指先の皮すり減り、スマホ指紋認証もきかず…「銀」野中生萌
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3種目で争う女子複合決勝が行われ、野中
手首や膝「痛み無視」

「体を壊してでもメダルを取りに行きたい」。予選後、並々ならぬ決意をそう表現していた野中。手首や膝などのケガが続いて決して万全ではない中、痛みに顔をゆがめながら、群を抜く精神力で銀メダルをつかんだ。
日本記録を持つスピードは3位。縦の移動がメインのスピードに比べ、続くボルダリング、リードはあらゆる方向への動きがある。痛めている部位には負担が大きいが「痛みは無視した」。最初の課題は失敗したものの、残り二つは途中ポイント「ゾーン」に到達。特に3課題目は一発で達し、獲得ゾーン数が同じ選手の中で最上位の3位につけた。
8歳で競技を始めた。小学生の頃は細かったが、中学で体が一気に成長。バランスが崩れ、試合でも勝てなくなった。その頃、たまたま姉の部屋で見つけた言葉が今でも座右の銘。「今に見ていろと笑ってやれ」。苦しい時期も練習を怠らず、反骨心を磨いた。
リードでも執念を見せた。指先の皮はすり減り、スマートフォンの指紋認証はほとんどできない。鍛錬の歴史が刻まれたその手で壁を登った。中盤の落下で5位になったが、ボルダリングの粘りが生きた。3種目の順位の掛け算による総合成績でメダルが決まると、銅の野口と抱き合った。「啓代ちゃんとメダルを取れて良かった。彼女が目標だった」
5月に生まれ、新緑のイメージから「生萌」と名付けられた。「色んな挑戦があった大会だった。懸ける思いもどんどん変わっていった。五輪ってすごいなあって感じです」。笑顔にみずみずしい生命力がはじけた。(工藤圭太)