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「ビッグライト作戦」で平均身長2m超、日本版ドリームチームが「サプライズ」狙う

 
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 東京オリンピックに臨むバスケットボール男子日本代表が、18日の強化試合で世界7位の強豪、フランスを81-75で破って、本番に勢いをつけた。代表12人の平均身長は1メートル96。2メートル台が5人で、NBA選手が2人。外国にルーツを持つ選手が半数の6人もいる。1メートル92の田中大貴をポイントガード(PG)にコンバートして、先発5人の平均は2メートル01となり、「日本版ドリームチーム」ともいえる陣容だ。

大きな選手を探せ!

強化試合のフランス戦。相手のインサイドの攻撃を抑える日本のエドワーズ・ギャビン(奥)と馬場雄大(左)(7月18日)
強化試合のフランス戦。相手のインサイドの攻撃を抑える日本のエドワーズ・ギャビン(奥)と馬場雄大(左)(7月18日)

 体格的に欧米勢に劣る日本のバスケットでは、その弱点を補うべく、スピード、連係、シュートの正確性などの長所を生かした「忍者バスケット」「平面で戦う」が長らくスローガンとされてきた。

 だが、外国勢も速くなってシュート技術も向上し、日本の強みは消えつつあった。それでは諸外国に比肩するチームの大型化をどう実現するか――2016年リオデジャネイロ五輪の男子出場権を逃した日本協会内では、この年に就任したばかりの東野智弥・技術委員長を中心に「ビッグライト作戦」と呼ぶプロジェクトが進められていた。

 ビッグライト――。光を当てられたものが大きくなる、ドラえもんの便利な道具だ。東野さんが解説する。「一つ目のビッグライトは、海外(の大学)でプレーしていた八村(塁)や渡辺(雄太)を代表活動に招集できるようにすること。二つ目は帰化選手。そして三つ目が、両親のどちらかが外国にルーツを持つなどで身体能力の高い選手を見つけることです」

 日本協会は大きな選手を集めるためにあらゆるネットワークを使ってスカウト活動を始めた。 (うわさ) の類いでもとりあえずつぶしていく。最初はまさに手探り状態だった。

 「現地に足を運びました。ハワイ、カリフォルニア、アリゾナ、ブラジル……。ハワイで高校の先生に聞き回ったり。でも最初の年は、これと思う選手は見つからなかった。そのうちに、どこで聞いたのか、家族が日本協会に売り込みの連絡をしてくるようになった。海外に暮らす高校生のお母さんが、『うちの息子は大きくて、日本のパスポートを持っている』って。こちらのリストにも何にもなく、全然知らなかった選手です。育成キャンプに来た16歳の選手も、日本に住むおばあちゃんが電話してきた。本人は親とアメリカに住んでいて。最初の電話の時に聞いた相手の連絡先の番号が一桁抜けていて、こっちから後日に連絡を返そうとしてもつながらない。でも2メートルあるというから何とかしたい。それが2か月たった後、違うルートから話がつながり、父親と連絡が取れるようになった。また、別の選手は、インターナショナルスクールでプレーしていて、日本協会に登録していない選手の中から将来、有望なビッグマンとして、アンダー代表のコーチが見つけてきたこともあった。そうやってスカウトされた選手たちが、フル代表やアンダーカテゴリーのチームに招集されました」

戦況をベンチで見つめる渡辺雄太(左)と八村塁(7月18日のフランス戦)
戦況をベンチで見つめる渡辺雄太(左)と八村塁(7月18日のフランス戦)

 現在の代表メンバーを見渡せば、ハワイ出身の渡辺飛勇(22)、バスケットを始めて6年余りのシェーファーアヴィ幸樹(23)、そしてチームで1人だけ認められる帰化選手で選ばれた米国出身のエドワーズ・ギャビン(33)も含めて「ビッグライト作戦」の成果だ。この夏の東京五輪だけではなく、2024年パリ五輪にもつながっていく選手たちだ。

五輪で世界強豪国から「歴史的1勝」を

 東野さんは続ける。「リオ五輪の出場12チームのデータを調べました。ほぼ全ての国にNBAプレーヤーがいて、全チームの平均身長は2メートル。日本がリオの最終予選を戦った時は1メートル90で、10センチ違った。大型化とは、動けて、ジャンプ力があって、リングの上でバスケットができる能力を備えたうえで平均2メートルをキープするということ。このスタンダードを作ってきた。もちろん大きな選手だけではありません。代表スタッフの総力で代表チームの日常を変える。食事、睡眠、練習の質を高めてフィジカルの強化を実践してきた。これをベースに様々のことが動いてきました」

 「ビッグライト作戦」は日本代表サイズアップの礎となった。だが大きくなれば勝てるというものでもない。今回同様の大型布陣で臨んだ2019年のワールドカップ(W杯)で5戦全敗に終わった苦い思い出を教訓に、チームはラマス・フリオ監督のもとで、攻守のシステムの再構築をはかってきた。18日のフランス戦ではリバウンド数(日本34、フランス37)でほぼ互角に渡り合い、選手たちも「(八村)塁だけに頼ることなく、コートに出ていく選手がみんな、いいプレーをした。日本全部で取った勝利だ」(渡辺雄太)と手ごたえを口にした。

 五輪の1次リーグで日本が戦う相手はスペイン(世界ランク2位)、スロベニア(16位)、アルゼンチン(4位)と厳しい組み分けになった。日本はまだ世界選手権などの大会で欧州勢には勝ったことがない。

 「競争力で手が届くかどうか。ぎりぎりの試合ができるかどうか。そこまでできればサプライズだ」とラマス監督。東野さんもまた同じ思いだ。「テーマはチャレンジ。相手は数段も格上だが、世界を驚かす試合をしたい。あきらめたら終わりです」

 世界標準まで到達した「高さ」に、展開の速さや独創的なパス、精密なシュート力など、日本バスケットのエッセンスが溶け込んだ時、「サプライズ」が起きるかもしれない。

(編集委員 千葉直樹)

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2221708 0 東京オリンピック2020速報 2021/07/20 16:14:00 2021/07/20 16:38:12 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210719-OYT1I50135-T.jpg?type=thumbnail
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