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高校生の桃田選手は「オーラ違った」…震災避難の生徒30人を預かった夫婦

 
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 23日開幕の東京五輪。大会に挑む福島県内ゆかりの選手たちを支えた家族や恩師、関係者の思いを伝える。

金メダルの期待がかかる桃田選手(2020年12月27日撮影)
金メダルの期待がかかる桃田選手(2020年12月27日撮影)

 磐梯山の麓に立つ猪苗代町のペンション「あるぱいんロッジ」のロビーには、壁一面に色紙やサイン入りTシャツが飾られている。東日本大震災に伴う原発事故後、約80キロ離れた富岡町から避難してきた富岡高校バドミントン部の選手たちが感謝を込めて贈ったものだ。

桃田選手のサインなどが書かれたTシャツの前で笑顔を見せる平山さん夫婦
桃田選手のサインなどが書かれたTシャツの前で笑顔を見せる平山さん夫婦

 「明るいニュースを伝えるので期待していてください」。同校OBでバドミントン男子シングルス代表の桃田賢斗選手(26)は色紙にそう記した。ペンションのオーナー平山真さん(73)は今夏、メッセージが現実になると信じている。

 2011年5月、中高一貫でバドミントン指導を受けていた富岡第一中と富岡高の選手30人以上が、大きな荷物とラケットを抱えてペンションにやって来た。この約1か月前、平山さんは避難先を探していた学校の関係者から「合宿のようになりますが、子どもたちのために協力いただけませんか」と頼まれていた。「困っている人を前に断る理由はない」。二つ返事で受け入れを決めた。

 選手たちを支えるため、平山さんと妻とし子さん(60)は朝夕の食事を作り、毎晩、風呂を沸かした。選手たちが全国から集まった「アスリートの卵」と知ったのは後からだったが、高校2年だった桃田選手だけはオーラが違った。平山さんが風呂上がりに体重計とにらめっこしながら首をひねっている桃田選手に声をかけると、「ちょっとまずいと思っているんです」。体調管理に人一倍気を使う姿は、既にアスリートだった。

 一方で、高校生らしい一面もあった。海外遠征で猪苗代を離れる時間も多かったが、戻ってくると後輩に声をかけ、自分のTシャツをプレゼントする優しさを見せた。卒業を控えてペンションを出て行く日も、母親を玄関に待たせたまま後輩のためにサインを書き、最後までしゃべり続けた。

 16年4月に発覚した違法賭博問題で、桃田選手はリオデジャネイロ五輪を棒に振った。謹慎が明けた17年夏、ペンションを訪れ、「ご迷惑をおかけし、すみませんでした」と頭を下げた。平山さんが「これからだから頑張ろう」と励ますと、硬かった表情が少しだけ和らいだ。ペンションには4泊し、後輩への指導や試合で汗を流した。その様子に2人は「後輩思いの性格は変わっていない」とほっとした。

 富岡一中、富岡高のバドミントン部は、震災後にできた広野町のふたば未来学園に引き継がれた。平山さん夫婦の活動も19年春に終了し、選手が暮らしていた建物も取り壊した。ただ、選手を思う気持ちは変わらない。東京五輪には桃田選手のほかに、2人が世話をした富岡高校出身の渡辺勇大選手(24)と東野有紗選手(24)も出場する。新型コロナウイルスによる大会の1年延期を経て、ようやくたどり着いたひのき舞台。平山さんは「とにかく普段通りでいい」と我が子を思うような気持ちで、活躍を願っている。(石沢達洋)

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2228789 0 東京オリンピック2020速報 2021/07/23 13:39:00 2021/07/23 13:39:00 バドミントン・全日本総合選手権最終日。男子シングルスで3連覇を果たした桃田賢斗=代表撮影。東京町田市立総合体育館で。2020年12月27日撮影。世界ランキング1位の桃田賢斗選手が逆転勝ちで3連覇を決めた。2021年1月1日読売中高生新聞[NEWS DIGEST]掲載。 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210716-OYT1I50044-T.jpg?type=thumbnail
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