と個人の金メダルを目標に掲げている。5月の体操・NHK杯。五輪初出場を決めた直後のインタビューで、「5年……。長かったな」と言葉を絞り出したが、「こんなところで泣いている時点でまだまだ」と続けた声は、震えていた。

体操・NHK杯であん馬の演技をする萱選手(5月16日、長野市のビッグハットで)
体操・NHK杯であん馬の演技をする萱選手(5月16日、長野市のビッグハットで)

 白井健三選手(引退表明)との「大学1年生コンビ」で注目された2015年世界選手権の団体総合で、得意のあん馬でチーム最高点をたたきだした。日本は金メダルに輝き、翌年のリオデジャネイロ五輪の出場権を得た。個人でも、種目別あん馬で銅メダルを獲得した。

 勢いに乗って挑んだリオ五輪の最終選考は、あん馬で優勝したが、代表メンバーには、つり輪などで得点が期待できる山室光史選手らが選ばれた。紙一重での落選だった。

 五輪直前には、ブラジル・サンパウロの代表合宿に補欠として同行。正メンバー5人が決戦の地・リオに移動すると、専属の料理人が作ってくれていた食事がなくなり、レトルト食品の牛丼や中華丼でしのいだ。

 正メンバーのけがに備え、同じ補欠の神本雄也選手と、現地の小中学生に交じって練習を続けた。気持ちは切らさなかったが、選手交代の期限になっても声はかからず、2人はどちらともなく言った。「俺らの役目、終わったんだな」

 団体総合の決勝は、観客席で心の底から応援した。だが、5人が金メダルを手にして国歌が流れると、別の感情がこみ上げた。日本中がわいた歓喜のひとときは、「人生で一番悔しい時間」になった。

 5人とは別の便で帰国した。成田空港では、出迎えた母、恵子さん(52)が見たことがないほど険しい顔で現れ、そのまま練習場に向かった。

 「当落線ギリギリで代表をつかむのではなく、圧倒的な成績で日本のエースになる」。そう決めて、東京五輪に向けた「4年計画」を開始した。

 目指したのは、あん馬だけでなく、全6種目で高得点を取るオールラウンダー。今年はつり輪、来年は鉄棒と、1年ごとに苦手を潰し、技を磨いた。

 周囲から「やり過ぎ」と言われたこともある練習は、量以上に質にこだわった。ウォーミングアップから、練習でも、試合はもちろん、どんな時もミスなく――。失敗しても、「伸びしろになる部分」と捉え、とことんまで完璧な演技を追求した。

 何度も思い浮かべるのは、04年アテネ五輪での冨田洋之さんの姿。最後に鉄棒の着地をピタリと決め、28年ぶりの団体金メダルをつかんだ場面だ。

 「あれだけの緊張感の中でしっかり決める選手こそ、体操ニッポンのエースを名乗る資格がある」

 18年に世界選手権代表に返り咲き、個人総合で6位入賞。19年世界選手権では、団体と個人の全20演技を失敗なく終え、この頃から「ミスしない男」と呼ばれるようになった。

 20年12月、全日本選手権の個人総合で優勝を果たした。男子代表の水鳥寿思監督は厚い信頼を寄せ、東京五輪の団体チーム主将に指名した。

 萱選手は言う。「あの時の悔しさを乗り越え、自分は確実に強くなった」。5年前は代表入りが目標だったが、今、目指しているのは団体と個人の金メダル。「もっともっと仕上げていきたい」。代名詞となったノーミスの演技を最高の舞台でやり抜く。

体操男子  団体総合は28年ぶりに頂点に立った2004年アテネ大会以降、08、12年は「銀」、16年は「金」と好成績が続く。東京五輪は前回大会から1人減の4人で競う。五輪3大会で金3、銀4のメダルを手にした内村航平選手(32)は、種目別の鉄棒に出場する。

無断転載・複製を禁じます
スクラップは会員限定です

使い方
2231045 0 東京オリンピック2020速報 2021/07/24 14:37:00 2021/07/24 14:47:32  体操NHK杯の男子個人総合、あん馬の演技をする萱和磨=16日午後0時45分、長野・ビッグハット(代表撮影)(了)体操NHK杯の男子個人総合、あん馬の演技をする萱和磨(16日)=代表撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210704-OYT1I50086-T.jpg?type=thumbnail
続きを読む

「体操」のニュース

オリンピック 新着ニュース