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時速81キロの壁、ケイリン出場の脇本「ぎりぎり間に合うかな」…お家芸で悲願の「金」へ

  
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 東京五輪のケイリン(KEIRIN)は女子が8月4、5日に、男子が7、8日に、自転車のトラック競技会場・伊豆ベロドローム(静岡県伊豆市)で行われる。公営競技「競輪」から発祥したオリンピック種目だが、これまでに日本勢が獲得したメダルは、2008年北京大会で永井清史が手にした銅メダルだけ。種目の母国開催で、面目躍如のメダルをつかむことができるのか。21年6月上旬に日本自転車競技連盟が開いたオンライン記者会見から、見どころをまとめた。(読売新聞オンライン・谷中昭文)

東京オリンピックのケイリンでメダルを目指す日本勢。左から新田祐大、脇本雄太、小林優香
東京オリンピックのケイリンでメダルを目指す日本勢。左から新田祐大、脇本雄太、小林優香

「優勝しなければがっかり」フランスから来たHC

 「全員優勝する可能性があるし、優勝しなければがっかりする」

 記者会見で、日本自転車競技連盟のブノワ・ベトゥ短距離ヘッドコーチ(HC)は、手塩にかけてきた選手への信頼と指導者としてのプライドをにじませた。ケイリンを含む短距離勢の実力を世界水準に押し上げるため、2016年に連盟が招いたのが、フランス人のベトゥHCだ。フランス、ロシア、中国と3か国のコーチを務め、五つのメダルをもたらした実績を誇る指導者から見ても、日本勢は「ハイレベルな選手」に仕上がったという。

 ベトゥHCの就任を境目に、日本勢のトレーニングは大きく変わった。自転車で使う筋肉は自転車の上で身につける――という従来の考え方から、効率重視の科学的な強化方針に転換した。練習時間を短くし、走る本数を減らして、ウェートトレーニングも取り入れた。同時に、名将は選手との信頼関係を築くことにも心を砕いた。東京五輪の競技会場がある日本サイクルスポーツセンターを拠点に、寝食を共にしてきた。

東京五輪に向けて練習走行する(上から)脇本、新田
東京五輪に向けて練習走行する(上から)脇本、新田

脇本・時速81キロめざす、新田・雪辱のラストレースへ

 東京五輪のケイリンに出場する日本勢は、男子が脇本雄太(32)と新田祐大(35)、女子は小林優香(27)で、いずれも所属先は日本競輪選手会だ。3人とも国際大会で表彰台に立った実績の持ち主。脇本は世界選手権のケイリンで2020年に銀メダル、新田もその前年に銀メダルを獲得しており、小林は21年5月のネーションズカップ(ワールドカップから名称変更)のケイリンで金メダルに輝いた。五輪出場は、脇本が2大会連続、新田が2大会ぶり2度目で、小林は初めてとなる。

 脇本は、1回戦と敗者復活戦であっさり散ったリオデジャネイロ大会の雪辱を期する。競輪選手としては、昨年の高松宮記念杯などのレースを制するなど、日本のトップを走り続けてきた。ロングスパートで先行するパターンを得意とし、ベトゥHCから「ペダルの回転力や耐久力に優れている」と高く評価されている。

 記者会見で本人は「条件付きで時速80キロを超えることができた」と現状を語った。時速80キロ超えは、五輪のケイリンで海外のトップ選手と戦ううえで、一つの目安となる。使用自転車の規格が違うことなどから、日ごろ走っている競輪を最高速度で約10キロ上回る高速レースへの適応は、順調に進んでいるようだ。本番までの調整は「時速81キロ」を目標に進めるといい、「ぎりぎり間に合うかな」と自信をのぞかせた。「競輪への思いが強い。日本発祥のケイリンで金メダルを取ることが目標だ」

 新田は日本人選手としては規格外の身体能力を備え、トップスピードでは脇本をしのぐ。競輪では最優秀選手賞を2度受賞するなど豊富な経験を誇る。だが五輪では、チーム・スプリント競技に出場した12年ロンドン大会で出走直後に足がペダルから外れる不運に泣くと、16年リオ大会は出場ならず。それだけに、東京五輪には「マイナーな自転車競技の素晴らしさを、(金メダルという)結果を通じて知ってほしい」と、人一倍意気込んで臨む。「東京五輪を最後に、自転車競技を引退したい」との覚悟も口にした。

 小林は、女子ケイリンがオリンピック種目になってから初の日本人出場者となる。鍛え抜かれた脚力を生かしたパワフルな走りが持ち味だ。東京五輪の1年延期には「自転車競技をやめたいと思った」ほどのショックを受けた。だが、20年11月の全日本選手権でケイリンとスプリントの両方で優勝を逃した悔しさから、再び心に火がついた。「東京五輪を最後にする。全力を尽くす」。新田と同じく退路を断って走る気構えだ。

練習走行する小林
練習走行する小林

男子はオランダ勢に挑む、女子・小林は香港の女王と決着戦

 そんな日本勢の前に、海外の強豪が立ちはだかる。

 男子ケイリンでは「自転車大国」として知られるオランダから出場する可能性が高いハリー・ラブレイセンとマティエス・ブフリに、世界中から熱視線が向けられる。ラブレイセンは、21歳だった2018年の世界選手権でチーム・スプリントの金メダリストになると、翌19年はチームの連覇に貢献したばかりか、個人種目のスプリントでも優勝した。20年の世界選手権では、脇本を抑えてケイリンの金メダルを獲得するなど3冠を達成し、24歳の現在は名実とも短距離の第一人者になった。20年の世界選手権のスプリント準々決勝でラブレイセンと対戦した新田も「圧倒的に強いと感じた」と力を認めている。

 ブフリは16年リオデジャネイロ五輪のケイリン銀メダリストだ。国際大会で優秀な成績を残した選手を日本のプロ競輪選手として招待する「短期登録選手制度」で5度来日している。

 女子ケイリンは香港の李慧詩(リー・ワイジー)が優勝候補とみられている。12年ロンドン五輪ケイリンの金メダリストで、19年世界選手権のケイリンでも優勝した。ただ、小林には21年5月のネーションズカップで李に勝って金メダルを獲得した実績がある。小林は「1年の積み重ね」が強豪撃破につながったと振り返り、「もっとスキルアップしなければ」東京五輪では勝てないと、気を引き締め直している。

 男女とも、競技への思いの強さなら、海外勢に決して負けない。強豪の壁を乗り越え、ケイリンでは3大会ぶりとなるメダルをつかめるか、注目のレースだ。

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2233132 0 東京オリンピック2020速報 2021/08/04 09:00:00 2021/08/04 09:54:43 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210716-OYT1I50171-T.jpg?type=thumbnail
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