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ほぼ無観客での開催となった東京五輪で、オンラインを使って大勢で一緒に応援を楽しもうという試みが広がっている。企業がネット会議に使う仮想オフィスでの社員同士の観戦を認めたり、自治体がホスト国の応援イベントを開いたりするなど工夫を凝らす。新型コロナウイルス下での新たな応援スタイルになりそうだ。(井上絵莉子、大塚美智子)
■社員交流に
「あー、やばい」「残り1分!」
大阪府枚方市の住宅で27日、テレビで女子バスケットボールやバドミントンを観戦していた住人の増本奈々子さん(43)が声を上げた。テレビの前に置かれたパソコン画面には、同じ試合を見ている会社の同僚3人の姿も映っており、日本選手への声援が重なり合った。

増本さんらがオンラインで参加したのは、勤務先のソフトウェア会社「アジャイルウェア」(大阪市)がネット会議などの目的で設けた仮想オフィス。在宅勤務者が一緒に五輪を応援することでコミュニケーションをとってもらうのが目的で、社員が自宅から入室して観戦した時間は、大会期間中に最大8時間まで業務時間とみなす。
増本さんは「この日参加した他の3人とは担当業務が異なるが、雑談などを楽しめた。感動を分かち合えるのが素晴らしい」と笑顔を見せた。
広報担当の光岡響子さん(32)は「在宅勤務で失われがちなコミュニケーションも維持できる」と効果を説明する。
■ホストタウン
自治体も、多くの人に応援に参加してもらおうとオンラインを活用する。
茨城県では、サッカーが開催されている県立カシマサッカースタジアム(鹿嶋市)が児童・生徒以外は無観客となり、県は動画投稿サイト「ユーチューブ」に応援特設サイト「茨城ライブスタジアム」を開設。元日本代表の鈴木隆行さんらにサイトへの出演を依頼し、解説やサッカーに関するトークなどを配信している。
テレビ観戦と同時にサイトも閲覧してもらい、サイトにメッセージを送るなどして盛り上がろうというのが狙い。22日の初回は再生回数が1000回を超え、今後は8月5日まで計5試合で配信する。
県オリンピック・パラリンピック課の鷹羽伸一課長(57)は「コロナ下でも、皆さんでつながって楽しめるオンライン企画を用意した。大勢の人に楽しんでもらいたい」と話す。
中国を応援するホストタウンの長野県でも、県と長野市など6市町で作るホストタウン県実行委員会が「オンライン交流サイト」を開設した。卓球の試合がある8月2日、事前に登録した県民らがテレビ観戦しながら特設サイトで選手たちへの応援メッセージを送り合う予定だ。
県国際交流課の小林一洋課長(57)は「コロナ禍で中国人選手と直接の交流はできなかったが、学生たちは中国の文化などを学んできた。オンラインとはいえ、精いっぱい応援する場を設けたかった。多くの人に利用してほしい」と期待を寄せた。