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「聖火の不思議な力、感じて」…前回大会でランナー・八王子の黒沢さん

   
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1964年の聖火リレーで使われたトーチを久々に掲げ、当時の思い出をかみしめる黒沢さん
1964年の聖火リレーで使われたトーチを久々に掲げ、当時の思い出をかみしめる黒沢さん

 東京オリンピック開幕まで2週間となる9日、都内では聖火リレーが始まる。日本全国を巡った聖火に特別な思いを寄せる人も多い。1964年の前回大会で聖火ランナーを務めた八王子市の黒沢 矢枝やえ さん(74)もその一人だ。いよいよ始まる都内での聖火リレーを前に「聖火が持つ不思議な力を多くの人に感じてほしい」と話した。(小沢勝)

 1964年10月9日。東京五輪開会式を翌日に控え、日本全国を4コースに分かれて巡った聖火が、皇居前広場で行われた「集火式」でひとつになった。丸の内の旧都庁から、この式典会場までの最終区間約1キロをつないだ高校生4人のうち、ただ1人の女性ランナーとして選ばれたのが、当時高校2年生の黒沢さんだった。「緊張して前夜は全く眠れませんでした」と振り返る。

皇居前広場で行われた集火式。式典前の最終ランナーとして黒沢さんたちが運んだ聖火が聖火台に点火された(1964年10月9日撮影)
皇居前広場で行われた集火式。式典前の最終ランナーとして黒沢さんたちが運んだ聖火が聖火台に点火された(1964年10月9日撮影)

 「責任を持って聖火を集火式場に運ぶことを誓います」。出発前の宣誓で口にした文言は半世紀以上が経過した今でもはっきり覚えている。

 「トーチを落としてはいけない」「転んではいけない」「ひじの角度を90度に保つ」――。沿道からこれまで聞いたことのない歓声が響く中、スタートを前に心臓が高鳴る自分に何度も言い聞かせた。走り始めると、真っすぐ前だけ見ることに意識を集中。手に持って走った重さ約1キロのトーチは実際よりずっしりと感じた。「それまで聖火をつないできた日本中の、そして世界中の人たちの思いが詰まっていた分、重かったのかな」と笑う。

 大役を務めた経験は、黒沢さんの人生の支えとなった。

 1メートル67の長身を生かした美しいフォームが魅力の中距離界のホープとして期待されていた黒沢さんは高校卒業後、実業団チームで陸上を続けたが、相次ぐけがに見舞われ、3年で引退することに。陸上をやめる喪失感から自殺することも一瞬頭をよぎったという。どん底の中で支えになったのは、聖火を運びきった時に感じた誇りや充足感だった。新宿で27年間経営した飲食店が経営不振に陥った時も「あの時の気持ちに立ち返れば何でも耐えられる」と踏ん張ることができた。

 黒沢さんは9日から都内で始まる聖火リレーで、聖火と“再会”することを心待ちにしていた。だが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、島部以外での公道走行が取りやめになった。

 黒沢さんは「多くの人に聖火を持って公道を走る経験をしてほしかった」と残念がるが、「聖火が地元にあるというだけで胸が熱くなる。聖火と再会できたら『ありがとう』と伝えたい」と話した。

八王子博物館でトーチなど展示 15日から

 八王子市の八王子博物館では15日から、「1964オリンピックと八王子」の特別展示が行われる。前回の東京五輪で、市内の聖火リレーに使用されたトーチや市内で行われた自転車競技ゆかりの品や写真などを展示する。入場無料。9月12日まで。

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2192172 0 東京オリンピック2020速報 2021/07/09 09:33:00 2021/07/09 09:33:00  15日から「1964オリンピックと八王子」の特別展示が行われる八王子博物館で、久々に掲げるトーチの重みに当時の思い出をかみしめる黒沢さん。同館(JR八王子駅南口「サザンスカイタワー八王子」3階)では、市内での聖火リレーに使われたトーチのほか、市内で行われた自転車競技など八王子ゆかりの品や写真を特別展示する。 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210708-OYT8I50139-T.jpg?type=thumbnail
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