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復興の歩み 世界へ 被災地開催の意味 発信…今こそスポーツの感動を[Tokyo2020+]

  
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 東京五輪開幕に先立つ21日に女子サッカーとソフトボールの試合が始まった東日本大震災の被災地・宮城と福島。「復興五輪」の象徴として会場に選ばれたが、新型コロナウイルスの影響で、有観客と無観客に対応が分かれた。五輪に対する世論も割れ、被災者や観客らは様々な思いを巡らせた。

宮城・ボランティア

 女子サッカー2試合が行われた宮城スタジアム(宮城県利府町)の前では、取材に訪れた外国メディアにメッセージ入りのカードが次々と配られた。

 「世界中の人々に支えられていることを決して忘れない」。英語やオランダ語でつづられたカードは、震災復興の支援に対する感謝の気持ちを込めて、地元ボランティアの手で作られたものだ。

宮城スタジアム周辺で観客誘導を行うボランティアと打ち合わせをする村松さん(中央)(21日、宮城県利府町で)
宮城スタジアム周辺で観客誘導を行うボランティアと打ち合わせをする村松さん(中央)(21日、宮城県利府町で)

 代表を務める同町在住の東北大教授、村松淳司さん(62)は、「復興したスタジアムや宮城県を世界中に発信してもらいたい」と強調した。

 サッカーファンの村松さんは、2002年の日韓ワールドカップ(W杯)を機に、地元住民でボランティア組織を結成。宮城スタジアムを中心に活動し、野球やバスケットボールなど様々な県内スポーツを支えていた。

 だが、11年3月11日の震災で事態は一変した。スタジアムの支柱などに亀裂が入り、予定されていた試合は全て中止に。隣接する総合体育館は遺体安置所となり、駐車場はトルコやロシアなど海外からの応援部隊の拠点となった。

 村松さんもボランティア仲間とともに、シャトルバスで遺体安置所に着いた行方不明者の家族らを案内した。30歳代の夫婦から「おかげさまで子供に会えました」と感謝されたこともあった。

 毎日のように亡くなった人がヘリコプターで運ばれてくる非日常の中で、気分も落ち込むばかり。そんな時に訪れた仙台市内の小学校で、1個のサッカーボールを夢中で追いかける小学生らに目がとまった。目を輝かせる子供の姿に「心の復興にスポーツは欠かせない」と改めて感じた。

 スポーツのボランティアを再開すると、全国の団体から被災地支援の申し出が相次いだ。12年8月には修復されたスタジアムで女子サッカーの20歳以下のW杯が開催され、少しずつだが日常が戻ってきた。

 村松さんは今、ボランティアを束ねる立場として、宮城スタジアムで国内外の報道機関の対応を担当している。「五輪やスポーツには、見る人の心を支える力がある。海外の人たちにも、被災したこの場所で試合が行われる意味を伝えたい」と願った。

福島・医師

宮城スタジアムで観戦し、拍手を送る医師の斎藤さん(21日、宮城県利府町で)=浦上太介撮影
宮城スタジアムで観戦し、拍手を送る医師の斎藤さん(21日、宮城県利府町で)=浦上太介撮影

 「被災地の10年の歩みを世界に感じてもらいたい」。福島県会津美里町の医師斎藤雅文さん(64)は21日、宮城スタジアムでプレーを見つめながら、そう話した。

 医大生時代を福島市内で過ごした縁で、1999年から会津美里町の病院で勤務する。10年前に揺れに見舞われたのも院内だった。

 医療設備に被害はなく、同県南相馬市からドクターヘリで搬送される患者を受け入れた。津波にのまれて重傷を負い、泥まみれになった消防団員と高齢女性の応急処置を行った。女性は意識不明で、「頑張れ」と懸命に心臓マッサージを施したが、亡くなった。東京電力福島第一原発周辺の楢葉町から町内に避難した患者の診察もした。「仮設住宅はつらい」。そう漏らしたお年寄りに、「体を大切にね」と声をかけることしかできなかった。

 無力感にさいなまれていた2013年、被災地での五輪開催が決まった。「東北の歩みを世界に知ってもらえるかも」。そんな希望が少し見えた気がした。

 チケットを購入し、今年3月には、聖火ランナーとして会津若松市内を走った。感染拡大が止まらず、医療従事者として観戦していいか迷っていた。だが、手を振り返してくれた沿道の人たちの顔が頭をよぎり、こう思うようになった。「観客席で応援する東北の人たちの姿こそが、『復興五輪』という大きなメッセージとして伝わるのではないか」

 この日は、観客席の後方から選手たちに拍手を送った。「 閉塞へいそく 感がある今だからこそ、スポーツの感動を分かち合うことが重要だ」

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2226158 1 東京オリンピック2020速報 2021/07/22 05:00:00 2021/07/22 05:00:00 競技場周辺で観客誘導を行うボランティアとやり取りをする村松さん(21日、利府町で) https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/07/20210722-OYT1I50016-T.jpg?type=thumbnail
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