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「最後の五輪」康生監督、胴上げされて涙「これほど幸せな者はいない」

  
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胴上げされ号泣「幸せ者」

 胸を張れ、ニッポン。柔道混合団体の決勝で、日本はフランスに敗れたが、大会を通じ、金9個を含む12個のメダルを獲得した。女子の増地克之監督(50)とともに、チームを率いたのは男子の井上康生監督(43)。「8日間、厳しい環境の中ですばらしい試合をしてくれた」。口をついたのは、選手をたたえる言葉だった。(石坂麻子)

柔道混合団体決勝で、試合に臨む素根輝選手(右)の背中に手をやる井上康生監督(31日、日本武道館で)=守谷遼平撮影
柔道混合団体決勝で、試合に臨む素根輝選手(右)の背中に手をやる井上康生監督(31日、日本武道館で)=守谷遼平撮影
試合後、胴上げされる井上監督(31日、日本武道館で
試合後、胴上げされる井上監督(31日、日本武道館で

 「ギリギリで落ちた選手の顔しか思い浮かばない」。昨年2月、井上監督は代表内定者を発表する途中、落選した選手の名前を挙げながら、何度も涙をぬぐった。

 ともに稽古し、試合で負けた時には手紙を書いて励ましてきた。だからこそ感情があふれた。後日、「一番苦しいのは選手。自分が苦しむ姿を見せたのは、監督としてあってはならなかった」と反省した。

 五輪で金メダルラッシュになっても、選手に寄り添う姿勢は変わらなかった。「全てをかけて戦ってきたと思う。勝たせてあげたかった」。7月28日、90キロ級の向翔一郎選手(25)が3回戦で負けた直後、その目は潤んでいた。

 周囲への気遣いは、若い頃からだ。東海大で2学年上だった吉田勝さん(44)はバーベキューをした際、仲間のために肉を焼き続ける姿が印象に残っている。「強いだけでなく、先輩にも後輩にも慕われていた」

 2000年シドニー大会のオール一本勝ち、04年アテネ大会での敗退。栄光も挫折も味わった男は12年11月、男子チームの監督に就任した。史上初の優勝者なしに終わったロンドン大会の惨敗を受け、「お家芸」の再建を託された。

 「甘さを捨てて覚悟を決めろ」。選手を激しく競わせた。「期待される地位を築いていることへの誇りを持とう」と呼びかけ、金メダルを求められる立場を前向きにとらえるよう促した。

 指揮官として青くさいと言われても、選手との密接な関係は崩さなかった。60キロ級の高藤直寿選手(28)が練習で遅刻を繰り返すと、一緒に頭を丸めた。高藤選手は「たくさん迷惑をかけた。恩返しをしたい」と話し、金メダルを取った。

 16年リオデジャネイロ大会では、男子は金二つを含む全7階級でメダルを獲得し、人目をはばからず号泣した。監督として最後の五輪と位置づけた今大会は、5階級で金に輝いた。

 表彰式の後、選手らに胴上げされて泣いた。「すばらしい選手たちと、9年間戦わせてもらい、これほど幸せな者はいない。ふがいない監督であったが、心から感謝したい」

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2251960 0 東京オリンピック2020速報 2021/08/01 05:00:00 2021/08/01 08:57:04 柔道混合団体決勝で、試合に臨む素根輝選手(右)の背中に手をやる井上康生監督(31日、日本武道館で)=守谷遼平撮影 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/08/20210801-OYT1I50025-T.jpg?type=thumbnail
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